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瞬間的に

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「それは、月の光を使わずともという事かい?……しかし……」

神官様が尋ねると、アストは頷いた。
魔石の浄化には月光を用いる……細かな違いはあるだろうけど、それは大前提にも等しい決まりだった。
でも、わたしには前例……とも言えないけど、心当たりがある。
自分の体に溜め込んだ月の光の力で、一瞬にして魔石を浄化した幼い頃。
それでも、あの時は夜だったけど……

神官様は、先ほど言っていた通り、わたしへの負担を心配されていた。
でも、今回は……魔力はもちろん使用するけれど、月光の力が重要となる儀式だ。

「出来ると思う」

アストの肯定を受け取って、神官様はわたしへ視線を向ける。
出来るか……は、分からないけど。結果が出るなら早い方がいい。
わたしも、神官様へと頷いて見せた。

「……やってみます」



神官様のお部屋は、大きい窓がひとつあるだけ。
明るく日光の差し込むその窓を分厚いカーテンで覆ってしまうと、途端に部屋は薄暗くなった。
塔の中で日が昇った後に過ごしていた環境を、疑似的に作る。

アストはまた、扉の側の壁へと戻る。
わたしは神官様から魔石を受け取ると、テーブルの上へ置いて両手を伸ばした。

まずはコーティングしていた自分の魔力を表面から剥がす。
ゆらゆらと立ち上りかけた闇の力を抑えるようにイメージしながら、自分の体に貯め込んでいた月光の力を注いだ。

「んん……!」

目を伏せて念じると、掌から指先まで、淡い光に覆われるのが分かった。
発光はすぐに力を増して、やがて眼を開けていられないほどの眩しさに襲われる。

「…………っ!」

神官様とアストが、息をのむ音が聞こえた気がした。

その発光の時間も一瞬の事で……
目を開けて、かざしていた手を下す。
テーブルの上には、浄化されきった魔石が、静かに深く輝きを放っていた。

で、できた……




「……この状態が、セスティア家が納めていた魔石と同じものです」

再びカーテンを開けて、明るくなった部屋の中。
受け止めた日光を吸い込んでいくような魔石……改めて渡したそれを手にして、神官様は目の高さまで持ち上げる。

「……これは……確かに……
……どの土地の領主であろうと、このような力を持った人物を離したがりはしないでしょう」

神官様はしみじみとそう褒めてくれたけど、どうしてもお世辞に聞こえてしまう。
だって、ねぇ。
他でもない生まれ育った領地からは、追放されてしまったから。

「あはは……生まれ故郷からは、そうでもなかったみたいですが……」

ついつい、そう言ってしまった。
すると、神官様はやはり神妙な顔つきをして……

「……ローズ様。あなたにお伝えしなければならないことがあります。
あなたのことを捜索するよう届けが出されているのです……あなたの御父上から」





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