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第三章 素晴らしき飲料店で働き始めます
第105話 オオカミの遠吠え
しおりを挟む 山を登るロードは一休みしていた。
北を向くコンパスを見て、目的一の方向を見やる。目指しているのは北西ではあった。
既にフルケット山に入っていることであろうことはわかっていたが、キラキラの未だに正体がわからない。
(ヤシの実か~~、思わぬところで水分補給が出来て良かった。あんまり美味しくなかったけど……)
(あとどれくらい歩けばキラキラの正体を掴めるんだろうか)
「アカ、お~~い、アカ~~~~」
暇になって呼び出してみたが何の反応もない。
(まさか竜殺しの剣が発動して力尽きてしまったとか? それなら力を送らないと……)
(いでよ。秘宝玉……)
右の手のひらを開いて見せると丸い魂のようなものが浮かび上がった。
(あの力、どうやって使えばいいのか。今の内に試しておこう)
(秘宝玉よ形を変われ……)
力を込めたり、願ってみたりするが、形は球状のままだった。
(アレ、アグロ―ニとの一戦では剣に変化したように見えたが……)
(まぁいいや、消えろ秘宝玉……)
腕を振ることで秘宝玉は消えてしまった。
(そもそも、アグロ―ニのように宝石状の形ですらないんだ。オレたちが勝手に秘宝玉と呼んでいるだけだし)
(まぁ、今は旅を楽しむか……旅と言えば、ルロウが教えてくれたオオカミの遠吠えを覚えないと……)
ロードは切り株に座りながら考えていた。そして練習の実行に移す。
「ゴホン、あ、あ~~~~、アオーーーーーーーーン!!」
ルロウに教えてもらったオオカミの遠吠え。
(今のはかなりいいんじゃないだろうか? 何点ぐらいになるんだろう)
のんきなことを思い耽っていると、
「ひぇ~~~~、誰か助けておくれ~~~~!」
今にも枯れそうなおばあさんの叫び声が聞こえて来た。
「――!?」
身体が思わず動いてしまったロードは声の主の方へとまっすぐ進んで行く。例え、デコボコの道であろうと。
そして辿り着いた、籠を持ってうずくまっているおばあさんの元へと。
「ひぃ~~~~」
「どうしたんです、おばあさん……ひょっとして魔物でも出ましたか?」
初めての事態に緊張を走らせるロード。右腕で剣の柄を持つ構えをとる。
「えっ? まもの? 何だいそりゃ?」
(ん? 魔物を知らないのか……もしかしてこの異世界も魔物が出ない世界なのか)
「それより助けに来てくれたんだろ? 助けておくれよ。この近くでオオカミの遠吠えを聞いたんだよ!」
「ん? オオカミの声を聞いたから何だと言うんです? そう怯えることもないでしょに……」
「何を言っているんだい? オオカミに出くわしたら人なんて丸のみに食われちまうんだよ」
「オオカミが人を食う? ははは、なんの冗談ですおばあさん。オオカミが食べるのはコケキンの実とかですよ」
「こけきんの実? 何だいそりゃ? 果物のはなしかい?」
(ん? そうか、この異世界の人たちはコケキンの実を知らないのか……?)
「それよりオオカミだよ、オオカミ」
「オオカミがいる気配がないんですけど……ああ!?」
「な、何だい?」
「オオカミの遠吠えの練習をしていたんですよ。多分オレの声にビビったんじゃないでしょうか……?」
おばあさんが数秒間ぽかんとしていたが、我に返ってため息をつく。
「何だい? あたしの勘違いかい? 紛らわしいことしてくれたものだね~~」
「すみません」
その時グシャっと何かがつぶれる音がした。それはロードが靴で潰したリンゴだった。見渡せば周囲には5個のリンゴが散乱していた。
「ああ、わたしのリンゴが……」
「すみません。オレのせいでリンゴが地べたに落ちてしまって……」
「いいんだよ……オオカミがいないだけで儲けものさ、あんたの遠吠えで縄張り主張ってことになって、近寄ってこないのかもしれないし……しかしこの落ちたリンゴこれじゃあ商品にならないね」
「商品にするならどこかで水洗いしてこればいいじゃないですか?」
「ん? お前さんこの辺りに水源があることを知っているのかね?」
「いえ、知りませんけど……」
「そうかい、わたしもこの辺りに水源があるなんて聞いたことないよ……勿体ないが捨ておくしかないかね」
「…………おばあさん、このリンゴ貰ってもいいでしょうか?」
「構わんが、何に使うんだい? あまり日持ちしないよ。遠路はるばる明日の祭りの商品として持って来たんだからね」
「いや、ただ単に勿体ないかなと思って……」
「そうかい、まぁリンゴならまだ予備があるし、5個ぐらいなら好きにしな」
「ありがとうおばあさん」
