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第三章 素晴らしき飲料店で働き始めます

第115話 甘くておいしい水

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 フルケット村・近隣。

 辺りをフルーツの木々が生い茂る。
 スワンに連れられて村の外までて来てしまったのだ。

「なぁどこへ行くんだ」

「ちょっとそこまで、いいからついて来て……」

 スワンの後ろをついて行くロード。辺りを見やってフルーツを発見していた。
 
「こんな所にもフルーツが実っているのか……」

「当然でしょ……この異世界はフルーツだけで生計を立てているみたいだし……」

「これだと勝手に取られるんじゃないか?」

「よく見て良く考えて、まだ熟してないから食べごろじゃないし、だから商品にはならないと思う。それにこの土地は村のモノになっているはずだから、勝手に取ると犯罪になるかも……」

「はんざいってなんだ?」

「あなた本当にモノを知らないのね~~ホント変わってる。えっとね犯罪って言うのは悪いことをするって意味。例えばさっき言っていた盗みとか」

「なるほど、勝手に取って食べると犯罪になるわけだな、覚えておこう」

「まぁ、村はずれに生い茂っている果物なら問題ないと思うけど、、、ていうか犯罪も知らないなんてホントに田舎世界ね。そっちの異世界に物を盗んで行く人とか居なかったわけ?」

「そういう者は見たことも聞いたこともないけど……」

「いいなぁ~~今度あなたの住んでいた異世界に行ってみたい」

「どうやって行くんだ?」

「それは運があればね……」

「やっぱり、一度出てしまった異世界から戻る方法はないのか?」

「わたしは聞いたことが無い」

「そうか……」

 何か情報が得られるのではないかと期待していたが、落胆して少し肩を落とす。

「着いた」

 そこは森にしては広々とした空間だった。

「こんなところまで来て何の用だ?」

「ん? ああ、さっきおごってもらったお礼をしようと思ってね」

「お礼ならいい、別に見返りを求めたんじゃないし……」

「それじゃあ、わたしの気が治まらないの」

 スワンは誰もいない空間に右手人差し指を向けて、はめ込まれた指輪から光を放つと、異質なものが浮かび上がってきた。

「何だこれ? 荷車か?」

 それは大きな荷車にも似た形状をしていた。しかしどこにも車輪のようなものはなく。少しだけ宙に浮いているようだった。

「不正解、、、これは荷船なの」

「荷船?」

「船だよ、、、ふ~~ね」

「船か……噂には聞いていたが始めて見た。って言うかこんなデカい物どうやって出したんだ?」
(異世界の技術で作られているのだろうか)

「出したんじゃない、隠しておいただけ。この隠者の指輪でね。まぁ動かない時だけ消える超常現象だと思っておいて」

「いや、意味が分からないんだが……」

「まぁとにかくそこで待っていて、今いいモノ持って来るから」

 スワンが荷船に乗り込んで行った。

(船……噂では海を渡るときに使われる代物だが……ここは海じゃないよな……?)
(それにあの指輪、船を隠しておいたって言うけど……一体どんな技術なんだ?)
(けど、こんなものに乗って旅できればきっと楽しいかもなぁ……)

 その馬車ぐらいもある大きな荷船を見てロマンを覚える。
 ほどなくしてスワンが戻ってくる。

「はい、どうぞ冷えてますよ~~」

 差し出されたのは紙コップに注がれた冷えた水だった。

「ナニコレ……」

「水」

(見ればわかるよそんなもの)
(だからこれは何、じゃなくて何のつもりって聞いているんだけど)

「さぁ飲んでみて……」

(そんな笑顔で返されても)

「とりあえず飲んでみて……」

(まぁいいけど)

 とりあえずゴクゴクと飲んでみた。

「――――!?」

「どう、おいしいでしょ」

「あ、甘い何だこの水!? すごくおいしい」

「ふう、おいしいって言われた、よかったよかった」

「これは何だ? 何を原料としているんだ?」

「ん~~、ただの水だけど……」

 勝利の笑みを浮かべていた。

「いや、水にしては甘かったぞ、なんだ砂糖でもまぶしているのか?」

「それが入っていないんだな~~」

「じゃあどうしてこんなに甘いんだ?」

「それは~~企・業・秘・密」

「そうか残念だ……」

「でも、気に入ったのならもう一杯飲ませてあげるけど」

「ぜひ、お願いしたい」

「わかった。もう一杯の水をくんでくるから」

 そう言ってスワンは再び荷船の中へと入って行くのであった。

(ついて行ってもいいだろうか)

 と思ってついて行ったのだが、

「企・業・秘・密!」

 怒られてしまった。

(甘くておいしい水の正体が、この先にあると言うのに……耐えろオレ)
(スワンが秘密にしておきたいものなんだ……我慢だオレ)

 そうして好奇心を抑えていた。
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