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第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝
第309話 グラスの取り引き
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とある建物の上、ロードの前にはグラスが立っていた。
「グラス!! お前足は大丈夫なのか!?」
「騒ぐな、足なら治った軽くひねっただけなんだよ」
「グラス、ここは危険だ。魔王フリフライが攻めてきた。安全な場所へ……」
「かんけーねーよ」
グラスの声が小さくなる。
「オハバリを助けに来たんじゃないのか?」
ロードが訊いてみる。
「――――!?」
グラスは顔には見せなかったが、オハバリという名を聞いて僅かにピクンと動く。
「彼から色々聞いたぞ。お前の過去。ここが故郷だってことも……」
ロードは落ち着いて話すが……
ワーーーー!! ワーーーー!! という街から聞こえる悲鳴が気になって仕方がないロード。
「とにかくゆっくりしている時間はない……今すぐ連れて行く」
ロードがいっぽグラスに歩み寄ろうとした時、
「来るんじゃねーよ!!」
怒鳴られた。
「テメーじゃぁこの状況は打開できねー、いくら強くてもなー、全員は救えねー、だがオレは違う。オレなら奴らを全員追い返せる」
「――――!?」
ロードは驚いた。そんな策がグラスにあるのかと、
「奴らはオレを狙ってここまで来たんだからなぁ」
「命を狙われているお前がどうやって魔王たちを追い返す」
「取り引きだ。奴らはオレの持っていた地図を欲している。この街の人間たちよりも欲しいはずだ」
「この前の魔物が言っていた地図か……どうして奴らがそれ程に欲していると言える」
「希望の地図だからだ。オレがガキの頃聞いていた服の裏に地図が描かれていた。いつか親が言っていた。誰にも見せるなと教えられた地図だ。何が眠ってるか知らねーが、そこにはこの世界の時代を変えられるほどのもんが眠っている。それを魔王は狙いに来やがった。この世界の希望を奪うためになぁー、この世界がどーなろうが知ったことじゃねーが、みすみす奴らに奪われんのは気に食わねー、だから目の前で燃やしてやった。それ以来……命を狙われるようになったが大してことじゃね、ガキの頃と違い自由に逃げられんだからなぁー」
「それだと地図は燃えて、ないという話にならないか?」
「ある……」
グラスは断言した。
「――――!?」
ロードは言っていることが矛盾していると思った。
「オレは頭の中には、今もガキの頃、何度も見た地図が残ってる。そいつが取引材料だ」
「――――!! グラス、お前は奴らに身を差し出して――この街をオハバリを助けに来たということか? そうかそこまでして……」
「勘違いすんじゃねー!! ここへ来たのは奴らがフォックスグリードに入って来たからだ。オレを追って来たのなら必ずここに現れる。そう踏んだからだ」
一呼吸の間をおいてグラスは告げる。
「これは勝負なんだよ。テメーと俺の最後の勝負」
◆ ◆ ◆ ◆
ハラパの通り道。
ドサドサッと魔物が倒れて霧散化していく。
「そろそろ相手をしてくれないか?」
ハズレが雑魚たちを片付けて言う。
「確かにボスを倒した方が指揮系統も崩壊して早い」
スワンが空飛ぶ魔物を見上げる。
「眷属使魔、そうなんだろ?」
ハズレが目の前に浮く木の魔物ボクネンジンに向かって言う。
木の魔物は砲台のような腕を無言でハズレたちに向けた。
そしてその砲口から繰り出される無数の矢とかした枝が発射され、ハズレたちを襲う。
無数の矢をハズレはその剣技で打ち払う。
「水霊の手!!」
スワンが宣言すると巨大な水の手が、ボクネンジンの背後にいた魔物たちに掴みかかる。
「木造り……槍」
咆哮から出て来たのはまるで丸太の先端が尖ったような大きな槍だった。
「純炎の剣アカユリヒメ!!」
ハズレがその刀身に備わった炎を勢いよく飛ばして、ボクネンジンに攻撃を仕掛ける。
サッと回避するボクネンジン。しかし先ほど背後に回ったスワンの水霊の手がハンマーの様に後ろからボクネンジンを叩きつけた。
「くっ……」
そして水の腕に抑えつけられるボクネンジン、辛うじて腕を地面につけ起き上がろうとする。
「動きを止めた!!」
スワンが叫ぶ。
「よし」
炎の剣を構えたハズレが前進する。タタタッと走っていく。
しかし、ボクネンジンもただでやられるはずがなかった。地面につけた腕から先ほどの槍を吐出させその勢いで、水の腕から脱出を試み真上へと逃げおおせた。そしてその試みは成功し、ハズレの炎の剣を躱す。
「――――!?」
ハズレは驚いた。完全に勝負はついていたという顔を崩して、
「木造り……雨」
ボクネンジンは両腕の砲口から無数の木の枝を放つ。ガキキキキンとハズレは木の枝をはじき返し続け、スワンは一歩、二歩、三歩と後ろに下がって回避していく。
「――――なっ!?」
その時スワンの身体にツタのようなものがシュルルっと絡む。
「そこまでよ剣士さん」
「――――!?」
剣を構え、ボクネンジンと対峙していたハズレは声の主の方を見る。
「彼女の悲鳴が聞きたくないなら、剣を捨てて剣士をやめなさい」
