婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

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「儀式の最中に扉を大きく開け放したことで、空間に満ちていた術へと変化がもたらされ……
儀式の失敗という大きなショックを経て、塔を離れた。
この流れが結果として、ローズ様が意思を取り戻すことに繋がったのではないか、と考えられます」

「つまりそれは…………わたしが外に出られたことも……その二人のおかげとか、いう……」

「…………そう考えることも、出来なくはない、ですが」

おそらく、わたしの心情をおもんばかった神官様が、肯定を遠回しに濁してくれた。
いや、でも、考えたら塔の破壊すら二人がしでかしたことだったわけで!
でもそれをあの二人のおかげって考えるのは、あの行為をプラスに考えるっていうのは、何か複雑さがすごい……!!

「あっ、でも。突入された時にめちゃくちゃ『このー!』って気持ちがわきあがったんですけど!
あの気持ちって暗示じゃなくてわたしの感情だったんじゃ……」

頭の方では大体分かっていても心情面では納得しにくくて、何かしらの整理を……と思って口にしてみたんだけど。

「それは……そうですね……魔石に執着していた、ということですから……
儀式を台無しにされた事への怒り、もしくは、持っている感情を増幅するように作られていた……?
そもそも強制的に中断したことによる影響の範囲がどこまで…………」

「ああぁあ、すみません、色んなことがはっきりしてない話でした……!」

神官様が途端に考え込んでしまったのですぐに撤回した。
分からないことを考えても今は仕方ないもんね……

……まあ、何ていうか。
終わりよければですよね、こうなったら!
…………まだ何にも終わってないから違うけど!!



神官様はそこで一度話をきって、入り口のドア付近にいるアストの方を見た。
アストは、こく、と頷く。
そして、神官様は改めてわたしの方を見る。

「思考を鈍化……余計なことを考えないようにして、その上で、大事な命だけを順守するような、術。…………これは、使用に制限が掛けられた……禁術の類、ということになります」

「あっ……」

どくん、と大きく心臓の音が響いた。
そうだ、言われてみれば、そんな……人の精神こころを操ってしまうような技が、真っ当であるはずがなかったんだ。

わたしにその術をかけていたのは、おそらく両親のどちらかで、それは……

「………………み、領民みんな、は」

頭の奥から血の気が引いたように、全身が冷たくなった。

「領地の皆は、大丈夫なんでしょうか……!」
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