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第六章 盗み、奪い、取る、緑色の襲撃者

第293話 ガキを舐めるな

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 ロードの蹴りが炸裂した地点にはテンロウの姿はなかった。

「――――!?」

 そして土煙に紛れてテンロウが蹴りを繰り出し、ロードはそれを手の枷で防ぐ。

 タタタッと後ろからメリケンサックを備えたワーと、大剣を持って来るダイシンの姿があった。

「ぐらああああああ!!」

 大剣を右から左へと振り被ったダイシン。その一撃をロードは手の枷で防ぐ。そのままダイシンはタックルをかますが、ロードはこれを避ける

「ワーパワー!!」

 避けた先にワーがロードに殴りかかっていく。これをロードはカウンターの蹴りを繰り出して止めようとしたが、

「へっ!」

 ワーは殴るのをやめてロードの足を掴み動きを制限する。

 そこへ、そり曲がった剣で突き刺しにかかる目つきの悪い男ハイエ。ロードは足を掴まれた状態から身体を起こして避ける。

 更に、別の足を使って掴まれた足とフリーの足でワーの腕を挟み込んだ形にすると、力を入れてグキッと音が鳴りワーの腕の骨を折った。

「ぐおっ!!」

 この攻撃にワーは足を掴んでいた手を解放せざる負えなかった。
 
 そしてロードはワーとハイエ、両者の頭に蹴りを放つ。

「こいつ~~~~」

 ダイシンが言う。

「ガキのくせしてよく動き回る」

 蹴りを受けてなお立ち上がるハイエが言う。

「おじさんとも遊んでくれよ」

 はだけた服を着るノロシが刀を持ってロードに向かってくる。

 ロードは足元にあった剣の柄を蹴り上げて、歯でガッチリとそれを噛むと、ノロシの刀にガキンと音を鳴らせて対抗した。

 ガキキキキキキキキキキンと剣と剣がぶつかり合う鉄の音が響く。

「やる口だね~~~~」

 ヒューッと口笛を鳴らすノロシ。

「――――!!」

 ノロシが剣戟をやめて後ろへ下がった。

 そこでロードは気が付いた。盗賊たちが弓矢を持ってロードを狙っているのだ。

「射貫け!!」

 シリウスの号令で一斉に弓から矢を放つ盗賊たち。

 ロードはタタタッと走り、ガガガッと地面に付き刺さる矢を避けて行く。

「行き先を狙え!!」

 シリウスが盗賊団員に指示を出す。そしてロードの正面に矢が射抜かれていくと、ロードは上にジャンプして避ける。

「――――!?」

 ロードは目を見開いた。

「宙に足場なし!!」

 シリウスが矢を放った。バシュンッと撃ち放ち、宙にいるロードの左足に矢が刺さる。

 ズザザザザッと地面を滑るロード。バシュシュシュンッと弓矢が射抜かれる。

 ロードは口で加えた剣でガキキキキンと矢を弾いていくが、そのすべては凌ぎきれず、腕に二本の矢が刺さり、肩に足にと次々矢が刺さっていく。

「くっ……」

 矢の雨が終わる。

「もう冷めちまったか……テメーの怒りは……」

 テンロウを筆頭に盗賊たちが並ぶ。

「……………………」

 ロードは痛みに耐えていた。

 その時――

「う……」「うあ――」「ぐああ!!」

 盗賊たちの後ろの方からうめき声が聞こえて来た。団員たちが誰かに倒されていっていたのだ。

「!」

 テンロウが振り返る。

 倒した盗賊を足蹴に襲撃者は告げる。

「そいつはオレの獲物だ。横取りすんじゃねーークソオヤジ共」

 現れたのは両腕を背中でガッチリ拘束されたグラスだった。

(グラス、何故ここに――)

「ちっ、来たねーネズミが一匹逃げてやがる」

 ハイエが舌打ちした。

「アイツもやっちまうか頭!!」

 腕が折れたはずなのに元気なワーが訊く。

「殺せ」

 テンロウはそれだけ言う。

 すると、グラスは足元にあった剣を三本蹴り上げる。

「――死ね!!」

 グラスは宙に舞った三本の剣を再び蹴り出すと、剣はまるで円盤のように回転し前へと斬り進んで行く。

 テンロウを含めた盗賊たちはそれぞれ避けて行く。そして――

 その回転する剣はロードにまで向かって行く。

「――――!!」

 口元の剣で回転する剣を弾くロード。

「アイツを狙ったのか?」

 シリウスが言う。

「オレたちはどうでもいいってか?」

 ノロシが言う。

「ぐおぉっ!!」

 グラスは盗賊の一人の顎を蹴り飛ばして前へ進んで行く。

「邪魔だ!!」

 タタタタタタタッと走り出すグラスは、ロードへと一直線に向かって行った。

 そしてロードの元へ辿り着き、足技を食らわせるが、ロードも足技を使って受け止めていく。

「やめろ!! グラス今は!!」

「テメーは奴らには殺させねーオレが殺す!! ぶっ殺す!!」

(こんなときまで……一途な奴だ)

 ロードは笑顔を作り出していた。

「チッ、何笑ってやがる!! かかしがぁ!!」

 グラスは渾身の蹴りを食らわしてロードを吹っ飛ばす。

 ズザザザザッとロードの身体が地面を滑る。

「――――!!」

 ロードは殺気を感じた。倒れ伏せた頭上にはテンロウがいたのだ。

「命は無料だ……」

 螺旋拳いわゆるドリルをロードの顔面に叩き込む。が、

 テンロウはその顎をグラスに膝蹴りされて、下から吹っ飛ばされて行く。

「ごっ!!」

「オレの獲物に手を出すなつってんだろ」

「このガキがぁ!!」

 起き上がったロードがテンロウの腹を蹴る。

「命は手に入れるものではない」

 ロードが教えを説く。

「大人を舐めるなガキ共がぁ!!」

 両腕の螺旋拳がロードとグラスに襲い掛かる。が、

「「大人が何だ!!」」

 ロードとグラスが渾身の蹴りを放ち、テンロウを岩壁まで吹っ飛ばす。

 土煙の中、テンロウのサングラスが宙を舞い割れる。

「「ガキも甘く見るな」」

 ロードとグラスは同じセリフを言う。

「頭無事か!?」

 ハイエが聞きに行く。

「あらら、ぶっ飛ばされちゃって……」

 ノロシが笑う。

「近寄るなハイエ! さすがにキレているぞ!」

 ダイシンが忠告する。

 ガラガラと瓦礫から這い上がるテンロウ。

「何してんだドリドリム団!! 殺して奪え!!」

 ロードとグラスは盗賊たちに取り囲まれた。

「大ピンチか……」

「テメーを仕損じたせいで、クソが……」

「安心しろ……お前の命はオレが必ず守る」

「テメーは必ずオレが殺す」

 ロードとグラスはかみ合わない会話をする。

「殺せ!!」

 テンロウが叫ぶ。

『『『オオオオオオオオオオオオオオ』』』

 飛び掛かっていく盗賊たち。

 身構えるロードとグラス。

 その時、天井がピシシッとひび割れて、

 瓦礫の山が降り注ぐ。

『『『――――!!!?』』』

 その場に居た誰もが驚いた。何せ突然天井が割れて瓦礫が降って来たからだ。

「流石我が嗅覚、力強き人間共をこれほど簡単に探り当てたか。これだけあればあの方の為にもなろうな。まさしくここは命の山だ!!」

 土煙の中から出て来たのは、獅子のような姿をした岩の魔物だった。
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