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ぬるくてゆるい

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窓の外で小鳥を使って部屋の中の話をこっそり聞いていた彼……アルと言うらしい。
アルは、自分は子爵様……ブランのお付きの人間だ、と話した。
彼に頼まれて、わたしを尾けていた……んだって。

婚約破棄も領地追放も、子爵が仕組んだことなんだって言われた。
そんっっなにわたしと婚約したくなかったのね……!と、思うけど。……正直なところ、わたしだって別に婚約とか結婚とか、ピンと来てなかったことは確かだ。
でも、そういうものだって教えて来られたから……そんなものかな、と思ってそのままにしていただけで。

……それに、婚約の場に連れられて行った時も、正直あまり覚えはなかった。今考えると、洗脳とか暗示とか掛けられてたのかもしれないのよね。
そして、そんな女性と共に過ごしてはいられない……なんていう気持ちも、ちょっと。残念ながら、分かる。

つまりは正直な話。反故にして良いんだったら反故にしますけど……
仕組んだ婚約破棄ってどうなるのかしら、婚約解消にシフト出来たりするの?

……でもね。そのままリリアの……妹の婚約相手に収まらせていいのかはちょっと考えさせてほしい。何より今ちょっと、家がどうなってるかわからないし……!

そうやって悶々と考えてるうちにも、アルの白状は続いている。

「あなたには路銀を渡して、事が済むまでどっか遠くにでも行ってもらうつもりでいたんですよ」

「ど、どっか遠くへ……」

わたしを指してそう明かされて、びっくりするばかりだったけど。
神官様とアストはまた違った感想を抱いたみたいだった。

「それはまた……なんというか細部の詰められていないような……」

「対処がぬるい」

ぬるい!?っていうのはわたしへの対処が!?
……まあ、細部がどうとかっていうのはちょっと分かる。ぼろぼろの計画っていうか……
ちょっと間違えたらバレてしまうような話だから。
雑な計画だなーー、なんていうのは考えちゃうわ。

「我が主人は謀略に向かなくて……」

アルはそこで、ちょっとだけ天を仰ぐそぶりをした。

「でもリリア様とは引き離されてしまったようで。探るために敷地内の塔へ近づいたところ、よくないもんが張られてたみたいで弾かれちゃいました。あんなの、前はなかったと思うけど」

「前って言うことは以前もうちに来てたってこと……!?……ううん、それよりリリアと……」

というか塔、壊れたわよね!?魔石の暴走で壊れたじゃない!
まあそのあたりは、誰かしらが再建したのかもしれないけど……!
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