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第二章 異なる世界からやって来た最強の魔王
第53話 絵本の布教活動
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「魔物……知ってる……絵本で見た」
「そうか言葉ぐらいは伝わっているか、魔物とは簡単に言えば世界の敵、悪を司る怪物たちのことだ」
「別の世界にはその魔物がいるのか?」
「そうだ。今この瞬間も我らの知らぬところで新たな苦しみと悲しみを生み出している」
「苦しみと悲しみ……例えば?」
「生き物が命を落とす」
「いくらなんでも……つ、作り話だよな?」
「おとぎ話に出てくるような竜の言葉には真実味がないか……?」
「いや、信じたくなかっただけだ。でも、だ、誰か何とかしてくれてるんだよな?」
「それは、世界による。それこそ無限の結末だ。誰かがなんとかできた世界もあれば……逆もまた……」
「逆もまた?」
「……誰にもどうにもできずに滅びた世界もある」
(……………………)
(……き、聞かない方が良かった)
一気に気持ちが沈んでいってしまう。
「すまない。そのような顔をさせるつもりはなっかた」
「どんな顔だ。オレは平気さ」
心配させてしまったので強がった。
「まぁ気に病むことはない。むしろ自分を誇るがいいその手で我とレオリカンの国を救って見せたのだ」
「偶然が重なっただけさオレじゃなくても……」
「いや、他の誰でもお前でなければきっとこのような結末にはならなかっただろう……こうして、全てが丸く収まったのはロードのおかげだ改めて礼を言おう」
「ロード顔がニヤついてるチュウ」
「褒められるのに慣れてないだけだ!」
「それだけチー」
「勝利の相手が竜だったのも、ある」
「大好きな絵本の主人公になった気分はどうチャア」
「オレは子供じゃないんだ! そんなことで喜ばない!」
「顔が笑ってるぞ……」
ルロウが指摘する。
「先ほどから度々話に上がる絵本とはなんだ?」
「ん? ああ、絵本っていうのはこれのことだよ」
鞄からいつもの愛読書を取り出して見せてあげた。
「レジェンド、オーブ、スライムゥ?」
「オレが子供の頃によく読んでいたんだ。160回ぐらい……」
「ほう、それほどの代物とは……」
アカが興味深く絵本を見ていた。
「ふぅん、我を助けるヒントだったとも言っていたな?」
「読んでみるか? いやぜひ、読んでほしいな~~絶対名作だと思うんだ!!」
「名作か……では読ませてもらおう」
絵本が見やすくなるように近くの岩の上に置いてあげる。
(こんな小さい物、読めるんだろうか)
アカが爪の先を使って器用にページを捲っていた。
「読みを終わったら感想聞かせてほしいな」
「我とは、あまりいい話はできんと思うが……」
「なんでもいいさ。オレは誰とでも感想の話し合いをするのが好きなんだ。絵本は見る人によって印象が全然違うことがあるけど、それも楽しみ方の一つだ。そしてオレの知らない楽しみ方がまだまだあると思うから、それをアカが見つけてくれたらって期待してる」
「……それは、中途半端に読んでしまうと見抜かれてしまうな」
「そうだな、すぐバレるぞ」
「ははは、わかったお前の話に合わせられるようにじっくりと読もう。静かなのがいい、しばし我だけににしてはくれないか?」
「……わかった、皆行こう」
「ま~~た布教活動したチュウ」「まぁいつものことチー」「何でそんなに勧めるんだチャア?」
ルロウに動くよう手で促し、ネズミたちを腕から肩に登らせて、一旦その場から離れることにした。
▼ ▼ ▼
レオリカン王国をどこへ行くでもなく、ただただ歩いていると声をかけられた。
「ホホ!! ここにいたホ、竜殺しの剣士さん」
どうやらゴリラの衛兵さんに探されていたらしい。
「竜殺しは縁起が悪そうだからやめてほしいな。普通に呼んでいいよ」
「悪かったホ……っと、カリフ王から剣士さんにお呼びがかかってるホ」
「カリフ王が? 何の用だって?」
「ストンヒューの王子様がもうすぐ来るんだホ。だから、、、悪かった竜の顛末を一緒に説明して欲しいんだホ」
