59 / 96
よくない予感
しおりを挟む
掌を眺める。
骨と皮だけだった手首にも指先にも、栄養が行き届いてるすらりとしたものになってた。
……成長(?)も、魔力が暴発したおかげ……ではあったなあ、そういえば。
「今はもう、大丈夫なんでしょうか?その、暴発とかは……」
「完全に言い切れはしないのですが……予想外の時に発動することは、恐らくない……と、思います。
ここに来るまでに幾度か消費したと聞いていますから」
しました、消費。
光りました、わたし。
こく、こく、と首を縦にふるわたしへ、神官様が話を続ける。
「しかし、それだけの力を、ローズ様が持ち合わせているという事実は変わらないのではないか、とも……
今までのように、発声だけがトリガーになる……ということは無いと思いますが」
「そ、そういうことになるんですね……」
つまり、やろうと思えば、お風呂とか馬車とかみたいにパワーアップさせることが出来てしまう……?
それって結構、おおごとなんじゃないかしら……
「ただ、やはり魔力の消耗はとてつもなく激しいことが予想されます。
体への影響も分からない今、控えられることをおすすめしたいのですが……」
「はい、そうします!」
わたしはここぞと力強い返事をした。
だってなんだか、自分の手に負えないっていうか……こんなの、世の理から外れてる気がしてしまう。
この力を振るうには、わたしには判断するだけの知識も経験も、何もかも足りてない……
何せ、領地の中の塔という小さな小さな世界で、魔石を作ることだけして生きていたので。
いい使い方が思いつければ話は別なんだけどなあ……
元引きこもりには荷の重たい問題だった。
わたしの返事を聞いて、神官様はちょっと目を丸くした後で、微笑んでくれた。
「長い間、塔に滞在していた変化がどうなっているかは、まだ確信が持てません。
ひとつだけ言えるのは、暗示が解かれている……ということは間違いないと思います」
わたしはまた、頷く。
それは分かる。だって、今は魔石への執着とか、そういう事もないし。
塔から離れることだって簡単にできた。
「これまでのローズ様では、もしかしたら、塔を離れることなど考えつかなかったかもしれませんが……転機がありましたから……」
「きっかけ……それって、塔の破壊ですか……?」
「その、もう少し前です」
「もう少し前、っていうと……」
「ローズ様の……婚約者と、妹さんが扉を開けて入って来られた事ですね」
「え、えぇえええ……!?」
えっ。何ですか、その複雑な気分になりそうな話は。
つまりあの突入が?婚約破棄と領地追放をわたしに突き付けに来た、あの瞬間が??
あれがわたしの意識覚醒の転換だったと……!?!
骨と皮だけだった手首にも指先にも、栄養が行き届いてるすらりとしたものになってた。
……成長(?)も、魔力が暴発したおかげ……ではあったなあ、そういえば。
「今はもう、大丈夫なんでしょうか?その、暴発とかは……」
「完全に言い切れはしないのですが……予想外の時に発動することは、恐らくない……と、思います。
ここに来るまでに幾度か消費したと聞いていますから」
しました、消費。
光りました、わたし。
こく、こく、と首を縦にふるわたしへ、神官様が話を続ける。
「しかし、それだけの力を、ローズ様が持ち合わせているという事実は変わらないのではないか、とも……
今までのように、発声だけがトリガーになる……ということは無いと思いますが」
「そ、そういうことになるんですね……」
つまり、やろうと思えば、お風呂とか馬車とかみたいにパワーアップさせることが出来てしまう……?
それって結構、おおごとなんじゃないかしら……
「ただ、やはり魔力の消耗はとてつもなく激しいことが予想されます。
体への影響も分からない今、控えられることをおすすめしたいのですが……」
「はい、そうします!」
わたしはここぞと力強い返事をした。
だってなんだか、自分の手に負えないっていうか……こんなの、世の理から外れてる気がしてしまう。
この力を振るうには、わたしには判断するだけの知識も経験も、何もかも足りてない……
何せ、領地の中の塔という小さな小さな世界で、魔石を作ることだけして生きていたので。
いい使い方が思いつければ話は別なんだけどなあ……
元引きこもりには荷の重たい問題だった。
わたしの返事を聞いて、神官様はちょっと目を丸くした後で、微笑んでくれた。
「長い間、塔に滞在していた変化がどうなっているかは、まだ確信が持てません。
ひとつだけ言えるのは、暗示が解かれている……ということは間違いないと思います」
わたしはまた、頷く。
それは分かる。だって、今は魔石への執着とか、そういう事もないし。
塔から離れることだって簡単にできた。
「これまでのローズ様では、もしかしたら、塔を離れることなど考えつかなかったかもしれませんが……転機がありましたから……」
「きっかけ……それって、塔の破壊ですか……?」
「その、もう少し前です」
「もう少し前、っていうと……」
「ローズ様の……婚約者と、妹さんが扉を開けて入って来られた事ですね」
「え、えぇえええ……!?」
えっ。何ですか、その複雑な気分になりそうな話は。
つまりあの突入が?婚約破棄と領地追放をわたしに突き付けに来た、あの瞬間が??
あれがわたしの意識覚醒の転換だったと……!?!
5
お気に入りに追加
7,023
あなたにおすすめの小説

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ
榎夜
恋愛
私の婚約も勉強も、常に邪魔をしてくるおバカさんたちにはもうウンザリですの!
私は私で好き勝手やらせてもらうので、そちらもどうぞ自滅してくださいませ。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる