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変容

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「……お願いします」

カップをことっとテーブルへ置いて、膝へ手を乗せながら神官様へとお話をお願いした。
……ん?今なんか、割と大事なことを思い出しそうな気になったんだけど……
なんというか、謝らなきゃいけないとか、そっち方面の……
うーん……?
……思い出せない。今は、話へ集中しなくっちゃ。

神官様は、先ほどの続きから話し始めてくれた。

「……塔の仕掛けは、お話しぶりからして……ローズ様の、ご両親どちらかが掛けられたものなのでしょう」

……ああ、やっぱり。
わたしは、小さくうなずいた。

実の親が娘を……って言うのは、その本人に明かす話として、あまり愉快なことじゃない、と思う。
神官様の声も、わたしへの配慮はあれど……淡々としていた。

「反動のように魔力が暴走したり、気分が悪くなったのは、その塔が壊れたこと……もしくは、塔から長く距離をとったことだと思うのですが。これは、破壊から来たものと考える方が妥当なのかもしれません」

「破壊から……」

「今まで抑圧されて来た魔力が、体内で行き場を求め……発動法が混乱したり、些細な念で溢れてしまったのだと思います。そして、体調面にも不調を来たした」


神官様のお話は、こうだった。

塔の中でのわたしは、最低限の生命維持を残して、あとは魔石を作ることに意識を集中させられてたかもしれないんだって。

で、その塔が壊れてしまったことで……今まで自由意思で使うことの出来なかった魔力が、発動アウトプットを求めて体の中で暴れていた……かも、って。
だから、無意識に使ってたものと魔法の効果がずれたり、声に出しただけで爆発的な効果の引き金になったりした、と。
その状態で馬車とか……ちょっと無茶な使い方なんかしちゃったので、余計に頭も胸もお腹もシェイクされちゃって……
その気持ち悪さを抱えたまま、教会ここで塔についてお話をしよう……って、記憶を揺らしたことが、とどめになり、とうとう気を失うに至ってしまった、と。

逆に、眠っていた……というか、完全に意識がない時の方が今まで無意識に使っていた魔法は発動しやすくなってるみたいだ。
倒れて一週間眠ってる間も……生命維持の力だけは体に染みついていたみたいで。
なんかたまにほんのり光ってたらしい。本で読んだ、蓄光の石とか草みたいだな……



ややこしいけど、つまりなんか、発声したら効果は爆発、今まで無意識に使ってたものは気絶状態のときに発揮しやすいとかいう……ものすごーーく極端な体になってしまってたみたい。
使おうと意思を持って発動したものは、今まで通り使えてたみたいだけど……生活魔法とかね。

「もちろん、この話はまだ推測に過ぎません。しかし……残滓から感じる術の傾向から見て、遠く外れてはいないと思います」

はー……と、わたしは何となく驚きと納得の混じった息を吐いた。
膝に置いていた手をくるっと返して、掌を見つめる。
抑圧なんてされてきてたのね、魔力まで。

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