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第六章 盗み、奪い、取る、緑色の襲撃者

第300話 しらべ隊と一緒にしらべたい

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 ロードはグラスの消えた岩穴を見続けていた。

 タタタタッと奥から誰かが走って来た。

「――!! グラスか!?」

「おお、何だお前は……」

 出て来たのは別人だった。メガネを掛けた老人だった。

「やっと外に出られたと思ったのに盗賊だ」

 メガネを掛けた白衣の男が言う。

「ああ、またしても、石碑に辿り着けずに……」

 メガネを掛けた白衣の女が言う。

「あれ……オレたちが逃がした人じゃないか?」

 背後にいたハズレが言う。

「もしかして逃げ遅れたとか……」

 スワンも彼らを見て言う。

「おお、さっきの珍しい人たち! わしたちは逃げなどせん! ここアリバレーに眠る石碑を読み解くまではな!」

 メガネ老人が言う。

「それが私たち歴史研究家!」

 メガネ男が言い。

「しらべ隊です!」

 メガネ女が言う。

「石碑が読めるのか?」

 ハズレが食い付く。

「うむ、だがどこにあるのやら……」

「場所ならわかる。その代わりその研究、私たちもついて行っていい」

 スワンが提案する。

「おお、もちろん石碑の発見の喜びを共に味わおうじゃないか」

「やりましたねガシラ先生」

「20年の勉強の成果が今実るのですね~~あ~~しらべたい、しらべたい」

「待ってくれ、アンタたちオレたちと同じくらいの人相の悪そうな左足を引きずっていた男を見なかったか?」

 ロードが訊いてみる。

「ん……いや、そんな者は見なかったな……ヂカラ、モト」

 ガシラ先生が後ろの二人に訊く。

「見てません」

 ヂカラが言う。

「見たいのは石碑です」

 モトが言う。

「左足がどうかしたのか?」

 ハズレが訊いてくる。

「グラスの左足が骨折した急いで治さないと……」

 ロードが言う。

「――!! それならまだ近くにいるかも、探そう」

 スワンが提案する。

「悪いがしらべ隊さん。少し待っていてくれ、連れが一人迷子なんだ」

 ハズレが報告する。

「うむ、我々は構わんぞ」

「楽しみだなぁ」

「ああ、しらべたい」


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ロードたちはリョウと合流し話し合った。

「よし、全員でアリバレー中を探してやる。任せておけ」

 リョウが言う。

「ありがとうリョウさん」

 ロードの顔が明るくなる。

「スワン水の策敵は?」

 ハズレがいい提案をする。

「魔物が出たせいで精霊たちと今は交信が出来ない」

 スワンが残念なお知らせをする。

「いいか、野郎ども!! 瓦礫を分けてでも――――」

 リョウが命令を出す時、

「団長!! 馬が一頭グラスに取られました!!」

 崖から大声で叫んでいたのはツルバシセン団の団員だった。

「――――!?」

 ロードは反応した。

「何だと! 追いかけたか!?」

 団長リョウが訊く。

「すみません途中で見失いました!! 東の方に逃げて言ったんですけど!!」

「わかった! 誘拐された連中は無事か!?」

「はい! 森の方で休ませてます!」

 団員は報告を終える。

「グラスが東に……」

 ロードは苦い顔をした。

「ロード、先に石碑を調べよう……それからグラスのことを考えよう」

 ハズレが提案する。

「ああ」

 渋々ロードは承諾する。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 アリバレー・石碑の間。
 ロード、ハズレ、スワン、リョウ、マテヨ、オテダシ、フセル、ガシラ、ヂカラ、モトは石碑の前にやって来ていた。

 壁一面に書かれた謎の文字、今その謎が解き明かされる。

「このフォックスグリードには同じものがいくつかあるのだが、私たちはここの噂しかしらん。盗賊団のアジトだったが好奇心には勝てずに入ってしまったのだ」

 ガシラ先生が言う。

 ヂカラ、モトは虫眼鏡を持ち、本を開き、石碑の文字を調べていく。

「おい、オレでもそんなバカやらねーぞ。本当に読めるのか? 爺さん」

 リョウが軽く馬鹿にする。

「読めなかったら本当にアホなんだけど……」

 スワンのキツイジョーダンが飛ぶ。

「理由が字が下手だったからだとさらに……」

 ハズレが遠い目をする。

「無駄なら今すぐグラスを探しに行く」

 ロードがそわそわしながら言う。

「読めるわ!! 今すぐにな!!」

 怒るガシラ先生。

「えっとまずこの壁を壊してくれないかな……」

 ヂカラが振り返ってロードたちに言う。

「――――!!」

「なぜ石碑を壊すことになる……読んでくれ」

 ロードが言う。

「いや、ここにそう書いてある。真実を知りたき者はこの向こうに道を作れと……」

「そうなのか? わかった、壊そう」

 ロードは青い剣を引き抜いて精霊ミチルの力を使って斬撃を飛ばす。

 ガココン!! っと壊れる石碑その奥に空洞があるのに気づく。

「おお、開いたぞ道が!!」

 崩れる瓦礫に構わずガシラ先生が先に飛び込む。

 そこにあったのは複数の壁画と綴られた古代文字。

「おお見つけたぞ!! 世紀の大発見!!」

「ガシラ先生やりましたね!! 壁画まであります思ってもみない宝の山です」

「あーーーーしらべたい、しらべたい!!」

「このダンジョンの宝がこれか……」

 ロードが見上げた。

「もういいから早く読んでくれないか?」

 マテヨが待ちきれずに言う。

「ねむっ」

 オテダシがあくびをする。

「おお!! お前さんたちの言う通りだ!! ヂカラ、モト、明かりを灯せ!!」

「「はい」」

 ヂカラとモトが蝋燭を設置していって石碑の文字を読みやすいようにする。

「お前さんたちはどこまで知っているのだ?」

 唐突にガシラ先生が聞いてくる。

「どこまでって……」

 スワンが考えるが、

「何も知らない」

 ロードが答える。

「それでは聞いても仕方がないだろう。よかろう重要なことだけ教えてやるぞ」

「ありがたいけど短く頼む」

 ハズレが言う。

「まず、フォックスグリードという国は見た通り、貧困が蔓延しておるが……国外はもっと酷い魔物までうろついておること」
「次にダンジョン……古人たちが作った、宝の隠し場所。財宝、食器、服、武器、工芸品など様々なものが秘められた遺跡。それから欲深き溝――」

「そいつの言い伝えは知っている」

 リョウが言う。

「先へ進めて……」

 スワンも言う。

「では独裁と奴隷社会……未だに独裁者が国を治め、奴隷たちが強制労働を強いられているこの状況は……?」
「そして盗賊、その奴隷たちが逃げ出した、あるいは飢えを凌ぐために環境によって出来た集団……そしてここからが重要、強欲王ゴスべージャス」

「……………………」

 ロードは黙って聞いている。

「今から千年以上前に存在したと言われるフォックスグリード、さらには世界全土を支配していたと言われる世界的な王」
「よろしいかな、これらを頭に入れ聞いてくれ」

 ガシラ先生の抗弁が終わる。

「先生準備が出来ましたので」

 ヂカラが言う。

「あーーーーしらべたい、しらべたい」

 モトが手をわなわなさせている。

「うむ、ご苦労。十分に記録するのだ」

「「はい」」

「では我々も石碑を読むとしよう」

 ガシラ先生の発言に、ゴクリと唾を飲み込むロード。

 今、この異世界の秘密が明かされる。
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