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森へ4

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さっき見た時、こんな魔獣はいなかった。何でこんなに大きいのに気付かなかったの……!?
アストが剣を構え、視線を前に据えたままわたしに聞く。

「この大きさの魔獣はよく出るのか」

「み、見たことないわ……!大体さっきぐらいの大きさか、もう少し大きいぐらいで……!」

「……場所が悪いな」

そうだ、ここは結界の近くだから。もし、こんなのが体当たりしたら?今度こそどこかにほころびが出てしまうかもしれない。
アストは、つま先を迂回の方角にとって走り出した。

「少し気を逸らす。今のうちにさっきの魔石を浄化して、結界にあててくれ。少し魔力を込めれば補填出来るはずだ」

「わ、わかった!」

さっきの魔獣が落とした魔石に向き直る。アストの走っていった方向を見ながら、子爵が険しい声で言った。

補填そっちは僕が引き受ける。おそらくあれは、君の力が必要だろう」

「うん……!」

一瞬で浄化出来るようになったことも、彼にはもう告げてある。

跪いて手の内側に魔石を握り、邪気を内側に閉じ込めるようにして
目を瞑っていたけれど、わたしはたぶんまた光っていたんだと思う。

目を開けて、掌を開く。浄化された魔石を子爵へ託した。

「お願い!」

「わかった、終えたらすぐに後を追う」

託されてくれた子爵へと頷いて立ち上がる。
何となく視界がくらっと揺れたけど、気にしないふりをして、駆け出した。





アストが走っていった方向を追う。探さなくても、大きすぎる魔獣は眼でも気配でもすぐに分かった。さっきはどうして気付かなかったんだろう……!?
アストは……と思って周囲を見回すと、彼は木の上にいたみたいで、上からザッと降りて来た。

「複数の邪気が結びついて厄介になってる。間引き手が居ないだけでこうなるのは、妙だが」

「とりあえず、もう一度さっきみたいに……!」

「……いや」

アストは何も言わずに、親指で魔獣を示す。何だろう、と思って見ていると。

「えっ!?」

ふっ、と大きすぎる塊が消えた。

「な、なんで……!?」

驚きに目を見張っていると、少し離れた場所に、ふっ、とまた、音も立てずに出現する。
さっきも急に現れた気がしたけど、これなの……!?
これじゃ狙いが定まらない!


「一度これで足を捉えてみたが、すり抜けられた」

「それは?」

「捕縛用のアイテムだ。一応、魔力を帯びてない縄も掛けてはみたが、引きちぎられた」

アストは手を広げて、小さな加工済みの魔石を見せてくれた。教会で小鳥を捕まえていたものかしら。

「……一定距離で何かを追っている間なら消えないみたいだ」

アストはわたしの様子をじっと見る。魔獣の方も眺めてから、もう一度駆け出した。

「引き付けるから、合流地点で叩け」

「わかった……!」
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