上 下
164 / 743
第四章 酒場の情報から精霊石や馬を手に入れて旅をする

第164話 飲料店の繁盛

しおりを挟む
 上空。
 アカに乗って高速移動している最中にハズレとスワンに話しかけられるロード。

「ロードォ! キミは一体何者だ!」

「勇者だよ」

「このドラゴンが前に言っていた友達の竜なわけ!?」

「そうだけど……あまりしゃべらない方がいいぞ二人共、舌を噛むからな」

 ロードは完全にアカに乗り慣れていた。

「おい見えて来たぞヤマダシオだ!」

 そうこうしている間にヤマダシオの街が見えて来てハズレが叫んだ。

「アカ! あの丘に着陸してくれ!」

「ダメ! 何人かの人が見える! 竜を見たらきっとビックリして大騒ぎになる!」

「じゃあその辺りの森の着陸してくれ!」

「わかった……」


 ▼ ▼ ▼


 ヤマダシオ・近隣の森。
 アカはまず手に持っていた荷船をゆっくり下ろし、ハズレとスワンが降りやすい態勢を取った。
 ロードが飛び降り、ハズレスワンの順番で降りてくる。
 
「今回はここまででいいご苦労さまアカ」

「ああでは我はまた眠りにつくとしよう。ハズレ、スワン、また会おう」

 そしてアカは竜封じの剣に姿を戻した。

「その剣に竜が封じ込めてあるのは本当だったんだ……」

 スワンは未だ信じられないものを見ているかのような目を向けていた。

「さて、本当に2時間で着いてしまったが……これからどうする馬乗レースは2日後だぞ」

 ハズレは冷静に宣告する。

「それまではのんびりと飲料店でも繁盛させないか……?」

 ロードが提案する。

「さんせー!」

 スワンは乗ってくれた。

「飲料店? 赤い竜に荷船を透明にさせる指輪、キミたち本当に何者だよ」

 ハズレは不思議そうな目で二人を見ていた。


 ▼ ▼ ▼


 ヤマダシオ・街の中。

「おいし水はいかがですか! 甘くておいしい水はいかがですか!」

 スワンがドルちゃんに乗りながら客引きしていた。

「うう、二日酔いなんだ。一杯水をくれないか」

「は~~い、少々お待ちください」

 スワンはドルちゃんから降りて、店に保存されたおいしい水を一杯注いでいく。

「おいしいおいしいフルーツのジュースもありますよ! いかがですか!」

 ロードも負けずと客引きをしていた。

「フルーツのジュースってなんだい?」

 ハズレが訊いてきた。

「フルーツから果汁を絞り出した飲み物のことさ」

「へ~~お金を払うから一杯くれないか?」

「わかった。じゃあここに書いてあるメニューから選んでくれ」

 ゼンワ語で書かれた文字でハズレは読めるかどうか気になったが、どうも読めたようで、

「じゃあこのレモン水をくれないか?」

「わかった待っていろ」

 ロードも店に保存されていたレモンをすぐに搾り機で搾り、おいしい水を少々加えてジュースの完成させた。

「はいどうぞ赤銅貨10枚です。冷たい間にお召し上がりください」

「ああ、ありがとう」

 ハズレは赤銅貨10枚を払う。そして一口味見する。

「すっぱ! それと甘すぎないか?」

「そう言う飲み物なんだ。不味いか?」

「不味くはないけど、酒やワインを飲みなれた下には物足りないな」

「ロードォ! 突っ立ってないで手伝って、おいしい水10杯の注文だよ!」

「わかった今用意する」

 この時ハズレは、
(もっと幅広い商品を出さないと……甘いだけの客引きじゃあすぐに店が廃れるぞ)
 と思っていた。

 しかしハズレの分析とは異なり、今回昼までの収入は赤銅貨3000枚越えの売り上げを達成した。

「やったーー今回のおいし水は売り切れた!」

 スワンが大喜びしていた。

「ジュースの方は売れ残ってしまったか、はぁ~~」

 冷蔵保存されたフルーツたちを見て落ち込むロードだった。

 この時、
(マジか、水の方が売り切れたか!?)
 とハズレは思っていた。

「赤銅貨3000枚も売り上げるなんて銀貨30枚レベルの売り上げじゃない黒字だ黒字」

 スワンが水を得た魚のように飛び跳ねた。

「凄い売り上げだな金閣寺で武器を買えるレベルだぞ」

 ハズレが言い出した。

「水は殆どタダなレベルだからこれは凄いことなんだぞ……」

 ロードが言い放った。

「へ~~考えたもんだなぁ、酒飲み世界で二日酔いの連中相手に水を売るなんて、朝方に商売してよかったな」

「えっ!? そう言うことだったの? 皆、ビールやお酒の酔い覚ましで買っていたの?」

「それはそうだろ? 気が付かなかったのか?」

「「全然……」」

 スワンもロードも気づいていなかった

「水また汲んでこないとな~~」

 ロードが呟く。

「そうね、もう一度この売り上げを出したいからあとで水を汲みに行きましょう。でもまずは昼食にしましょう」

 スワンを先頭に荷船が進みゆく。

「ヒヒ―ンヒヒ―ン!」

 その時、ロードは耳にしていた。そして黒馬の姿をその目に捉えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...