自宅警備員はゾンビの夢を見る

Neet42

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ゾンビとの死闘

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夢を見ている

夢を見ているのは自分でもわかっている

今日はどんな夢をみるのだろうか

たまには正夢じゃなく 宝くじが当たる夢だったり女の子とウフフな事をする夢が見たい

最近の夢は ゾンビの夢ばかりでノイローゼになりそうだ

そんな事を思ってるが今日もどうやらゾンビが出てくる夢らしい

警察署の前で他のゾンビの群れの中から太ったゾンビがこちらに向かってくる

太ったゾンビはバリゲート代わりに置いてあったパトカーや車を吹っ飛ばして

一直線に向かってくる みんなが悲鳴を上げながら向かってくるゾンビから散り散りに逃げている

そこで夢から覚めた

横になっていた床から体を起こし髪をかきむしる

「また ゾンビの夢かよ たまにはちがう夢を見せろよ」

ゾンビの夢はほとんどが正夢となっている この夢の通りだと昼頃にはゾンビが襲ってくるという事だろう

太ったゾンビは今まで見たことのないタイプで パワー型だとわかる

ゾンビの種類も増えてきたので今まで出てきた ゾンビを区別することにした

最初の頃の大人しいゾンビを LV1 初期型 

次の人を襲うようになったゾンビを LV2 中期型

この前 学校を襲って自衛隊をなぎ倒したゾンビを LV3 上級 

今回夢に見た 太ったゾンビを フットゾンビと名づけることにした

ああ 後はカラスのゾンビがいたっけ それはクロウゾンビでいいか

とりあえず 今のところ LVか 敬称で呼ぶことにした 

自分が勝手につけたものだけど 後で木下さんや他の人にも話してみようと思う

何だかんだと考えていると 夜が明けていた 

日ごろの習慣か ゾンビの夢のせいもあるが いつも朝が早くて困る

「ふわぁああ ああ いっつも眠気がするよ」

何度もあくびをしながら みんなが集まっている場所に向かうのだが

その前に 留置所が気になってしまい そちらに向かうことにした

「向田さん 大丈夫ですか 水、持ってきましたよ」

ケガをした警察官が気になっていたので様子を見に来たのだが 元気そうだ

「ありがとう 助かるよ 君が汲んできてくれた水は美味しくてね」

「あの 僕にも組んできてくれるかな 頼むよ」

もう一人の警察官の方も 向田さんに朝食を持ってきたのか 自分より先に来ていた

篠原さんに頼まれた分の水を持ってこようと一回 ドアの外に出る

「ウォーター」 指から水を出しペットボトルに水を詰める しかし この水 飲んでも大丈夫なのだろうか

いや 昨日はみんなに飲ませたし自分でも飲んでみたけど問題なかったし

「ドアの前で 何やってるの ぼーっとしてたみたいだけど 中にはいんないの」

ドアの前で考え事をしてたら木下さんに声をかけられた 木下さんもケガをした向田さんの様子を

見に来たらしい

4人で朝食を食べながら世間話をしていると 篠原さんが留置所の鍵を開けた

「もう大丈夫だろう 顔色もいいし 話も普通に出来るしな これで釈放だ」

冗談交じりに釈放だなんて言ってくれたので4人で笑いあって また雑談に華を咲かせていた

朝食を終え 腹ごなしに散歩をしているが ゾンビが来ることを忘れているわけではない

見た夢が本当なら もうすぐゾンビの群れが襲ってくるはずだ

緊張感に潰されそうになりながらも しっかりと玄関の正面を見つめていた

丁度 昼頃になった時 昼を知らせるメロディーが何故か いつもより大きい音で街中に響いていた

「おい いつもは こんなに音出ないだろう」

「変だな これって役場で自動で音を流してるはずだよな」

この音は昼を知らせるものでゾンビが出る前からも普通に音をだしていたのだが

