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願った場所へ1

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輪の向こうが領地に繋がっていると知って、えいっと飛び込んだはいいけど。足元に何もなくって、床にぶつかる!と思ったらいつの間にか目を瞑ってしまったみたいだった。

「ふぎゃっ」
「うわっ」
「ぐっ」

あれっ、痛くない、でも重い!
それに何か声が多くない……!?

ゆっくり片目を開けてみる。と、目の前には人の体が……ていうかのびていた、子爵が。彼にぶつかって乗りかかって、しっかりと潰してしまっていたみたいだった。
じゃあ重いのは!?

「……マジか……」

呟いたのはアストだった。呆然としつつ、わたしの背中から退いていく。と、体が軽くなったのでバッとわたしも起き上がる。

「……流石に桁が違うな」

「あなたも来ちゃったの……!?」

振り向くと、通ってきたと思われる光の輪はすでになくなってたみたいだった。そんなこと出来るなんて思わなかったけど、まさかとは思うんだけど、どうも道を繋げてしまった……のかな……
って、そんなことしてる場合じゃないんだ、森!

転びそうになりながら窓へ駆け寄って、バンっと左右に開け放った。
そこは宿屋の二階で、身を乗り出すと屋敷の方が見えて、その後ろに広がっている森までも遠くにだけど見える。
子爵がさっき言っていた通り、なんだか今まで感じたことのないような気配が感じられた。

「……!?」

何あれ。じんわりと黒い何かが……森に半円状にかかってて、そこからじわじわと漏れてるように空気へ溶けてる。
血の気が引くのを覚えながら、部屋の扉を探して顔を巡らせる。見つけたドアに駆け寄ろうとして、アストへ腕を掴まれた。

「落ち着け。すぐにどうこうなる段階じゃない」

「あれが何か分かるの……!?」

「邪気が溜まりすぎると稀にああなることがある。……が、進行が早いな」

アストは眼を細くして、窓の外を眺めている。それからわたしの腕を引いて、一度窓を閉じた。部屋の中には結界が張ってあって外に声が漏れないようにしてあるみたいだと、その時に気付いた。

「森に近いほど影響を受けやすい。近くに民家は?」

「う、うちの屋敷ぐらい……それも、敷地内とはいえ距離はあるわ……でも、」

でも、森の側には塔がある。今、そこには、リリアがいるんじゃないの?

「ぐっ……」

後頭部を抑えながら、子爵が上半身を起こした。あ、そういえば潰してそのまま……
ちょっとくらくらしてるみたいだけど目を開けて、わたしを見た。ぎょっとしている。

「君は……ローズなのか……」

「他に誰がいるのよ……!」

「……いや。報告にはあったが……そうか」

あ、そういえばこの人、わたしが成長(?)してから会うのは初めてなんだわ。
バツが悪そうに俯いていた子爵は、ゆっくりと立ち上がった。何となくふらふらとしている。やっぱり頭でも打ってる……?

「ローズ……今回のことは、」

そう言い出した子爵をわたしは思いっっ切り睨んだ。

「後にしてもらえる!?」

「!?」

今それどころじゃないのよ!!!
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