上 下
58 / 774
第二章 異なる世界からやって来た最強の魔王

第58話 異なる世界から来た魔王

しおりを挟む
 レオリカン宮殿・玉座の間。

 突如、ロードたちの前に魔王と名乗る怪物が現れた。
 
(アグローニ……魔王?)
 
「お、お前は異なる世界から来たのか……?」
 
「異なる世界を知っているか。だがそんなことを得意げに語るなよ。雑魚さが際立《きわだ》つわ!!」
 
「その剣はお前のか?」
 
「剣? 刀と言え! 物も知らぬ雑魚が!!」
 
(か、かたな?)
 
 確かに普通の剣とは違って、刀身は少し反っている形をしていた。
 それも刃が片側にしかない。
 
「その……刀のせいで何が起きたかわかるか……?」
 
「この刀に目を付けるくらいには、住人共の頭は雑魚ではないか……」
 
「その刀はなんだ……?」
 
「麻鬼刀、この刀に刺された者は黒い靄のような衣がそいつを包み、意のままに身体を操ることが出来る」
 
「やっぱり、お前が竜をワルモノにしたのか……?」
 
「それがなんだ……倒した後に気が付いたのか。察しの悪い雑魚が!」
 
「……そのチーターには何をした」
 
「ちいたー? 言葉を発しろ雑魚がぁ!」
 
 足元に倒れていたチーターのことを聞いたのに馬鹿にされる。
 
「ん? もしやこれか?」
 
 その動物の名称を知らなかった魔王は足元の動物を見て気が付いた。
 
「ふん、これの身体をオレが使っただけのことだ。雑魚のくせに意外と速かったぁーーーーぞおお!!」

 ぞお!! と同時に倒れていたチーターをこちらに向けて蹴り飛ばしてきた。
 
「――わっ!!」
 
 チーターを何とか受け止めたが、後ろに倒れてしまった。
 
「な、なんてことを!」
 
 部下の身を案じて近寄ってきた。
 
「もう用はない。役に立ったから捌くのは後にしてやる」
 
「大丈夫。気絶しているだけです」
 
 チーターをカリフ王に預けて、安全そうな場所に運んでもらう。
 そして、魔王と名乗る者に話しかけるロード。
 
「オレたちに竜の話を聞かせたのは、お前だったんだな……全部わかったぞ」
 
「何?」
 
「どうして俺たちに悪い竜の存在を教えたのか」
 
「どういうことだ?」

パレロット王が質問してくる。
 
「オレたちは黒いチーター……いや、こいつの報せで悪い竜の存在を知ったでしょう? こいつはその知らせを少し変えてオレたちに教えたんです。話では『悪い竜が暴れたおかげでレオリカン王国が陥落し、自分以外の民が全滅した』と言いました。そして『仇を討ってほしい』とも……」
 
「「「言ってたチュー」」」
 
「おかしな話です。自分以外の皆は命を落としたと言っていて、実際には誰も命を落としてはいなかった。見ていなければ口にしたくもない話なのに、まるで見てきたかのように言っていた。真偽の定かでない情報をカリフ王の最後の命令だと言って来た使者が言うはずはなかった」

「あの話にはこの者の嘘が混ざっていたのか。なぜそのような……」
 
「こいつは『レオリカン王国の民の仇を討ってほしい』と言っていました。竜をオレたちの手で倒させる為に嘘をついたんです」
 
「私たちにアカを、悪い竜だと信じ込ませるためにか」

 シャルンスが理解した。
 
「そうやって、国に危機感を植え付けることでオレたちを竜の討伐へと動かした」
 
「――だとしたら、狙いはなんだ!? なぜ操った竜の討伐を頼みに来る……?」

パレロットに新たな疑問が浮上する。
 
「狙い? お前たちなど、竜の餌としての魚にしか――」
 
「操れなかったんだ……」
 
「こいつはここに来る前にアカを真っ黒い刀で刺して操った」
「それからこの世界に、レオリカン王国に現れてアカを暴れさせたかった」
「けれど、アカは言うことを聞かなかった」
「それどころか、アカはこいつを倒そうと暴れてしまった」
「そんな状態でも、レオリカンの民の命を一つも奪わなかったけど……」
「こいつはアカに狙われ続けていた」
「そして、カリフ王の命令でストンヒュー王国に向かおうとしていたチーターに」
「さっきのように取り憑いたんだ」
「アカもそれを見抜いてか、知ってか、黒いチーターを追い回した」
「追い回されたから他の街や村に行って暴走したアカを撒くしかなかった」
「そして、ここにたどり着いて王国に竜は絶対悪だと嘘をついた」
 
「つまり……」
 
 狙いは――そう言いかけた時、
 
「いつの話をしている雑魚が!!」
 
 魔王が怒鳴って無理やり話を切った。
 
「だが、やはり暴走しても雑魚は雑魚か……こんな雑魚共に倒されるとはな、使えん竜だ」
 
「それが狙いだろ……自分でもどうにもならなくなった竜を、オレたちに倒させるためにあんな嘘をついたんだ」
 
「この魔王であるオレが……雑魚には頼らんわ!!」
 
「――けど、竜から逃げるためにチーターに憑りついたじゃないか」
 
 その一言を耳にした魔王は、
 
「うおおおおおおおおおお!!」
 
 叫びながら真っ直ぐ突っ込んできた。
 
「――――っ!?」
 
 刀を持つ手とは違う手で拳を作り、思いっきり振り下ろしてくる。
 
 ド――――ンと拳が床を叩き割った。
 
 何とか避けた。
 
「逃げるためだと!! 今、オレを雑魚と同じにしたなぁ!!」
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる
ファンタジー
 ハンターギルド最強の男ブラウンが突如の引退勧告を受け  あっさり辞めてしまう  最強の男を失ったギルドは?切欠を作った者は?  結末は?  

処理中です...