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第一章 冒険の日々に憧れる青年の生活

第44話 勇猛果敢なカリフ王

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「退避退避!!」「危ないぞぉ!」「洞窟に入れー!」「オレたちの国を返せー」「いくぞー皆!」「世界の平和のためにー」

騒ぐレオリカンの衛兵たち。
 
『グオオオオオオオオオオオオオ!!』
 
 咆哮する悪しき竜は長い尾を身体全体を回すことで勢いよく振っている。
 
『『『モボアアアアアアアアアアアアア』』』
 
 バッファローたちが竜の長い尾に叩きつけられ吹き飛ばされていた。
 竜は倒れたバッファローたちに向けて炎を吐きだす動作に入っていた。
 
「ルロウ!」
 
「わ、わかった!」
 
 竜からかなりかけ離れていたとしても、そんな光景を前にしたら慌てて向かわざるおえない。
 だが当然ここから間に合うはずはない。
 
『グウウウウウウウウ!!』
 
 しかし、竜は口に炎を含んだまま突然頭を振り始めた。
 
「ま、まだチュウ!」「まだ吐いてないチー」「急げば間に合うチャア」
 
「かかれ!!」
 
『『『ガオオン!!』』』
 
 そのとき、竜の背後からカリフ王とそれに続く何十頭ものライオンたちが一斉に竜に飛び掛かり、牙や爪による攻撃を与えた。
 
「モオ!?」「い、今の内だ」「ど、洞窟へ!」
 
 怪我を負いつつもバッファローたちは洞窟の奥へと避難した。
 
『グオオオオオオオオオ!!』
 
「ガアアアア!!」「ゴガァッ」「オアア」
 
 竜が翼を広げるとはばたきと同時にライオンたちを振り払い大空へ飛び去る。
 
「おおおおおおおん!!」
 
 しかし、王さまは背中にしがみついたままで、竜の滅茶苦茶な動きにも耐えている。
 
 竜は空を上へ下へと飛び回り、谷に身体をぶつけてもみるも、カリフ王を振り払えない。
 
「我は百獣の王カリフ! レオリカンの真の王!」
 
 しかし、悪しき竜は口に含んだ吐くための炎を飲み込んで、蒸気を発するほどの高温を身体に帯びる。すると、
 
「ヌッオオオオオオオオオオ!!」
 
 あまりの暑さに勇敢なカリフ王でさえも飛びのいてしまう。
 空を飛ぶ竜から落ちてしまったカリフ王はタカたちが何とか捕まえた。
 
「カリフ王!!」「ご無事ですキー」
 
「すまん助かった」
 
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
 
 悪しき竜は自分よりはるかに高い大空に向かって炎を吐きだした。
 
(な、何で上に吐いたんだ?)
 
 タカたちが竜を囲み、次々と足に装備したかぎ爪や補強したくちばしで突撃してる。
 竜はこの突撃を受けて掠めつつも、手足や尻尾を振り回してタカたちを撃退していった。
 
「キィーー」「クアーー」「キヤーー」
 
 撃退されて地に落ちていく。
 
 さらに突撃を続けるタカたちを翼のはばたきだけで吹き飛ばす。
 何十羽かが谷に激突していく。
 竜はまた炎を口に含んでいく。
 事態を察した別のタカたちが地に倒れた同胞を助けに行こうとしている。
 助けるよりも炎の方が早いはずだが、
 
(!?)
 
 竜は炎を吐き出さず、またしても頭を振り回していた。
 
 『グウウウウウウウウウウウウウウウウ!!』
 
 その間に倒れていたタカたちは助け出され、安全な谷の向こうへ避難されていく。
 
「やった助かったチュウ」
 
「妙だな」

ルロウが呟く。
 
「なにがチー」
 
「間に合うはずなかっただろ」
 
「ラッキーがこっちに味方してくれてるチャア」
 
「それならいいが……」
 
(そいえば昨日も……あんな行動をしていたような……)
 
 ドッドドドッズズズ――――ン!!
 
 竜が空から降りてくると谷全体に地響きが走り抜けていく。
 
「ロード、そろそろ出番だ!!」
 
 タカたちに捕まれた状態のカリフ王がこちらに支持を飛ばしてきた。
 
「は、はい!!」
 
「よし、行くぞ!」
 
 聞いていたルロウがこっちの心の準備も待たずに走り出した。
 
(い、いよいよか!)
(チャ、チャンスは一回きりだ!)
(失敗は出来ないぞオレ)
 
 竜に向かって、ゴリラが手を使い、岩や木の槍を投げつけているのが見える。
 目を少しでもこちらに向けないように引き付けてくれているんだ。
 
 竜は腕を豪快に振り、国を崩していく。竜が尻尾を思いっきり振り、街を壊していく。
 レオリカンの兵士たちは、崩れる谷と壊れる街の崩落に巻き込まれないように洞窟の奥へと避難していく。
 悪しき竜のときどき吐き出す灼熱の炎が尾根の頂上を掠めて焦がした。
 ダチョウに乗る人たちは竜に向かって矢を放った後、洞窟の奥へ避難して、また別の出口から現れて矢を放っていくのを繰り返す。
 鉄の装甲を纏ったアルマジロが尾根の頂上から丸まって飛び降り、岩なだれのように大群で竜に激突し、反撃を受ける前に洞窟の奥へ避難する。
 それでも、竜の猛攻は揺らがない。
 レオリカンの兵士からも怪我で動けなくなる者が増えてきていた。
 
 谷の側面をルロウは颯爽と走っていく、少しづつ暴れる竜という危険に近づいている。
 
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