28 / 743
第一章 冒険の日々に憧れる青年の生活
第28話 皆の家の前でキャンプする
しおりを挟む
皆の家・前。
時刻は午後18時過ぎ。
皆の家に戻ってくると、さっそく料理を始めるための準備に取り掛かる。
鞄の中から火起こし石という光沢のあるオレンジ色の石を二つ取り出した。
それは名前の通り火を起こしに使う石、二つ一組のその石をぶつけ合わせることで発火が起こせる。
手順は皆の家にあった藁を使い、火起こし石で火花を散らせて燃やして、少しずつ薪を加え火を調節していくのだ。
カッカッカッカッと石と石をぶつけ合わせる。
カッカッカッカッと硬いと音を鳴らしている。
カッカッカッカッと黙々と作業して火を待つ。
カッカッカッカッと首を傾げながらも続ける。
しかし、火はつかない。
寝そべっているオオカミとネズミたちがじっと見ているので気が散るのもある。
「火起こし石は子供でも火が起こせるんだがなぁ~~」
「ごめん、できない。何かコツでもあるのか?」
「いや、別にないけどな~~」
カッカッカッカッ
しかし、火はつかない。
「まだチュウ?」「遅いチー」「ロードはヘタだチャア」
「お前らやれ」
「「「小さいから無理チュー」」」
「仕方ないオレがやろう。手本を見せてやるよ」
そういって寝そべっていた身体を起こしこちらに来る。
火起こし石を受け取ったルロウは、一つを藁の傍に置き、もう一つを口に咥える。
「行くぞ?」
首を縦に振る。
ルロウは一瞬だけ目の前の火起こし石との距離を測り、それから軽い動きで口に咥えた火起こし石を上げて首を下に振る。
カッ! と石の掠れがシュボッ! と藁に火を着ける。
「おお~~流石は旅のオオカミだ」
パチパチと拍手を送る。
「じゃあ火を大きくしてくれ」
小さな火種を大きくするために一つ一つ薪をくべる。
火がほどよく燃え上がり、焚火が完成する。
皆の家にあった調理用具の岩の板を使うため、焚火の周りに四つの台を配置して、その上に岩の板を乗せた。
岩の板が熱されていき、頃合いを見計らい〈油葉《あぶらば》〉というはっぱを乗せる。
このはっぱは熱すると溶けて油になるので、焼き料理の前の下準備に使われている。
ジョワァァァァァァァァと溶けた葉っぱが油になって岩板の上で踊る。
そして、枝に刺さるような形をした〈コケキンの実〉を3つ取って油の敷かれた岩の板に乗せて調理を始める。
ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥとコケキンの実が焼かれていく。食欲をそそる肉質的な香りをその場に広げていく。
『アオーーーーーーーーン』と突然ルロウがその場でとても響く遠吠えした。
「……なんだ急にびっくりしたぞ」
「ああ、料理の時はこうして吠えとかないと、火事と間違えられたり、匂いにつられて客がたくさん来たりすんだ。旅に出ることがあったら覚えておけよ」
「山火事は怖いチュウ」「客って? なんの話チー」「ハイエナさんのことチャア」
「ルロウみたいに遠吠えすればいいのか~~よし、オレもやってみるか」
「ぅん……まぁ聞いてやるよ。コツは遠くを意識することだ」
ごほん、うゔん、と喉の調子を整える。
「では、いきます」
すぅっ、と大きく息を吸い込み、
「アオオーーおおおーーーーーん」
オオカミからするとあまり綺麗とは言えない人らしい声だった。
「32点」
「チュオチュオーン」「チーオン」「チャア―ン」
真似してネズミたちも遠吠えする。
「14点、8点、12点」
「「「「厳しい」チュー……」」」
「まぁ練習しな……もし、できるようになったら、遭難したときとか、オレみたいなオオカミに気づいてもらえるかもな」
「そうか。じゃあ旅に出るなら覚えておいたほうがいいな! うん、練習しておくよ」
「旅に出る機会なんてないチュウ」「宮殿は毎日大忙しチー」「火起こしもする必要はないチャア」
「い、いいだろ? 練習して損はないし、それに旅だってまだ諦めてるわけじゃない」
「……おい、焼けたんじゃないか?」
「ああ、ホントだ。よし、夕食にしよう」
皆で焚火を囲むように座り、楽しい夕食の時間が始める。
