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塔への突入(冒頭・別視点)
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教会に申請しておいた、婚約解消の証文が届いた。
ブランが手をかざして魔法紙を撫でていくと、淡い光と共に証文の文字が変化していく。
申し立て用の無記名だったはずの証文。
それが今は、両家のサインも入っている『婚約破棄、および領地追放の証文』へと変わっていた。
それを、簡単に丸めて紙帯で留める。
いよいよ、ローズへ婚約破棄を言い渡す日が近づいてくる。
リリアが言うには、ローズは基本的に、魔石を浄化することを日々の習慣としているらしい。
(それで滅多に姿を見せないのか……?それにしても、期間が長い気もするが……)
覚えた違和感も、あの日の恐ろしい姿を浮かべると、意識がそれで塗りつぶされてしまう。
日取りは、領主夫妻が長く屋敷を空ける、という日を狙って決めた。
三日ほど前にローズが魔石を抱えて塔へ行ったことは、側近から報告されている。
数日経って未だに出てこないとは思ってもみなかったが、いっそこちらから塔へと赴いてしまえばいい。
当日。
用意した偽の証文を手に、ブランが言う。
「…………これを、姉君へ伝えに……僕は塔に行ってくるよ」
ブランの言葉を聞いて、リリアは気まずそうに視線を伏せた。
「儀式中は、いえ、塔には……わたしは近づいてはいけないと言われていて……」
「そうか…………」
(証文だけでも確かな証拠にはなるだろうが、リリアが居てくれた方が説得力が上がるだろう……しかし……)
顎に手を置いて考えこむ子爵を見たリリアは、迷った末に、胸の前で拳を握った。
「わ、わたし……一緒に参りますわ!連れて行って下さいませ!」
「え?そ、そうか……ありがとう、リリア」
ブランは驚きながらも、申し出へと礼を言った。
敷地内にある塔へは、石畳の道を歩いていく。
これから罪を犯すという、奇妙な緊張がブランの身を包んでいた。
石造りの、巨大な塔だ。
周りにはうっそうと木が繁り、一番上の……儀式を行われている部屋と思われる部分は、窓が厚い布で覆われている。
塔の入り口には思った通りに結界が貼られてあったが、これはブランの術によってくぐり抜ける事が出来た。
長い石段を登りながら見上げると、上部から異様な気配を強く感じる。
(もうすぐだ……もうすぐ、あの女との婚約は終わる……)
証文を握りしめないように気を使いながら、ブランは木の古びた扉の前に立った。
やや斜め後ろにリリアが立つ。
中から気付かれないよう、ここまで来れば声は出せない。
互いにアイコンタクトをし……頷いたリリアを見て、ブランは扉を勢いよく開ける。
――バタンッッ!!
そして二人は、まともに、室内の淀んだ空気を浴びた。
ブランが手をかざして魔法紙を撫でていくと、淡い光と共に証文の文字が変化していく。
申し立て用の無記名だったはずの証文。
それが今は、両家のサインも入っている『婚約破棄、および領地追放の証文』へと変わっていた。
それを、簡単に丸めて紙帯で留める。
いよいよ、ローズへ婚約破棄を言い渡す日が近づいてくる。
リリアが言うには、ローズは基本的に、魔石を浄化することを日々の習慣としているらしい。
(それで滅多に姿を見せないのか……?それにしても、期間が長い気もするが……)
覚えた違和感も、あの日の恐ろしい姿を浮かべると、意識がそれで塗りつぶされてしまう。
日取りは、領主夫妻が長く屋敷を空ける、という日を狙って決めた。
三日ほど前にローズが魔石を抱えて塔へ行ったことは、側近から報告されている。
数日経って未だに出てこないとは思ってもみなかったが、いっそこちらから塔へと赴いてしまえばいい。
当日。
用意した偽の証文を手に、ブランが言う。
「…………これを、姉君へ伝えに……僕は塔に行ってくるよ」
ブランの言葉を聞いて、リリアは気まずそうに視線を伏せた。
「儀式中は、いえ、塔には……わたしは近づいてはいけないと言われていて……」
「そうか…………」
(証文だけでも確かな証拠にはなるだろうが、リリアが居てくれた方が説得力が上がるだろう……しかし……)
顎に手を置いて考えこむ子爵を見たリリアは、迷った末に、胸の前で拳を握った。
「わ、わたし……一緒に参りますわ!連れて行って下さいませ!」
「え?そ、そうか……ありがとう、リリア」
ブランは驚きながらも、申し出へと礼を言った。
敷地内にある塔へは、石畳の道を歩いていく。
これから罪を犯すという、奇妙な緊張がブランの身を包んでいた。
石造りの、巨大な塔だ。
周りにはうっそうと木が繁り、一番上の……儀式を行われている部屋と思われる部分は、窓が厚い布で覆われている。
塔の入り口には思った通りに結界が貼られてあったが、これはブランの術によってくぐり抜ける事が出来た。
長い石段を登りながら見上げると、上部から異様な気配を強く感じる。
(もうすぐだ……もうすぐ、あの女との婚約は終わる……)
証文を握りしめないように気を使いながら、ブランは木の古びた扉の前に立った。
やや斜め後ろにリリアが立つ。
中から気付かれないよう、ここまで来れば声は出せない。
互いにアイコンタクトをし……頷いたリリアを見て、ブランは扉を勢いよく開ける。
――バタンッッ!!
そして二人は、まともに、室内の淀んだ空気を浴びた。
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