そこに居たのは孔雀のような魔物、しかし普通の孔雀と違って手が生えていた。
その孔雀のような魔物に、スワンは手と足を拘束されて捕まっていた。
「グラス!! お前足は大丈夫なのか!?」
「騒ぐな、足なら治った軽くひねっただけなんだよ」
「グラス、ここは危険だ。魔王フリフライが攻めてきた。安全な場所へ……」
「かんけーねーよ」
グラスの声が小さくなる。
「オハバリを助けに来たんじゃないのか?」
ロードが訊いてみる。
「――――!?」
グラスは顔には見せなかったが、オハバリという名を聞いて僅かにピクンと動く。
「彼から色々聞いたぞ。お前の過去。ここが故郷だってことも……」
ロードは落ち着いて話すが……
ワーーーー!! ワーーーー!! という街から聞こえる悲鳴が気になって仕方がないロード。
「とにかくゆっくりしている時間はない……今すぐ連れて行く」
ロードがいっぽグラスに歩み寄ろうとした時、
「来るんじゃねーよ!!」
怒鳴られた。
「テメーじゃぁこの状況は打開できねー、いくら強くてもなー、全員は救えねー、だがオレは違う。オレなら奴らを全員追い返せる」
「――――!?」
ロードは驚いた。そんな策がグラスにあるのかと、
「奴らはオレを狙ってここまで来たんだからなぁ」
「命を狙われているお前がどうやって魔王たちを追い返す」
「取り引きだ。奴らはオレの持っていた地図を欲している。この街の人間たちよりも欲しいはずだ」
「この前の魔物が言っていた地図か……どうして奴らがそれ程に欲していると言える」
「希望の地図だからだ。オレがガキの頃聞いていた服の裏に地図が描かれていた。いつか親が言っていた。誰にも見せるなと教えられた地図だ。何が眠ってるか知らねーが、そこにはこの世界の時代を変えられるほどのもんが眠っている。それを魔王は狙いに来やがった。この世界の希望を奪うためになぁー、この世界がどーなろうが知ったことじゃねーが、みすみす奴らに奪われんのは気に食わねー、だから目の前で燃やしてやった。それ以来……命を狙われるようになったが大してことじゃね、ガキの頃と違い自由に逃げられんだからなぁー」
「それだと地図は燃えて、ないという話にならないか?」
「ある……」
グラスは断言した。
「――――!?」
ロードは言っていることが矛盾していると思った。
「オレは頭の中には、今もガキの頃、何度も見た地図が残ってる。そいつが取引材料だ」
「――――!! グラス、お前は奴らに身を差し出して――この街をオハバリを助けに来たということか? そうかそこまでして……」
「勘違いすんじゃねー!! ここへ来たのは奴らがフォックスグリードに入って来たからだ。オレを追って来たのなら必ずここに現れる。そう踏んだからだ」
一呼吸の間をおいてグラスは告げる。
「これは勝負なんだよ。テメーと俺の最後の勝負」
◆ ◆ ◆ ◆
ハラパの通り道。
ドサドサッと魔物が倒れて霧散化していく。
「そろそろ相手をしてくれないか?」
ハズレが雑魚たちを片付けて言う。
「確かにボスを倒した方が指揮系統も崩壊して早い」
スワンが空飛ぶ魔物を見上げる。
「眷属使魔、そうなんだろ?」
ハズレが目の前に浮く木の魔物ボクネンジンに向かって言う。
木の魔物は砲台のような腕を無言でハズレたちに向けた。
そしてその砲口から繰り出される無数の矢とかした枝が発射され、ハズレたちを襲う。
無数の矢をハズレはその剣技で打ち払う。
「水霊の手!!」
スワンが宣言すると巨大な水の手が、ボクネンジンの背後にいた魔物たちに掴みかかる。
「木造り……槍」
咆哮から出て来たのはまるで丸太の先端が尖ったような大きな槍だった。
「純炎の剣アカユリヒメ!!」
ハズレがその刀身に備わった炎を勢いよく飛ばして、ボクネンジンに攻撃を仕掛ける。
サッと回避するボクネンジン。しかし先ほど背後に回ったスワンの水霊の手がハンマーの様に後ろからボクネンジンを叩きつけた。
「くっ……」
そして水の腕に抑えつけられるボクネンジン、辛うじて腕を地面につけ起き上がろうとする。
「動きを止めた!!」
スワンが叫ぶ。
「よし」
炎の剣を構えたハズレが前進する。タタタッと走っていく。
しかし、ボクネンジンもただでやられるはずがなかった。地面につけた腕から先ほどの槍を吐出させその勢いで、水の腕から脱出を試み真上へと逃げおおせた。そしてその試みは成功し、ハズレの炎の剣を躱す。
「――――!?」
ハズレは驚いた。完全に勝負はついていたという顔を崩して、
「木造り……雨」
ボクネンジンは両腕の砲口から無数の木の枝を放つ。ガキキキキンとハズレは木の枝をはじき返し続け、スワンは一歩、二歩、三歩と後ろに下がって回避していく。
「――――なっ!?」
その時スワンの身体にツタのようなものがシュルルっと絡む。
「そこまでよ剣士さん」
「――――!?」
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「彼女の悲鳴が聞きたくないなら、剣を捨てて剣士をやめなさい」
そこに居たのは孔雀のような魔物、しかし普通の孔雀と違って手が生えていた。
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