上 下
308 / 743
第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝

第308話 革命への旗印

しおりを挟む
 ハラパの街。
 アンダートピアから地上に出たロードたちが異変に気付く。
 ワーーーー!! キャーーーー!! という悲鳴が聞こえてくるのだ。
 ロードはすぐさま家屋の扉を開ける。すると何十人もの悲鳴が聞こえてきた。

(何だ? 何の騒ぎだ?)

「悲鳴だ! あちこちから人の悲鳴が聞こえるぞ!」

 オハバリが報告する。

「あ、アレ見て!!」

 スワンがある物体を指差す。

 それは天翔木馬と呼ばれるもので、ロッカーライいわく名前はトロイアという超大型の飛行する馬の形をした木材の魔物だった。

「空駆ける木馬、魔王フリフライか……」

 ロードが観察する。そして知る何体かの魔物がトロイアから出てきて空から降りてくるのを……

「ギィアーーーー!!」

 そして目の前では街の住人が魔物に襲われかけていた。すかさずロードは魔物を斬って霧散化させた。

「わ、わあーーーーーー!!」

 住人の方はロードに例も言わず走り去っていった。

 戦闘態勢に入ったロード。しかし、精霊の術である水の道しるべはグラスのところまで移動していく。

「皆魔王に気を付けろ!! オレはグラスの元へ先に行く!!」

 ロードは走りだしていた。

「分かったお願い!!」

 スワンが後ろから激励を飛ばす。

 ダッとジャンプしたロードは建物の屋上沿いを走りながら移動していく。

 空は天翔木馬から出てきた魔物たちでいっぱいだった。魔物たちが空を飛んでいる。獣型だろうが、魚型だろうが、ガイコツ型だろうが空を飛んでいる。

「あんなにたくさんの魔物が人をさらっている」

 スワンは目を凝らしよく見ると魔物たちが人間を運んでいくところが見えた。

「全てを相手にして助け出すのはムリだ」

 ハズレは冷静に状況を整理する。

「――――!!」

 その時、オハバリは向かいの建物の隙間から見えた。独裁の王ゲロベルデを見て顔色を変える。

「――ゲロベルデ!」

 気がついたら身体が勝手に動いていたオハバリだった。

「ギィヤーーーー!!」

 魔物たちがスワンたち目がけて襲い掛かって来た。

「来た!!」

 ハズレはすぐさまオイルを塗った炎の剣で応戦し、スワンは必死に急いでかき集めた水で腕を作り、魔物に攻撃していく。

「オハバリ! オレたちから離れないでくれ!」

 ハズレが言う。

「私たちこれでも結構強いから!」

 スワンも言う。

「――!? オハバリ!?」

 ハズレは呼びかけに返事がないので、振り返ってみるとそこにオハバリの姿はなかった。

「――えっ!? 居ない!?」

 スワンも後ろを振り返る。

「何だ貴様らはただの人間ではないな……」

 その時、不意に声を掛けられた。相手をよく見ると木のお化けのような魔物だった。枝らしき鼻が飛び出て口が大きく上下して喋っていた。

「レアだな。よしアレを捕えよ。生かしてな」

 部下の魔物たちに命令する木の魔物。その腕は四本で、中身がぽっかり空いた木だった。

「ハッ!! ボクネンジン様!」

 部下の魔物たちがボクネンジンの後ろになん十体もいた。

「オハバリはきっとアンダートピアに帰ったんだ!! 構えろスワン!!」

 ハズレが無理やり解釈する。

「だと……いいんだけど……」

 スワンが両手を構えて水の玉を両手に作り出していた。

 何十体もの空飛ぶ魔物が二人を襲っていく。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ハラパ・とある民家の中。

「ハァ……ハァ……」

 息を切らせるゲロベルデ走っていたのに疲れたのか、壁を背に座って一休みをしていた。その時――

 民家のドアを蹴り飛ばした者がいた。その者は民家の中へと入って行く。正体はオハバリだった。

「おわっ!! う……ぐ……何だ貴様は余を誰だと思っている!!」

 こんな時でも態度は変わらないゲロベルデ。

「フォックスグリードの四大独裁王の一人ゲロベルデだろ……?」

「分かっているならひざまずけ!! 虫がぁ!!」

 叫び散らすゲロベルデ。

「虫……そうやってお前らは何人使い捨てた。オレの親もグラスの親も、優しかった爺さんも、色々教えてくれたあのアニキも、何人も使い捨てやがって……」

「この奴隷ごときが!! 余の言うことを聞け!! お前も捨ててやるぞ!! お前の命は誰が手にしていると思ってるんだ!!」

 このセリフを聞いたオハバリは突撃した。短剣を持って、ゲロベルデの腹に突き刺した。

「――!!」

「オレの命はオレのものだ。馬鹿野郎があの世で皆にボコボコにされて来い」

 オハバリはゲロベルデの返り血を浴びる。ゲロベルデは息を引き取り倒れ込む。

「お前の首を旗印にこの時代を変えてやる。オレは革命家オハバリだ。世界の奴隷はオレが解放する」

 はぁ……はぁ……と息を漏らし、初めて人を殺めたオハバリだった。


 ▼ ▼ ▼


 タン!! タン!! タン!! と次から次へと建物から建物へと移動するロード。

「待て人間!! お前もトロイアの燃料だぁ!!」

 並行して飛び並ぶ鳥人のような魔物が現れた。

「邪魔だ!!」

 二本の剣を振り、

「おああああああ!!」

 魔物を霧散化させた。

(しまった今の攻撃でスワンの水の追跡を見失った)

 とある民家の上で水の行く道を探すロード。

 そこから改めて聞く街の悲鳴、ロード一人ではどうすることも出来なかった。

(グラス、お前には聞きたいことや、言いたいこと、返すものがあったが今はやはり――)

 悲鳴の聞こえる町へ行こうとした瞬間だった。

「よくここがわかったなぁ」

 聞き慣れた声が聞こえてくる。

「――――!!」

「また、テメーらのおかしな術か? 気に入らねー」

 そこにはグラスの姿があった。建物の上で対峙するロードとグラスだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...