ここでロードはおばさんから落としたリンゴを貰い受けるのだった。
北を向くコンパスを見て、目的一の方向を見やる。目指しているのは北西ではあった。
既にフルケット山に入っていることであろうことはわかっていたが、キラキラの未だに正体がわからない。
(ヤシの実か~~、思わぬところで水分補給が出来て良かった。あんまり美味しくなかったけど……)
(あとどれくらい歩けばキラキラの正体を掴めるんだろうか)
「アカ、お~~い、アカ~~~~」
暇になって呼び出してみたが何の反応もない。
(まさか竜殺しの剣が発動して力尽きてしまったとか? それなら力を送らないと……)
(いでよ。秘宝玉……)
右の手のひらを開いて見せると丸い魂のようなものが浮かび上がった。
(あの力、どうやって使えばいいのか。今の内に試しておこう)
(秘宝玉よ形を変われ……)
力を込めたり、願ってみたりするが、形は球状のままだった。
(アレ、アグロ―ニとの一戦では剣に変化したように見えたが……)
(まぁいいや、消えろ秘宝玉……)
腕を振ることで秘宝玉は消えてしまった。
(そもそも、アグロ―ニのように宝石状の形ですらないんだ。オレたちが勝手に秘宝玉と呼んでいるだけだし)
(まぁ、今は旅を楽しむか……旅と言えば、ルロウが教えてくれたオオカミの遠吠えを覚えないと……)
ロードは切り株に座りながら考えていた。そして練習の実行に移す。
「ゴホン、あ、あ~~~~、アオーーーーーーーーン!!」
ルロウに教えてもらったオオカミの遠吠え。
(今のはかなりいいんじゃないだろうか? 何点ぐらいになるんだろう)
のんきなことを思い耽っていると、
「ひぇ~~~~、誰か助けておくれ~~~~!」
今にも枯れそうなおばあさんの叫び声が聞こえて来た。
「――!?」
身体が思わず動いてしまったロードは声の主の方へとまっすぐ進んで行く。例え、デコボコの道であろうと。
そして辿り着いた、籠を持ってうずくまっているおばあさんの元へと。
「ひぃ~~~~」
「どうしたんです、おばあさん……ひょっとして魔物でも出ましたか?」
初めての事態に緊張を走らせるロード。右腕で剣の柄を持つ構えをとる。
「えっ? まもの? 何だいそりゃ?」
(ん? 魔物を知らないのか……もしかしてこの異世界も魔物が出ない世界なのか)
「それより助けに来てくれたんだろ? 助けておくれよ。この近くでオオカミの遠吠えを聞いたんだよ!」
「ん? オオカミの声を聞いたから何だと言うんです? そう怯えることもないでしょに……」
「何を言っているんだい? オオカミに出くわしたら人なんて丸のみに食われちまうんだよ」
「オオカミが人を食う? ははは、なんの冗談ですおばあさん。オオカミが食べるのはコケキンの実とかですよ」
「こけきんの実? 何だいそりゃ? 果物のはなしかい?」
(ん? そうか、この異世界の人たちはコケキンの実を知らないのか……?)
「それよりオオカミだよ、オオカミ」
「オオカミがいる気配がないんですけど……ああ!?」
「な、何だい?」
「オオカミの遠吠えの練習をしていたんですよ。多分オレの声にビビったんじゃないでしょうか……?」
おばあさんが数秒間ぽかんとしていたが、我に返ってため息をつく。
「何だい? あたしの勘違いかい? 紛らわしいことしてくれたものだね~~」
「すみません」
その時グシャっと何かがつぶれる音がした。それはロードが靴で潰したリンゴだった。見渡せば周囲には5個のリンゴが散乱していた。
「ああ、わたしのリンゴが……」
「すみません。オレのせいでリンゴが地べたに落ちてしまって……」
「いいんだよ……オオカミがいないだけで儲けものさ、あんたの遠吠えで縄張り主張ってことになって、近寄ってこないのかもしれないし……しかしこの落ちたリンゴこれじゃあ商品にならないね」
「商品にするならどこかで水洗いしてこればいいじゃないですか?」
「ん? お前さんこの辺りに水源があることを知っているのかね?」
「いえ、知りませんけど……」
「そうかい、わたしもこの辺りに水源があるなんて聞いたことないよ……勿体ないが捨ておくしかないかね」
「…………おばあさん、このリンゴ貰ってもいいでしょうか?」
「構わんが、何に使うんだい? あまり日持ちしないよ。遠路はるばる明日の祭りの商品として持って来たんだからね」
「いや、ただ単に勿体ないかなと思って……」
「そうかい、まぁリンゴならまだ予備があるし、5個ぐらいなら好きにしな」
「ありがとうおばあさん」
ここでロードはおばさんから落としたリンゴを貰い受けるのだった。
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