婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

文字の大きさ
上 下
83 / 96

答えのない話

しおりを挟む
「お前の側近は預かっている。下手に隠し立てしないほうがこいつの為だと思え」

『……!誰だ』

あ、結局代わられてしまった……ていうか何というか物騒な……悪人のような文句で……そう思って神官様を見ると、神官様はアルの後ろに立ちながら唇に人差し指を当てて、困ったように笑っている。ぱ、とわたしは口元に手を当てた。
アルも何かを察したのか、表情は軽いままだけど口を結んで黙っている。頬に一筋、汗が見えた。

「……教会の人間だ。正直に答えるなら、お前の側近の無事は保証する」

『っ……教会の人間が……分かった、』

ブランは少し葛藤を挟んだようだけど、渋い声で応答をした。

「あんたはブラン・ダールク子爵で間違いがないか」

『…………そうだ』

「誰に命じられてローズを追放し、そして追ったんだ?」

『命じるも何も……僕個人の発案だ。そこにいる男は僕の命に従ったまで』

つい、とアストの視線がアルへ移る。わたしもつられてそっちを見た。アルがこくこくと頷いているのを見て、アストは小鳥へと向き直った。

「証文をどうした」

『……偽造した』

「罪と知っているな」

『無論だ。……覚悟をしている』

「なぜ彼女を追放した?」

『…………』

今度は、沈黙が続いた。……あれ、これって、この話ってわたしが聞いていいのかな……いや、わたしの話なんだけど。……当事者のはずなのに何でだろう。すごく、他人事感が……

「……わたしと婚約破棄したかったからじゃないの?」

ぽつりと、思わずつぶやいてしまう。……今までの私は、たぶん。外から見てそうされても仕方のないような状態ではあったし……

『………………そうだ』

長い間の後に、子爵の肯定する声が聞こえた。何の間だろう……?本人を前にして言いにくいだけとかなのかしら。通信ではあるから、本当に前にはいないけどね。

「……まあいい」

アストはそれだけ言うと、またテーブルへと小鳥の乗った止まり木を戻して、わたしの方を一瞥した。……交代ってこと?
何を聞こう。何を……そう思いながら、小鳥の前に出る。

「その話は……とりあえず、後にするとして。そっち、どうなってるの?……」

リリアは、という言葉を飲み込んだのは。わたし自身がはっきりしていない気持ちを、この人に伝えていいのかなと思ったからだったけど。
子爵はそれに気付いているのかいないのか、妹の話から始めた。

『さっき、リリアが危険だと言っていたが……こちらでも確認が取れていない。というより、それをしようとしてそこにいる側近と連絡が取れなくなった、というのが実情だ』

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

これが私の兄です

よどら文鳥
恋愛
「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」  私には婚約破棄されるほどの過失をした覚えがなかった。  理由を尋ねると、私が他の男と外を歩いていたこと、道中でその男が私の顔に触れたことで不倫だと主張してきた。  だが、あれは私の実の兄で、顔に触れた理由も目についたゴミをとってくれていただけだ。  何度も説明をしようとするが、話を聞こうとしてくれない。  周りの使用人たちも私を睨み、弁明を許されるような空気ではなかった。  婚約破棄を宣言されてしまったことを報告するために、急ぎ家へと帰る。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

婚約破棄?とっくにしてますけど笑

蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。  さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

処理中です...