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第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝

第311話 ロードは鍵を外しに来た

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 オハバリは50体を超える魔物を前にしてもひるまない。


「グラスに似た動きだ……」

 ボクネンジンが倒された魔物を前に呟く。

「グラスの故郷だっけ? 知り合いかもしれないわ……捕えなくては……」

 孔雀のような魔物が言う。その時だった。

『我がフリフライの配下たち!! 今からここの者たちに一切の手出しをしてはならない!! そして直ちに天翔木馬トロイアに戻るのだ!! 我らはこの地より立ち去ることになった!! 繰り返す!! 配下たちすみやかに天翔木馬に戻るのだ!!』

 魔王フリフライが街中に聞こえるように天翔木馬トロイアから宣言する。

「――わっ!!」

 スワンの拘束が解ける。

「行くぞ」

 ボクネンジンが仲間たちに言う。

「ええ……」

 スワンを手放した孔雀の魔物も同意する。

 そして魔物たちは何らかの力だろう空を飛んで天翔木馬トロイアへ帰還していった。

「「「……………………」」」

 魔物たちの去り際を茫然と見るハズレ、スワン、オハバリたち。

「何だ急に……」

 ハズレが呟く。

「た、助かったーー」

 スワンが安堵する。

「それよりロードを追わなくちゃいけないんじゃないか!?」

 オハバリが話を進める。

「そうだ」

 ハズレが同意する。

「い、行こう」

 スワンが立ち上がり言い出す。

 そして、タタタタタタタッと走っていくハズレたち。

「オハバリ、キミはどこへ行ってたんだ?」

 走りながらハズレが訊いた。

「ああ、ちょっと野暮用。時代を変えるための一仕事だ」

「「?」」

 ハズレとスワンはきょとんとした。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ハラパの街・とある建物の屋上。
 今だにグラスはニワトリのような魔物に捕らえられていた。
 しかし、街から人々の叫び声が消えていく。
 魔王フリフライの配下たちが次々と退いていくのだ。

「――――!! (魔物たちが退いていく)」

 ロードが少し安堵する。

「これでいいなグラス。それで地図は?」

 ぬいぐるみ型の魔物を通して話す魔王フリフライ。

「連れてけ……」

 グラスが力を抜いて言う。何の抵抗もせずに、

 バサッとニワトリ人間の魔物から翼が生えだす。

 バサバサと翼をはばたかせ宙に浮いていく。

 その時グラスはロードをチラ見した。

 ロードは我慢していた。助けたかったのだ。

(グラスを助に行くとこの街の人たちが襲われる)

 ロードは助けたくても助けることは出来なかった。ただ腰に提げた剣に手をそえることしかできなかった。

 この時、
(そのまま黙って見てろ)
 グラスは黙ってそう思っていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 話は少しさかのぼる。
 グラスとロードは魔王を呼ぶ前ある話をしていた。

「最後の勝負?」

 ロードが訊く。

「そうだ、オレはこれから奴らを希望のダンジョンまで案内してやる」
「だが、あの木馬のスピードからして一日も経たねー内に着いちまう」
「そこでオレは一芝居打つ……もう一つオレが別に残しておいた。落書きの地図がある。そいつを取りに向かわせる」
「オレですら分からねー地図だが、時間を稼ぐには丁度いい」
「そいつを手にしたからと言っても解読できねーから、そこでオレが用済みになることもねー」
「3日は稼げる」

 グラスは空で滞空する木馬を見上げていた。

「それが勝負と何の関係がある? 3日間が何だ?」

 ロードが訊いてみる。

「オマエここへ何しに来た……」

 今度はグラスが訊くが、

「その手に持った鍵でオレの命を預かっているつもりか?」
「ふざけるな!! テメーにオレの命も自由も預けたつもりはねー!!」
「お前は奪ったんだオレから!!」

 グラスは叫んだ。

「確かになかば無理やりお前を連れ出してきたのはオレだ。預かったのではなく奪ったに等しい」
「お前が逃げ出してからよくわかった。お前の自由がこの手の中にある。この手枷のカギに……」
「もしそのせいで魔王に襲われ殺されてしまったら、そう思うとこの鍵で拘束したことに後悔さえした」
「もはや、オレにお前の命を預かる権利はない。失ってからでは遅い」
「だから、鍵を外しに来た」

 ロードはここへ来た理由を話した。

「……………………」

 グラスは黙って聞いていた。

 そしてロードがカギを外そうと踏み込むと、

「来るんじゃねーーーー!!」

 グラスが吠えた。

「今ここで鍵を外されても、オレの怒りは治まんねー!!」
「恨みも憎しみも治まんねーーーー!!」
「気色が悪いぜ、誰かに命を握られてんのは、ぶっ殺したくなるほどにな!!」
「胸糞わりーぜ!!」
「これがお前がオレに教えたかったことか!? ああ!!」

 グラスは怒っていた。

「――――!! 違う!!」

 ロードは否定した。

「だったら勝負するしかねー、この3日間でお前が勝って違うということを証明しろ!!」
「この3日間の間にお前がこいつを外せるかどうかのな!!」
「外せばお前の勝ちだ!!」

 グラスは手枷を見せつけて来た。

「外せなかったら?」

 ロードが訊く。

「オレの勝ちだ。お前のカギは何でもねーただの鉄くずだー」
「ようはオレが魔王に殺されれば俺の勝ちだ!!」

 グラスは笑っていた。驚くロードの顔が見たくてたまらないというような顔だった。

「――――――!?」

 当然ロードは驚く。

 グラスは驚くべき勝負内容を示してきた。
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