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第三章 素晴らしき飲料店で働き始めます

第139話 ロードへの応援

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「何だそれは!?」

「知らないか? カンガルーって動物を奴らは尻尾を使って喧嘩したりもするんだぜ」

 5本の尻尾をばたつかせる。

「そいうことを聞いているんじゃない。それだけの尻尾が出せるのにどうしてワニの尻尾を出してこない」

「さぁ~~~~なんでだろうな、さてと、行くぞ!」

 カンガルーテイルと名称された5本の尻尾が、ロードに向かって鞭のように襲いかかる。
 ホースのように細く、20メートルまでの長さもあるカンガルーテイル。
 ロードは何が仕掛けられているかわからないので避けるほか選択肢がなかった。

(このカンガルーの尻尾で勝負を決めるつもりか?)
(ヤツの尻尾には魚のように移動が速くなったり、イヌのように危険感知が出来たり、トカゲの尻尾のように不要な尻尾を切り落としたり、ワニの尻尾のように重く鈍器な尻尾だったりとそれぞれ役割があった。ではこの尻尾は?)

 ロードは思考を巡らせながらとりあえず尻尾を切り落とした。

(切れた。カンガルーの尻尾くらいなら片手で力を入れても切れるわけか、あまり大したものではなさそうだ)

 ロードは一本目のカンガルーの尻尾を切り落とすと、二本目、三本目、四本目と次々切り落としていく。

「よしあと一本!」

 その時、ワニの尻尾が振るわれた。ロードはカンガルーの尻尾を調子よく切っていったので気づいていなかった。

(カンガルーの尻尾は陽動だったのか――!?)

 ロードの身体はカンガルーの尻尾を切るために、大ジャンプをしていたので今は空中にあり、ワニの尻尾を避けるための足場がなかった。
 仕方なく剣を振りかぶり、ワニの尻尾に剣を食い込ませる。
 しかしそれは罠だった。ワニの尻尾の方が陽動だったのだ。
 ワニの尻尾に食い込ませた剣を持ちながらも、そのままカンガルーの尻尾に巻き付かれた。

「ホ~~ラ捕まえたぜぇ、剣士ちゅわ~~ん」

「剣士じゃない勇者だ――――ぐわあああああ!!」

 カンガルーの尻尾に締め付けられる。

「終わりだ終わり……あとはこのワニの尻尾で頭叩き割ってやるよ」

(くっ、ワニの尻尾はオレを意識させるための囮、本命はオレをカンガルーの尻尾でがんじがらめにすることだったのか……?)

「ここまでだ。さようなら、ケヒヒヒ、このクロコテイルによって潰される」

 魔王フォッテイルがワニの尻尾を振り上げた。

 その時だった。

「が、がんばって~~ロードさ~~ん!!」

 スベリさんの声援が聞こえて来た。

「そうだそうだ頑張れ~~」「優勝者が負けるんじゃないぞ!」「そんな化け物早くやっつけちまってくれ!」

 会場内から次々と声援が聞こえて来た。

「これはロード選手大ピンチです! 皆で声を上げてロードさんを応援しましょう!」

 フルーツ祭典の司会者がそんな提案をして来たのだった。

『『『がんばれ~~がんばれ~~』』』

「ち、うるせい連中だなぁ……言ってやるか?」

「何を、はぁ、はぁ、言う気だ!?」
 
 ロードは息苦しさを覚えた。

「いいから黙っていろ!」

「ぐわあああああああああああ!!」

 ロードへの締め付けがかなりきつくなった。

「いいか!! 人間どもこいつはおれっちに立てついた。こいつのように公開処刑をされたくなかったら大人しくしていることだな」

『『『がんばれ~~がんばれ~~』』』

「ちっ聞き入れちゃいねぇ、これだから魔物もいない田舎世界は困るぜ。まぁ真っ赤に染まった死体を見せれば考えも変わるかもなぁ」

「や、やめ、ろ……」

「命乞いか? いいぜ聞いてやる」

 魔王フォッテイルは改めてロードを見てその声を聞こうとする。

「オレは魔王からここにいる人たちを守る勇者だ!」

 竜封じの剣はワニの尻尾に食い込んでいてすでに手元にない。

「アカ!? 起きろ! 魔王だ! 魔王がオレたちを攻撃しているぞ!」

「ケヒヒヒ、何だ何だ? 誰に言ってやがる? アカってのは何だ? 剣に名前でもつけてるのか? 可愛い趣味を持っているな!」

(くっ、ダメか、全然起きる気配がない)
(このままではオレは殺される)
(最悪の場合はオレだけじゃなくこの会場にいる人たちまで殺されることだ)
(そしてスワンも魔王の手に落ちる)
(こんな惨劇だけは避けたい)
「頼むアカ、起きてくれ!!」

「そうだいいこと思いついた」

 魔王フォッテイルは自分の尻尾に食い込んでいた竜封じの剣を手にした。

「この剣で首をはねられるか、クロコテイルによって頭を勝ち割らせるか、選ばせてやるよ! さぁどっちがお望みだ!」

(バカかオレはこれでは前にいた世界の時と同じじゃないか)
(ここは、こんな状況になったら、あの力を使うんだ)
(皆も応援してくれている負けるわけにはいかない)
(頼む出てきてくれよ)

「……返答なし、じゃあ頭勝ち割ってそれから剣で首をはねることにしよう」

「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 その時、ロードの身体が光りだした。そしてズバンと締め付けられていたカンガルーの尻尾が切り裂かれていく。

「何だ何だ!? くっそ! 眩しくてよく見えねぇ――――」

 魔王フォッテイルは目元を手で隠していた。

「――斬る!」

 光の剣を手にしたロードは魔王フォッテイルを引き裂きに行くんのだが、

「――ドッグテイルを信じてギョルイテイル発動!」

 その場からすぐに距離を取った。

「厄介だなその尻尾は……」

「くっ、お、お前何をした? どうしてカンガルーテイルを引き裂けた」

「オレも持っているんだよ。道の秘宝玉を――」

 ロードと魔王フォッテイルの戦いも佳境に入って来ていた。
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