上 下
194 / 774
第四章 酒場の情報から精霊石や馬を手に入れて旅をする

第194話 動物の肉への克服

しおりを挟む
 ロードとハズレはディホースの亡骸を見ていた。

「はぁ……はぁ……」「アレ? フレアザーズは?」「い、いない?」

 そんな中、フレアザーズの言うことを聞いて酒樽を持って来た25名の魔物狩りが現れた。

「皆……フレアザーズならもう倒したよ……だから安心してくれ」

「た、倒した?」「あんな化け物を?」「ハズレさんがやったのですか?」

「いや、倒してくれたのはここにいるロードと……」

 ハズレが言葉を濁した。

「……ディホースという馬さ」

 ロードがポツリと呟いた。

「こいつはひでぇ怪我だ」「息を引き取っているみたいだけど?」「オレたちが戦っている間にこんなことが……」

 皆無残になった馬を見て悲しそうな顔を浮かべている。

「皆、この馬ディホースの供養をするから下がっていてくれ……ハズレ頼む」

 ロードはディホースの亡骸から一歩下がった。

「本当にやっていいのかい?」

 ハズレは確認する。

「それがディホースの為だから……」

 そうロードが口にするとハズレは行動を開始した。懐から油の入った瓶を取り出してディホースに垂れ流していく。そして次はマッチ棒をすり、油のかかったディホースに投げ放った。油に当たった街の炎は一気に燃え広がり、ディホースの亡骸を火葬していった。

「さよなら……ディホース」

 ロードはどこか寂しげに口にした。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ルール―街・酒場の前。
 ロードとハズレ、それと他の魔物狩りが25人酒場の前に到着し中へ入って行った。
 その前にロードとハズレはスワンに出会う。

「ロード! ハズレ! 大丈夫! 魔物はどうなったの!?」

 二人のありさまを見て、心配するスワンだった。

「心配ない魔物なら倒してきた。それと服はボロボロだが、傷は殆ど回復した」

 ロードはさり気なく言った。

「何その服の焼け焦げた跡は本当に心配いらないの!?」

 スワンがロードの格好に驚いていた。

「ああ、問題ない。これもきっと道の秘宝玉の効果かもしれない」

「こっちは汗だくだけどな、アイツらと勝負すると暑くて暑くてかなわないさ」

「アイツらって、いったいどんな魔物と戦ってきたの?」

「それは酒場の中で話そう。とにかく今は何か食べないと……」

「………………」

 ロードとハズレが酒場へ入ろうとした時だった。

「ディホースはどこへ行ったの?」

 スワンが訊いてくる。

「「……」」

「わたし、ディホースに言ってしまったの……ロードとハズレが魔物を倒しに行ったから心配しないでって、そしたら急に駆けだしてどこかへ行ってしまったの、ねぇ二人はディホースに会わなかった?」

「会ったけど……アイツは先に遠くの空に飛び立っていったよ」

「そう……」

 スワンは涙をこらえてフルフル震えていた。

「行こう。しっかり食べないとこれから戦う魔王戦がキツイぞ」

 ロードがスワンに手を差し伸べた。

「うん、そうね」

 スワンはロードの手を取って酒場の中に戻っていくのだった。


 ▼ ▼ ▼


 ルール―街・酒場
 酒場内は魔物が出る前と変わらず活気あふれていた。特にフレアザーズの為に持ち運んできた酒樽を飲んでいてマスターにとっても未だかつてないほど魔物狩り達は迷惑をかけていた。

「ったく。アイツらときたら大騒ぎして……」

 酒場のマスターが頭を悩ませた。

「許してやってくれないか? アレでも命がけでこの街を救おうとしてくれたんだ」

 ロードは甘酒を一杯口にしてマスターをいさめた。

 そんな時だった。

「ようようよう! 兄ちゃん! フレアザーズを仕留めたんだってな」「若いのによくあんな恐ろしい化物に戦いを挑めたもんだ!」「ホントよね! ホント尊敬しちゃう!」

 ロードの周りには酒の入ったジョッキを持った、色んな魔物狩りたちの姿があった。

「さぁさぁキミも飲みな!」「気分がスッキリするよ」「シュワシュワで辛いぞ」

 酒を持った男や女が今回の件の立役者であるロードに寄ってたかって酒を進めていた。

「大丈夫です。オレは甘酒で十分ですので……」

「おい、ロードが困ってるんだここはプラチナ勢のオレの顔に免じて絡まないでやってくれないか?」

 ハズレがワインとチーズを手に発言する。

「って言うか未成年だからお酒は飲めないんだけどね」

 スワンがぼそりと口にした。

「マスター出来上がりました!!」

 その時、厨房の方から声がした。

「おおよ持って来い!!」

 店員が持って来たのは巨大な豚の丸焼きだった。それがロードの目の前に置かれていく。

「ロード、本当に大丈夫? 無理しなくてもいいんだからね」

 スワンが心配そうな目で見つめてくる。

「もう大丈夫だ。それに血肉をつけないとこれからの戦いに支障が出るのはわかった。これからは豚さんや牛さんを食べて生きていくさ」

 ロードはナイフとフォークを両手に豚の丸焼きに手を出した。そしてそれを口にする。それを見ていたスワンは心配そうな顔をまだ続けていた。

「いい食べっぷりだ!」

 ワインに酔ったのか……どこか楽しそうなハズレが言って来た。

「ゴクン! うんおいしい!」

 そんな陳腐な感想を漏らしていた。

「吐き出さないでよ……」

 スワンが言って来た。

「大丈夫もう命は粗末にしない出された料理は完食して見せるぞ」

 ロードは完全に動物の肉を食べることに克服したのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...