74 / 96
無題
しおりを挟む
子は親の所有物である。
したがって親の仕打ちには全て従うべきであり、その意向を聞く意味など何もない。
モノが意志を持ったような口を利くことに耐え難い苛立ちを覚えた。
ローズが領地を出たと聞いた。
あれには塔で抑え込むために年月をかけて術を掛けていたはずだった。ローズがそうしたと告げてきたのは、あれの婚約者としてあてがった地の令息だった。
どのような形かはまだ知れぬが、入れ知恵をきかされたとみて間違いないだろう。また、その令息はリリアと婚姻を結びなおしたいと述べた。こちらにも何がしかを吹き込まれたか。
仕置きを兼ねて塔へとリリアを閉じ込めたが、こちらに製法を教えた覚えはない。
誰に仕えるべきか、誰に従うべきなのか……思い直すいい機会になるだろう。
(……さて)
今や我が地の魔石の精製は、ローズの運用を前提として行われていた。
抜けた穴を埋めるにしても早急に人を雇うことはならない。何かしらのトラブルがあったと、喧伝するようなことになるためだ。
ローズを見つけ出し、再びこの地に捕らえなければならなかった。
保管庫に降り立った領主は眉を顰める。用途に際して取り分けていた魔石の一角がごっそりとその数を減らしていた。
この部屋に入るには鍵となる石に手を合わせねばならず、開場は一族の血に反応するように出来ている。
荷の運びに視界を封じた使用人を用いたことはあるが、他にこの部屋の扉を開けることが出来るものは、この屋敷には二人しかいなかった。
ローズか、リリアか。
領主は鬱屈を深く眉間へと刻む。
魔石を差し出す期日は迫っていた。
不足分を、どこからか補わなければならなかった。
したがって親の仕打ちには全て従うべきであり、その意向を聞く意味など何もない。
モノが意志を持ったような口を利くことに耐え難い苛立ちを覚えた。
ローズが領地を出たと聞いた。
あれには塔で抑え込むために年月をかけて術を掛けていたはずだった。ローズがそうしたと告げてきたのは、あれの婚約者としてあてがった地の令息だった。
どのような形かはまだ知れぬが、入れ知恵をきかされたとみて間違いないだろう。また、その令息はリリアと婚姻を結びなおしたいと述べた。こちらにも何がしかを吹き込まれたか。
仕置きを兼ねて塔へとリリアを閉じ込めたが、こちらに製法を教えた覚えはない。
誰に仕えるべきか、誰に従うべきなのか……思い直すいい機会になるだろう。
(……さて)
今や我が地の魔石の精製は、ローズの運用を前提として行われていた。
抜けた穴を埋めるにしても早急に人を雇うことはならない。何かしらのトラブルがあったと、喧伝するようなことになるためだ。
ローズを見つけ出し、再びこの地に捕らえなければならなかった。
保管庫に降り立った領主は眉を顰める。用途に際して取り分けていた魔石の一角がごっそりとその数を減らしていた。
この部屋に入るには鍵となる石に手を合わせねばならず、開場は一族の血に反応するように出来ている。
荷の運びに視界を封じた使用人を用いたことはあるが、他にこの部屋の扉を開けることが出来るものは、この屋敷には二人しかいなかった。
ローズか、リリアか。
領主は鬱屈を深く眉間へと刻む。
魔石を差し出す期日は迫っていた。
不足分を、どこからか補わなければならなかった。
4
お気に入りに追加
7,022
あなたにおすすめの小説

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる