上 下
159 / 774
第四章 酒場の情報から精霊石や馬を手に入れて旅をする

第159話 ガンガバレーの道のり

しおりを挟む
 ガンガバレー・岩山の麓。

 一山超えて、昼食を終えて、カンさん率いるロード一行はゴツゴツとした岩山の入り口に辿り着いた。
 そして道すがらズシズシと歩いていく。
 こういうところは慣れないのかスワンんはかなり疲れを見せていた。無理もない一山超えて来たところなんだから、

「スワン! 休みたくなったら言ってくれよ!」

 ロードがその足取りを見ながら忠告していた。

「はぁ、はぁ、大丈夫……」

 言う割には息は絶え絶えだった。

「カンさんも休みたくなったら言ってください」

 先頭を歩くカンさんの気を遣うハズレだった。

「はい、僕はまだまだ大丈夫ですよ。お気遣い感謝しますハズレさん」


 ▼ ▼ ▼


 ガンガバレー・岩山の道。
 岩山の道をただひたすら歩いていく。ときには坂だったり、崖っぷちに立たされることもあったけど、みんな頑張ってガンガバレーの奥へ奥へと踏み込んで行った。

「あとどれくらい歩かなければならないんだ?」

 ふとロードが訊いてみた。

「20分くらいで目星のあるところにつけますよ。けど、岩山は足場が悪いのでどうしても歩きづらい。時間が掛かるかもしれません」

「そうか」

「それよりロードさん僕のなまくら剣の出来がいいとおしゃったそうですね」

「ああ、よく出来ている剣だと見て思ったからな……」

「キン師匠と同じものを感じられるんですね。僕には失敗作にしか見えないんですが、」

「失敗作には見えなかったがな」

「いいえ、僕の剣なんかよりも兄弟子たちの方がいい剣作りますよ。何と言っても20年以上は師匠の下で教わったらしいですからね。僕なんか3年くらいしか……」

「カンさんの剣と兄弟子たちの剣は何か違いがあるのか?」

「はい、二番弟子のテンさんは師の技術を徹底的にマネして少しの時間で同じ性能の剣を何本も作れる量産型タイプなんです。それも失敗作を作ることなく……」

「それは凄いな」

「けど、テンさんの剣は皆オリジナリティに欠けているし、注文がなくて店に置いてあるのは大体テンさんの剣なのさ」

 ハズレが会話に割って入って来ていた。

「あの~~ハズレさん本人は気にしているみたいなのであまり言わないであげてくださいね」

「それじゃあトンさという人はどんな鍛冶職人なんだ?」

 ロードは話題を切り替えた。

「トンさんはですね……キン師匠の一番弟子でして、弟子入りするときに3日間店の前で正座して頭を地面に擦りつけながら弟子入りをお願いしたと聞いています」

「それは凄いな三日間も飲まず食わずだったのか?」

「はい、特別才能があった訳でもなくて、テンさんの時のようにまだ弟子を取る気は考えていなかった時期でした。それでもキン師匠の根負けで弟子入りしたんです」

「凄く根性のある人だな」

「ええ、そしてキン師匠の教えや信念を受け継いでいるんです。その腕が作り上げる剣はとても性能に優れ、他国の鍛冶職人の中でずば抜けている、まさにキン師匠の後継者と呼べる人です」

「ハズレ、あの人はそんなに凄い人だったのか?」

「まぁね、けど腕はまだキンさんの方が上だよ」

「ハズレさんその手に持っているのは何?」

 唐突にスワンが、ハズレの手首に巻かれた紐にぶら下がったしずくのような宝石を見て口を挟んだ。

「ああこれか? 裏切りの瞳って言って魔物が近くにいると知らせてくれるんだよ」

「どうやって知らせるの?」

「これが黒く輝きだしたらその合図さ」

 その時僅かにしずくのような宝石は光出した。

「――って、言いてる側から光出して――――!?」

 その時、ゴロゴロゴロと崖の上から大きな岩が土砂崩れのように次々と転がり落ちて来た。一つ一つが7メートルもある大岩だった。そして唯一の道が大岩によってふさがった。

「カンさん危ない――――!?」

 ロードは目の前にいたカンさんを庇い前へと進み出た。

「ロード! カンさん!」

 スワンの声が転がり落ちて来た岩の山の向こうから聞こえて来た。

「はぁ、はぁ、はぁ」

「安心してくれスワン! カンさんもオレも無事だ!」

「よかった二人とも助かったんだ!」

「ハズレは無事か!?」

「ああ無事だよ!」

 ハズレが岩山の向こうから答えた。

「立てるかカンさん」

 カンさんに手を刺し伸ばすロード。

「あっ、うん、ありがとうロードくん」

 その手を掴み立ち上がるカンさん。

「ロード道もふさがってしまったし先に行っててくれ! オレとスワンさんはこの岩山を登ってから追いつくことにするよ」

「二人だけで大丈夫か!?」

 ロードは大きな声で二人に届くように言い放った。

「大丈夫だこれでもプラチナメダル星一つは伊達じゃない。それよりも気を付けてくれこの山には魔物がいる」

「わかった!」

「……という訳だカンさん。俺たちは先を急ごう」

「こんな崖の崩れ方、キン師匠の時と同じだ」

 かんさんの声は震えていた。

「何だって……まさかキンさんの死は……」

 ロードは自分なりに推測してみた。

「ああ、もしかしたらこの地に住み着く魔物の仕業かもしれない」

 とある魔物がロードとカンさん、二人の姿を遠目に見ていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。

永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。 17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。 その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。 その本こそ、『真魔術式総覧』。 かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。 伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、 自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。 彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。 魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。 【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...