婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

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塔への突入、その果てに2

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「実は……ローズから、このようなものが届きまして」

ブランはそう言って、『ローズ・セスティア』と署名が入った婚約解消の申請書を見せる。
昨日ローズ本人に見せた偽の証文とは違って、今度は申請紙自体は本当のモノだ。
しかし、サインはやはり、ブランの術で偽装してある。

「それから、これも」

『疲れました、探さないでください』と書いた便せんを添えておく。
これも以前見たサインの書体を真似て作った偽装だ。だが、婚約の場で見た具合から言って、恐らく多少の真相も混じっているだろう……と、ブランは思っている。
……その真相の割合がどのぐらいかは分からないが、そう感じながらも、ローズと向き合っていける未来はブランに見えなかった。

「…………」

領主は、眉をピクリと上げて証文と手紙を見た。
ブランはそれらを差し出さず、くるっと巻いて自分の手元へ戻す。

「慌ててこちらに参ったのですが、既に、ローズは出て行ってしまったようでした……」

領主が何も言わないので、ブランは尚も言葉を続ける。

「……これでは、婚約不履行となってしまいます。しかし、折角結んだこの地と縁が切れてしまう事は、僕としても惜しい。
ついては……ローズの妹君である、リリアとの婚約をお許しいただけないでしょうか」

まっすぐと領主の顔を見る。追いやったローズの姿が目に浮かんだ。
許せとは願わない。
これはただ、ブランの心を守るためのただのエゴイズムだ。

そのエゴを原動力にして、交渉を試みたが……

「話は分かりました。……が、何分戻ってきたばかりで、すぐの返答というのも難しい。
……本日はお引き取り願おうか」

「……そ、れは」

「暫くは、こちらへの来訪をお控え下さい」

領主はそう、ブランに告げた。

「っ暫くとは、どれ程ですか」

「さて……追って連絡致します。……みな、客人がお帰りだ」

そして、命を受けた使用人たちから、追い立てられるように屋敷を出る。
別れ際、リリアの目が不安そうに揺れるのが見えた。

(…………クソっ!)

ブランは心の中で悪態をつく。
穴だらけの計画の、暗い穴がまた一つ、大きく広がった。
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