上 下
181 / 743
第四章 酒場の情報から精霊石や馬を手に入れて旅をする

第181話 反省会とこれから

しおりを挟む
 ルール―街・近隣の道。
 レース後のロードは何かに乗っていた。
 スイスイと進むその乗り物に全く揺れる気配がない。

「……ん? ううん?」

 ロードは気持ちのいい眠気から目を覚まそうとしていた。

「ん? ここは……?」

 ロードは目を覚ました。そこはどうやらスワンの荷船の上らしい。暗がりの景色が見えて来たので、どうやら夜に差し掛かっている頃合いらしかった。

「起きたかいロード……? スワンさん、ロードが起きたよ」

 ハズレは荷船に腰を下ろしていたようだった。

「えっホント?」

 スワンがドルちゃんに乗りながら訊いて来ていた。

「おはようスワン」

 ロードは声を掛けた。

「おはようじゃなくて、もうこんばんわの時間なんだけど……」

 スワンが指摘する。

「どうしてオレは寝ているんだ? レース会場にいたんじゃなかったのか?」

 誰でもいいから答えてくれという問だった。

「キミはレースの表彰式の後、ディホースに乗ってまた気絶して、落馬したのさ」

 ハズレが答えた。

「そして、ハズレがロードを担いで荷船のあるところまで来てくれて、乗せてくれたって訳」

 スワンが答えた。

「そうか、また気絶したのか……」

「記憶はどこまで覚えているんだい?」

「えっと、ディホースに乗って会場の外へ出ようとしたところだな……そうだところでディホースは?」

「荷船の後ろに買った時についてきた檻があるでしょ、今は大人しくそこで眠っているから、あなたのことずっと心配していたみたい……でしょハズレ……?」

「ああ、餌をあげようとしてニンジンを渡したんだが、ロードの方にニンジンを食べさせようとしていた」

「そうか……」

 少し嬉しそうなロードだった。

「それでどうして一位を逃したのかそろそろ聞かせてくれない?」

「ああ、最初の半分は捨て試合なものさ後半から一気に一位まで追い上げようとしたのさ……」

 ハズレがそう切り出した。

「その作戦誰がたてたの?」

「もちろんオレさぁ、ロードの風よけになって一位まで突っ走り体力を温存したロードが一気に一位を追い越すって言うシナリオだったんだが……」

「だが?」

 スワンが質問する。

「面目ないオレが気絶して落馬してしまったお陰で一位を逃した」

「いや、キミの疲れを計算に入れていなかったオレの痛恨のミスだよ……そんなに自分を責めないでくれ」

「一位はどのみち取れなかったと思うよ」

 スワンが一石を投じた。

「「――?」」

「だってあのレイアル・スライダーってレース王、すぐにロードに追いついて抜かして行ったもん。もし作戦通りにロードが気絶しなくても一位は無理だったんじゃないかなぁ」

 客観的な視点を持ったスワンがそう言う。

「「そうか~~完全に負けてたのか~~」」

 二人はやっと肩の荷が下りたみたいにくつろぎ始めた。

「それでロード、もう一個質問なんだけど、ディホースはどうなるの? 約束通り野原に放し飼いにして逃がすつもり?」

「ああ、そのことか……オレも気になっていたんだよな。ぜひ聞かせてくれないか?」

「ああ、その話ならディホースはオレたちの旅に同行したいんだとさ……スワンどうする? 許してくれるか?」

「許すも何もあなたの馬でしょ? 責任を持って飼えるのならわたしは連れて行っても構わないから」

「そうか……ありがとう」

「……うん」

 ドルちゃんに乗って背中越しに答えるスワン。

「それからごめん」

「何が? ごめんなの?」

「優勝して1500枚金貨獲得できなくて……」

「そんなの期待してなかったよ……」

 内心では期待していたスワンだった。

「フフフ、期待してないはずないだろ? あの怒涛のレース現場を見ちゃったら」

 ハズレが茶化すように言う。

「……ホントごめん」

「だから私は気にしてないって、そんなことより明日も二日酔いの人物狙っておいしい水を売りだすんだから手伝ってよね」

「ああ……わかった」

 ロードは落ち込んでいた表情をキリッと切り替えた。

「いい彼女さんじゃないかロード、大切にしなよ」

「か、彼女!? 違っ!? わたしとロードは彼氏彼女の関係じゃない!」

 魚のように逃げ出したいスワンであった。

「即否定は傷つくな……」

 ショックを受けるロード。

「――だって、本当に付き合ってないんだもん」

 意地になって否定のスワン。

「そうだったのか? 傍から見れば二人はカップルにしか見えなかったけど……」

「う~~~~ん」

 顔を赤らめるスワンであった。

「それより今どこへ向かっているんだ。もう夜も近いここらで野宿でもする気か?」

「違うルール―街に向かっているんだ……」

 答えたのはハズレだった。

「ルール―街って確か酒場のある街だったよな?」

「そう、酒場のマスターに今回の一連の旅を聞かせたくなったのさ……」

「そうか」

 一行はルール―街へと向かって行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...