「シャルンス王子が……わかった行くよ」
「じゃあ、ついて来るホ」
彼を先頭にカリフ王の待つ場所まで向かう。
「そうか言葉ぐらいは伝わっているか、魔物とは簡単に言えば世界の敵、悪を司る怪物たちのことだ」
「別の世界にはその魔物がいるのか?」
「そうだ。今この瞬間も我らの知らぬところで新たな苦しみと悲しみを生み出している」
「苦しみと悲しみ……例えば?」
「生き物が命を落とす」
「いくらなんでも……つ、作り話だよな?」
「おとぎ話に出てくるような竜の言葉には真実味がないか……?」
「いや、信じたくなかっただけだ。でも、だ、誰か何とかしてくれてるんだよな?」
「それは、世界による。それこそ無限の結末だ。誰かがなんとかできた世界もあれば……逆もまた……」
「逆もまた?」
「……誰にもどうにもできずに滅びた世界もある」
(……………………)
(……き、聞かない方が良かった)
一気に気持ちが沈んでいってしまう。
「すまない。そのような顔をさせるつもりはなっかた」
「どんな顔だ。オレは平気さ」
心配させてしまったので強がった。
「まぁ気に病むことはない。むしろ自分を誇るがいいその手で我とレオリカンの国を救って見せたのだ」
「偶然が重なっただけさオレじゃなくても……」
「いや、他の誰でもお前でなければきっとこのような結末にはならなかっただろう……こうして、全てが丸く収まったのはロードのおかげだ改めて礼を言おう」
「ロード顔がニヤついてるチュウ」
「褒められるのに慣れてないだけだ!」
「それだけチー」
「勝利の相手が竜だったのも、ある」
「大好きな絵本の主人公になった気分はどうチャア」
「オレは子供じゃないんだ! そんなことで喜ばない!」
「顔が笑ってるぞ……」
ルロウが指摘する。
「先ほどから度々話に上がる絵本とはなんだ?」
「ん? ああ、絵本っていうのはこれのことだよ」
鞄からいつもの愛読書を取り出して見せてあげた。
「レジェンド、オーブ、スライムゥ?」
「オレが子供の頃によく読んでいたんだ。160回ぐらい……」
「ほう、それほどの代物とは……」
アカが興味深く絵本を見ていた。
「ふぅん、我を助けるヒントだったとも言っていたな?」
「読んでみるか? いやぜひ、読んでほしいな~~絶対名作だと思うんだ!!」
「名作か……では読ませてもらおう」
絵本が見やすくなるように近くの岩の上に置いてあげる。
(こんな小さい物、読めるんだろうか)
アカが爪の先を使って器用にページを捲っていた。
「読みを終わったら感想聞かせてほしいな」
「我とは、あまりいい話はできんと思うが……」
「なんでもいいさ。オレは誰とでも感想の話し合いをするのが好きなんだ。絵本は見る人によって印象が全然違うことがあるけど、それも楽しみ方の一つだ。そしてオレの知らない楽しみ方がまだまだあると思うから、それをアカが見つけてくれたらって期待してる」
「……それは、中途半端に読んでしまうと見抜かれてしまうな」
「そうだな、すぐバレるぞ」
「ははは、わかったお前の話に合わせられるようにじっくりと読もう。静かなのがいい、しばし我だけににしてはくれないか?」
「……わかった、皆行こう」
「ま~~た布教活動したチュウ」「まぁいつものことチー」「何でそんなに勧めるんだチャア?」
ルロウに動くよう手で促し、ネズミたちを腕から肩に登らせて、一旦その場から離れることにした。
▼ ▼ ▼
レオリカン王国をどこへ行くでもなく、ただただ歩いていると声をかけられた。
「ホホ!! ここにいたホ、竜殺しの剣士さん」
どうやらゴリラの衛兵さんに探されていたらしい。
「竜殺しは縁起が悪そうだからやめてほしいな。普通に呼んでいいよ」
「悪かったホ……っと、カリフ王から剣士さんにお呼びがかかってるホ」
「カリフ王が? 何の用だって?」
「ストンヒューの王子様がもうすぐ来るんだホ。だから、、、悪かった竜の顛末を一緒に説明して欲しいんだホ」
「シャルンス王子が……わかった行くよ」
「じゃあ、ついて来るホ」
彼を先頭にカリフ王の待つ場所まで向かう。
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