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第三章 素晴らしき飲料店で働き始めます

第117話 スワンと交渉してみた

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 スワンはロードから事情を訊いていた。

「何でわたしがあなたの言う通り村で飲料店を開かなくちゃいけないの?」

「何でってこれを見てくれ」

 ロードは手に持っていた紙を渡した。

「ん? ナニコレ、明日のフルーツ祭典のポスターじゃない……これがどうかしたの?」

「そこに書いてないか。飛び入り参加も大歓迎みたいなこと?」

「ん? う~~~~ん、確かに書いてあるけど……これが何?」

「フルーツの祭典に出場したみたい」

「マジ?」

「ああ、そのためにはフルーツが大量にいるんだ。だからフルーツ集めを協力してほしい」

「わたしに何のメリットがあるの?」

「商品を見てくれ……そこにはゴールデンアップルが描かれているだろう?」

「ゴールデンアップルか~~、これがわたしへの報酬になるってこと?」

「そう」

「あなたね~~夢見すぎじゃない? この祭典は各村からの腕自慢が集まってくるお祭りなの……私たちみたいな素人が出て行っても優勝なんて出来ない。言ってることわかる?」

「挑戦してみないとわからないだろう? それにそっちはおいしい水を売り出したいはずだ」

「それはまぁ……そうだけど」

「オレが客の呼び込みをするからそっちはおいしい水を用意してくれ……」

「だから、ここではおいしい水は売れないんだって……」

「何時間ぐらい売っていた?」

「えっ? え~~っと10分」

「売り出しに行こう。大丈夫、スマイルさえあれば客引きになるから……」

「そんな簡単に行くわけないでしょ」

「いいから、この荷船を牽いて行こう」

 そう言ってロードは荷船を前に押し込む。だが全く動かない。

「わかった、わかったから、みっともない真似はやめてちょうだい」

「いでよ――ドルちゃん!」

 スワンが右手中指にはめ込まれた指輪にキスをすると大きな生物が現れた。

「イ、イルカ!?」

「イルカの精霊、名前はドルちゃんです。ほらドルちゃんも挨拶」

 水か何かの液状で形造られた、水色のイルカがクパパパパパパと声を上げる。

「よ、よろしく……ところで精霊ってなに?」

「その話は報酬を貰えたらしてあげる。とにかく日が暮れる前に行きましょう。ドルちゃん! 荷船を引っ張って」

 クパパパパパと声を上げるイルカさん。スワンの指示のもと移動を開始するのであった。

(何だこれ……イルカって陸で活動できたっけ、それに空中を移動している)
(イルカってこんなんだっけ? 絵本でしか見たことないからわからないなぁ)

「ホーーラ何してるの? ぼやぼやしてると置いてくよ~~」

「ああ、悪い悪い!」

 スワンの声する方にロードはついて行くのであった。一行はフルケット村へと戻っていく。


 ▼ ▼ ▼

 
 フルケット村・人の通りのない村の隅。

 そこは村の大所帯からかなり外れた道でありここぐらいしか、出店を構えられそうになかったのでそこになった。
 もう大通りの方は出店がいっぱいで割りこめるスペースがなかったのだ。
 
「お疲れ様ドルちゃん、これ食べて元気出して、、、」

 懐から出されたのは水で出来た飴玉だった。

「飴か? それは……」

「ええ、そう……何度も行き来してごめんね……ゆっくり休んでて」

 スワンがそう言うと飴を一口飲み込んだイルカは、元の指輪の形に戻って行った。
 そしてロードたちはと言うと

「……人が通らない」

「だから言ったでしょう。売れなかったって……」

「これじゃあキケナやブクマのはちーーとくまーーの蜜アメ屋さんと同じだな。場所が悪いから客が来ないか……」

「な~~に? その蜜アメ屋さんって、、、」

「オレが元いた異世界の出店だよ、その~~動物の商店なんだけど、商品が売れなくて、客足もさっぱりだったらしい」

「へ~~で、どうなったのそのお店……」

「場所を移すことにしたんだ……」

 スワンは左前髪の長髪を櫛の代わりに指で梳かす。

「私たちも場所を移すとか言わないでよ? ドルちゃんだって疲れてるんだから、そう何度も動かせない」

「わかってる。だったらこっちから行けばいいじゃないか。丁度二人いるんだし……手分けしよう」

「手分けって、あなた、なにするつもり?」

「キケナとブクマに習ったこと……呼び込みさ」
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