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第一章 冒険の日々に憧れる青年の生活

第28話 皆の家の前でキャンプする

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 皆の家・前。
 時刻は午後18時過ぎ。
 皆の家に戻ってくると、さっそく料理を始めるための準備に取り掛かる。
 鞄の中から火起こし石という光沢のあるオレンジ色の石を二つ取り出した。
 それは名前の通り火を起こしに使う石、二つ一組のその石をぶつけ合わせることで発火が起こせる。
 手順は皆の家にあった藁を使い、火起こし石で火花を散らせて燃やして、少しずつ薪を加え火を調節していくのだ。
 
 カッカッカッカッと石と石をぶつけ合わせる。
 カッカッカッカッと硬いと音を鳴らしている。
 カッカッカッカッと黙々と作業して火を待つ。
 カッカッカッカッと首を傾げながらも続ける。
 
 しかし、火はつかない。
 
 寝そべっているオオカミとネズミたちがじっと見ているので気が散るのもある。
 
「火起こし石は子供でも火が起こせるんだがなぁ~~」
 
「ごめん、できない。何かコツでもあるのか?」
 
「いや、別にないけどな~~」
 
 カッカッカッカッ
 
 しかし、火はつかない。
 
「まだチュウ?」「遅いチー」「ロードはヘタだチャア」
 
「お前らやれ」
 
「「「小さいから無理チュー」」」
 
「仕方ないオレがやろう。手本を見せてやるよ」
 
 そういって寝そべっていた身体を起こしこちらに来る。
 火起こし石を受け取ったルロウは、一つを藁の傍に置き、もう一つを口に咥える。
 
「行くぞ?」
 
 首を縦に振る。
 
 ルロウは一瞬だけ目の前の火起こし石との距離を測り、それから軽い動きで口に咥えた火起こし石を上げて首を下に振る。
 
 カッ! と石の掠れがシュボッ! と藁に火を着ける。
 
「おお~~流石は旅のオオカミだ」
 
 パチパチと拍手を送る。
 
「じゃあ火を大きくしてくれ」
 
 小さな火種を大きくするために一つ一つ薪をくべる。
 火がほどよく燃え上がり、焚火が完成する。
 皆の家にあった調理用具の岩の板を使うため、焚火の周りに四つの台を配置して、その上に岩の板を乗せた。
 岩の板が熱されていき、頃合いを見計らい〈油葉《あぶらば》〉というはっぱを乗せる。
 このはっぱは熱すると溶けて油になるので、焼き料理の前の下準備に使われている。
 ジョワァァァァァァァァと溶けた葉っぱが油になって岩板の上で踊る。
 そして、枝に刺さるような形をした〈コケキンの実〉を3つ取って油の敷かれた岩の板に乗せて調理を始める。
 ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥとコケキンの実が焼かれていく。食欲をそそる肉質的な香りをその場に広げていく。
 
 『アオーーーーーーーーン』と突然ルロウがその場でとても響く遠吠えした。
 
「……なんだ急にびっくりしたぞ」
 
「ああ、料理の時はこうして吠えとかないと、火事と間違えられたり、匂いにつられて客がたくさん来たりすんだ。旅に出ることがあったら覚えておけよ」
 
「山火事は怖いチュウ」「客って? なんの話チー」「ハイエナさんのことチャア」
 
「ルロウみたいに遠吠えすればいいのか~~よし、オレもやってみるか」
 
「ぅん……まぁ聞いてやるよ。コツは遠くを意識することだ」
 
 ごほん、うゔん、と喉の調子を整える。
 
「では、いきます」
 
 すぅっ、と大きく息を吸い込み、
 
「アオオーーおおおーーーーーん」
 
 オオカミからするとあまり綺麗とは言えない人らしい声だった。
 
「32点」
 
「チュオチュオーン」「チーオン」「チャア―ン」
 
 真似してネズミたちも遠吠えする。
 
「14点、8点、12点」
 
「「「「厳しい」チュー……」」」
 
「まぁ練習しな……もし、できるようになったら、遭難したときとか、オレみたいなオオカミに気づいてもらえるかもな」
 
「そうか。じゃあ旅に出るなら覚えておいたほうがいいな! うん、練習しておくよ」
 
「旅に出る機会なんてないチュウ」「宮殿は毎日大忙しチー」「火起こしもする必要はないチャア」
 
「い、いいだろ? 練習して損はないし、それに旅だってまだ諦めてるわけじゃない」
 
「……おい、焼けたんじゃないか?」
 
「ああ、ホントだ。よし、夕食にしよう」
 
 皆で焚火を囲むように座り、楽しい夕食の時間が始める。
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