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第一章 冒険の日々に憧れる青年の生活

第37話 ストンヒュー兵団、参上

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「はなて!!」
 
 シュカカカカカカ!
 
 衛兵たちが一斉に竜に向かって弓から矢を放つ。
 
「!」
 
「投石!!」
 
 イヌの衛兵たちがその場で回って、竜に遠心力の乗った石を飛ばす。
 
 ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ!!
 
 竜に当たるが利いてるようには見えない。
 
「グウウウウウウウウ!!」
 
 竜はバサッと翼を広げはばたくと森の上へ。
 そして、どこかへ飛んで行ってしまった。
 
『『『おおおおおおおおおおお!!』』』
 
 まるで長い時間をかけて勝利したかのように喜ぶ衛兵たちだった。
 
(……ってストンヒューの衛兵たち?)
 
「何とか追い返せましたね」
 
「ああ、みんなよくやった」
 
「……ハンス衛兵長? それからシャルンス王子?」
 
「やぁロード、怪我はしてないみたいだね」
 
「まさか……オレを助けに?」
 
「たまたまだ。君がここにいるなんて思わなかった。けれど、ほんとに危なかった……もう少しで友人を失うところだった」
 
 辺りの惨状を見渡して言う。
 
「……間に合ってよかった」
 
「はっ、は、はぁ~~~~~~~~」
 
 緊張が解けたせいかその場に力なく座り込むロード。
 
「大丈夫か? 気分が悪いんじゃないか」
 
「ええ、まぁ……」
 
(怖かった~~)
(意識はあるか? 生き残ったのか?)
(夢じゃないな……助かったんだ)
 
「はぁ~~」
 
(あんなに怖い思いしたのは初めてだ)
(何であんなことを……)
 
 竜に立ち向かっていった時のことを思い出す。
 
(そういえば逃げ出さなかったな)
(この身体で竜に戦いを挑んだのか)
(何やってたんだ勝てるわけないだろ)
(まったく危うく命を落とすところだったぞ)
 
 両手を見る。
 
(これ、オレの手か……?)
(自分の身体じゃみたいだ)
(なんか……自分の意識に身体が追いついてないみたいな感覚が……)
(何言ってんだオレは……)
 
 衛兵たちに目を向けると、皆汚れた格好でボロボロだった。
 よく見ればそれは王子も同じだった。
 
(凄い戦いをして来たんだろうな)
 
 まだ森には炎が残っていたが、なんとか広がらずに住んでいた。
 炎を眺めていると、
 一緒に行動していた者たちがこっちに駆け寄ってくる姿が見えた。
 
「ロードォ!!」

 ルロウが叫ぶ。
 
「皆いるチュウ!?」「あっ王子チー」「竜は逃げたのチャア?」
 
「たくさん人がいるくま~~」「ブクマ何してる! 荷物を取りに行くブン!」
 
 座っていると力が戻って来たので、そろそろ立ち上がる。
 
「王子、さっきのが、悪しき竜ですか……?」
 
「その通りだ。残念な話だが、アレを倒す見込みはまだたっていない。今も追い返すことは出来たが、まるで手応えを感じなかった。きっと用が済んだから住処《すみか》に帰ったんだろう……」
 
「アレは仕方ないチュウ」
 
「王子たちはずっとあの竜と戦いを……?」
 
「ああ、戦いに行っては、追い返されての繰り返しだった」
 
「あんなの敵いっこないチー」
 
「ぎ、犠牲者は……?」
 
「幸いなことに命を落とした者はいない。怪我だけで済んでいる」
 
「それは良かったチャア」
 
「雰囲気……少し変わられましたね」
 
「そうか? ……ここのところ何度も命を懸けたからだろうな」
 
「王子」

ハンス衛兵長が囁く。
 
「ん?」
 
 その時、森の向こうから武装した集団が現れた。
 真ん中にいたのはカリフ王だから、レオリカン王国の衛兵たちに違いない。
 
「悪しき竜はどこだ? ストンヒューの王子」
 
「ここにはもういません。レオリカン王国に戻っていたと思われます」
 
「お前たちが連れて来たのか?」
 
 周りのの惨状と竜の飛び去った空を見て聞いてきた。
 
「いいえ、カリフ王。あの竜は自らこの地を目指していました。私たちはそれを知りここまで追いかけて来ただけです」
 
「悪しき竜が自らこの地を目指して来ただと? 馬鹿な、ありえん」
 
「竜が近づけない山があるからか……?」

 ルロウが話に割って入る。
 
「むっ! それは……」
 
「怪しいチュウ」「何かあるチー」「噂は本当なんだチャア」
 
「……………………」
 
 難しい顔をして黙り込んだ。
 
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