ここまで音は大きくなかったはずだし 気のせいかここらへんが一帯が一番 音が大きい気がする

「ちょっと待て この音に惹かれてゾンビが集まってくるぞ」

その通りだ ゾンビは音に敏感で ここら辺 一帯のゾンビが集まってくる可能性がある

「ゾンビが集まって来たぞ やばい 正面を閉じろ 入口を固めるんだ」

周りからゾンビが集まってきたのが目で見てわかるほどだった しかも人を襲うLV2ばかりだ

ただ警察署は流石にLV2に壊されるほどは弱くはない

入口を閉じて籠っていれば中には入れないはずだ みんなそう思って中に閉じこもる予定なのだろうが

他のゾンビを押しのけて 太ったゾンビがのそのそと歩いてきた 

バリゲード用に置いていた車を吹っ飛ばしながら本当にゆっくりと歩いては正面入り口に近づいてきた

鍵をして入口にありったけの重いモノを重ねているはずだが 太ったゾンビ フットゾンビには意味がなかった

入口を壊し 積んでいたモノを吹っ飛ばし中に入ってきた

「嘘だろう あんな太ったゾンビにこんな力があるのかよ」

「また どうしてゾンビが入ってくるのよ」

「逃げろ 中だ 奥に行こう 追ってこないかもしれない」

全員がパニックになりながらも 奥を目指して逃げていく

ただ自分は逃げない このスキルはゾンビと戦うためにあるような気がしているからだ

この場所を守るため 他の仲良くなった人たちを守るために このゾンビを倒さなければならない

ゆっくりと近寄ってくるゾンビに向けて ウォーターを放つ

「ウォーター」 力いっぱい大きな声でスキルを唱える

指先から勢いよく飛び出た水はフットゾンビに向かって一直線に放たれた

結構な勢いのはずだが フットゾンビの足は止まらない 水を受けながらこちらに少しずつ向かってきた

「おい 聞かないのかよ それとも一発じゃだめか」

ゾンビの表情が読める訳もなく聞いてるかどうかは分からない

近寄ってくるフットゾンビに恐怖を抱いているが 後ろに下がるわけにはいかない もう逃げ場はないんだ

ここでこのゾンビを倒さなければならないんだ

「ウォーター」 もう一度 フットゾンビに向けて撃ち放った

LV3のゾンビなら これで効いてくれたはずだが 2発目のウォーターでもフットゾンビはまだ歩みを止めない

だんだん近づいてくるゾンビに背筋が冷たくなるのがわかる 自分が噛まれたりしたらどうなるのか

試したこともないし 試したくもない その恐怖と戦っているのだ

「くそ 何度でも撃ってやるよ ウォーター」

3発目のウォーターで気のせいか 少し足が遅くなった気がした 気がしただけで誤差かもしれないが

こちらに近づくのが遅くなった気がしたのだ

もしかしたら弱っているのかもしれない もう少しだ 近づくゾンビの恐怖を振り切り

4度目のウォーターをフットゾンビに浴びせる

「うぁあああああ ぐうぁぁあああ」

初めてフットゾンビが唸り声をあげた 今まで声など出していなかったはずだ

「声を出したって事は聴いているのか もう後がないんだ これで効かなかったら 人生をあきらめるよ」

少しずつ後ろに下がりながらスキルを使っていたが みんなが逃げて行ったドアを背中にしていた

ここにゾンビたちを入れる訳にはいかない

「ウォーター」 一日に同じゾンビに5発もウォーターを放つのは初めてだ 体から力が抜けるようにふらついた

これが効かなかったら色んな意味で終わりだ

最後のウォーターは勢いよくフットゾンビに突き刺さったと思ったら 吹っ飛んでいった

そして吹っ飛んでいったフットゾンビは 声も出さずに煙を上げて消えて行った

「よかった 倒したんだ もう無理」

ふらふらと壁に背を付きながら その場に倒れて行った

 


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