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馬を乗り換えるような

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いろいろと気になることはあったけれど、まずは今できることを優先……ということで、小鳥用の止まり木を用意して部屋へと戻る。
さっき光を発した時に視線を感じたから、何となくアストと顔を合わせにくい、と思っていたけど。部屋に入ると、彼は彼で、何か冷たいような眼をして侵入者?の方をずっと見ていた。
つられるようにしてそちらを見ると、起きた男の人は後ろ手にされたままで壁に背を預けて床へと座っていた。へらっとしてて……何かこう、ずいぶん気楽そうに見える。

鳥は逃げるでもなくアストの手の中にいて……アストは、わたし達が戻ってくるのを見て、神官様の方へと手を出した。

「……木」

「あ、ああ」

声を掛けられたのも返事をしたのも神官様だったけど、持っていたのはわたしだったのでアストの手へ止まり木を渡す。視線は合わなかった。
アストが手の中で渡された止まり木に小鳥を近づけると、小鳥は何の抵抗もなくするっと枝にとまり、首を傾げながら小さく鳴いている。
こうやって見ると、何の不思議もなく、ただの小鳥にしか……
止まり木と鳥の脚をそれぞれ触ったアストが、台をテーブルの上へと一度置いた。

「……それで。お前は何だ?なぜ話を聞いていた」

そう、まずは事情……を、聴かなくちゃ。アストが質問をしたことで、わたしのほうも聞きたかったことを思い出してしまう。

「あの、あなた……領地の方で会ったわよね、馬車に乗る前に……」

思わず口にしてしまったけど、す、とアストから視線で制された気がする。
アストの視線は『ちょっと黙っててくれ』と言ってるようで。よ、余計なこと言いません……!わたしは、手で口を抑えて、こく、こく、とうなずいた。
捕まった男の人は、やっぱり砕けた姿勢を崩さないで笑っている。

「や、通りすがりですってー。教会ン中なんてめったに入れないからさぁ、ちょっと興味が出ちゃって……」

傍らに佇んでいた神官様が、静かに止まり木へと近づいた。枝を掬うようにして掌へ納めると、小鳥の頭のところを指先でゆっくりと撫でてやる。小鳥はおとなしく撫でられてるみたいだった。

「……不思議な術ですね、これはその辺にいる小鳥に見える」

「見えるも何も、実際そこら辺の小鳥じゃないっすか?」

しれっとしてる男の人だったけど、急にそっちからヒュッと息を飲む音が聞こえた。神官様の表情が、眼鏡で半分隠れてしまって分からない。小鳥は……特に何も変わらず、神官様に撫でられているようだけど……

「小動物をいたぶる趣味はありませんが、あなたと神経が繋がっているようだ」

「オッケー全部話します」

くるっっと音を立てるような掌反しを目の前で見てしまった。
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