時刻は午後18時過ぎ。
皆の家に戻ってくると、さっそく料理を始めるための準備に取り掛かる。
鞄の中から火起こし石という光沢のあるオレンジ色の石を二つ取り出した。
それは名前の通り火を起こしに使う石、二つ一組のその石をぶつけ合わせることで発火が起こせる。
手順は皆の家にあった藁を使い、火起こし石で火花を散らせて燃やして、少しずつ薪を加え火を調節していくのだ。
カッカッカッカッと石と石をぶつけ合わせる。
カッカッカッカッと硬いと音を鳴らしている。
カッカッカッカッと黙々と作業して火を待つ。
カッカッカッカッと首を傾げながらも続ける。
しかし、火はつかない。
寝そべっているオオカミとネズミたちがじっと見ているので気が散るのもある。
「火起こし石は子供でも火が起こせるんだがなぁ~~」
「ごめん、できない。何かコツでもあるのか?」
「いや、別にないけどな~~」
カッカッカッカッ
しかし、火はつかない。
「まだチュウ?」「遅いチー」「ロードはヘタだチャア」
「お前らやれ」
「「「小さいから無理チュー」」」
「仕方ないオレがやろう。手本を見せてやるよ」
そういって寝そべっていた身体を起こしこちらに来る。
火起こし石を受け取ったルロウは、一つを藁の傍に置き、もう一つを口に咥える。
「行くぞ?」
首を縦に振る。
ルロウは一瞬だけ目の前の火起こし石との距離を測り、それから軽い動きで口に咥えた火起こし石を上げて首を下に振る。
カッ! と石の掠れがシュボッ! と藁に火を着ける。
「おお~~流石は旅のオオカミだ」
パチパチと拍手を送る。
「じゃあ火を大きくしてくれ」
小さな火種を大きくするために一つ一つ薪をくべる。
火がほどよく燃え上がり、焚火が完成する。
皆の家にあった調理用具の岩の板を使うため、焚火の周りに四つの台を配置して、その上に岩の板を乗せた。
岩の板が熱されていき、頃合いを見計らい〈油葉《あぶらば》〉というはっぱを乗せる。
このはっぱは熱すると溶けて油になるので、焼き料理の前の下準備に使われている。
ジョワァァァァァァァァと溶けた葉っぱが油になって岩板の上で踊る。
そして、枝に刺さるような形をした〈コケキンの実〉を3つ取って油の敷かれた岩の板に乗せて調理を始める。
ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥとコケキンの実が焼かれていく。食欲をそそる肉質的な香りをその場に広げていく。
『アオーーーーーーーーン』と突然ルロウがその場でとても響く遠吠えした。
「……なんだ急にびっくりしたぞ」
「ああ、料理の時はこうして吠えとかないと、火事と間違えられたり、匂いにつられて客がたくさん来たりすんだ。旅に出ることがあったら覚えておけよ」
「山火事は怖いチュウ」「客って? なんの話チー」「ハイエナさんのことチャア」
「ルロウみたいに遠吠えすればいいのか~~よし、オレもやってみるか」
「ぅん……まぁ聞いてやるよ。コツは遠くを意識することだ」
ごほん、うゔん、と喉の調子を整える。
「では、いきます」
すぅっ、と大きく息を吸い込み、
「アオオーーおおおーーーーーん」
オオカミからするとあまり綺麗とは言えない人らしい声だった。
「32点」
「チュオチュオーン」「チーオン」「チャア―ン」
真似してネズミたちも遠吠えする。
「14点、8点、12点」
「「「「厳しい」チュー……」」」
「まぁ練習しな……もし、できるようになったら、遭難したときとか、オレみたいなオオカミに気づいてもらえるかもな」
「そうか。じゃあ旅に出るなら覚えておいたほうがいいな! うん、練習しておくよ」
「旅に出る機会なんてないチュウ」「宮殿は毎日大忙しチー」「火起こしもする必要はないチャア」
「い、いいだろ? 練習して損はないし、それに旅だってまだ諦めてるわけじゃない」
「……おい、焼けたんじゃないか?」
「ああ、ホントだ。よし、夕食にしよう」
皆で焚火を囲むように座り、楽しい夕食の時間が始める。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる