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アル、中央到着(別視点)

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<ブランの側近が中央へ着いた頃>

強化された馬車によって中央へと爆速で旅立ったローズ。彼女に遅れること数日、ブランの側近である彼、アルも中央へと降り立った。
尾行に使っていた小鳥が地面に落ちた菓子クズへ気を取られ、説得に要するのにしばし。気付けばローズの乗った馬車ははるか彼方にあった。

(にしてもえらい速かったなー、また何か術でも使ったんだろーけど)

辻馬車タクシーを使って追いかけたはいいが、乗り合いでもないために高くついた。この件では主人ブランから惜しみない経費を約束されているとはいえ、結構な額の請求書が出来てしまったことも確かである。
幸いというか何というか、爆速で進む馬車の目撃情報はそこかしこに残っていたため行先は簡単に知ることが出来た。途中からは乗り合い馬車に乗り換えて進むことにする。

中央に着いたが流石に人が多い。そこらの木陰に身を寄せ、アルは眼を伏せて集中した。遠隔でブランと通信するためだ。

「ブラン様」

『アルか、首尾はどうだ』

屋敷の外ではせめて固い口調でしゃべれ、との言いつけを守ってやや語彙を固くする。とはいえ内容の気安さがそう変わるものでもないが。

「は、中央に着いたのですが見失ってしまい…………」

口調だけは真面目くさってそう告げるが、ブランからは深い深いため息とともにあきれた声をもらった。

「お、ま、え、な、あ。……まあいい、少しこっちでも調べてほしいことがある。
リリアと離されてしまった。中を探るために小鳥を一匹やってくれ」

さらっと告げられた要望ではあるが、そこそこ難易度の高い技でもある。

「二か所同時ですかぁ……やってはみますが」

簡単に言ってくれる、と思いつつもブランとの通信はそこで終えた。ブランのいるところ、かの領地へと残してきた小鳥へ遠方からコンタクトを図る。

眼を伏せて意識を集中させると、小鳥とアルとの視界がリンクした。小鳥を羽ばたかせて屋敷の周りを何度か回る。しかし、リリアの姿は見えないようだった。彼女の気配のようなものも感じない。

敷地内にいると思われる、リリアの居るところ。迷う場所はそこまで多くはなかった。

(するってぇと……)

アルは、小鳥を塔の方へと飛ばすことにする。塔には結界が巡らされていたが、それはあくまで塔の内部に侵入するのを防ぐためのことで、周囲から眺める分には問題がない。はずだった。

ばちんっ

「おあ……?」

アルの視界が暗く揺れる。これはリンクしている小鳥の視界で、体に走る痺れと衝撃も小鳥が体感しているものだ。
何かに弾かれた。膜のような何かは、害意を持ってアルとリンクした小鳥の体を弾き飛ばした。

(なんだ、これ。範囲が……質も……)

結界が、その範囲を広げていると気づいた時には遅かった。アルはゆっくりと木陰で倒れ、そのまま気を失った。
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