婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

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ブランの思惑5

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「セスティア家を訪問した際、簡単にだが挨拶を交わした事がある。
あちらとしても、欲しいのはうちとの繋がり……地位と名誉だろう。それなら、対象が妹でも……」

そこまで口に出してから、ふとリリアの雰囲気を頭に浮かべるブラン。
整った造形に愛らしい笑みを張り付け、聞き及んだ話では魔力も多く持っているとのことだった。
しかし。

(……あっちもあっちで人形のようではあったが、姉と違ってまだ表情があった……)

両親の顔色を窺うように愛らしさを纏っていたリリアの姿は、ブランにとって、どこかいびつな印象があった。
とはいえ、他に思いつく手立てもない。
八方ふさがりの中で見出したわずかな抜け道を広げるように、手探りで考えを巡らせていく。

「そんな短絡的な~。考え直した方が良いんじゃないですか」

話を聞いているアルがうんざりとした声を上げる。
しかし、ブランの決意は変わらなかった。

「うるさい、この際やれることは何でもやるぞ!」

このまま現状を放置していれば、遠からず不気味な女との婚姻へと道が進んでしまう。
それならば危うい橋を渡ってでもあがいてしまいたい……
ブランの心中は、ほとんどやけくそだった。

「大体追放ってどうするんですか」

「…………どうするって……向こうが出て行きたくなるように仕向けるとか……」

ふむ、とアルが指を折って空を数える。話を振られると考えてしまうのがさがらしい。
不和の原因と言えば……と、聞き及んだ色々を思い出している。

「あぁー……悪口言って怒らせるとか?あと、暴力振るったりですよね」

「それで行こう」

またもブランは即決する。
適当に思いついた案を端から取り入れられ、アルが嘆くような声を出した。

「領主令嬢を殴る??上手く行く未来が見えませんよ~~~」

ぐ、とブランが声に詰まった。女性に手を挙げた記憶などない。

「……暴力はまあ、考えておくとして。とにかく追い出せばいいんだろう!」

しかしブランは後半へは答えず、穴だらけの計画を立てることをやめない。

「証文を取り寄せに教会へ行くぞ。とりあえず婚約解消の申し立てだ……
姉の方は、領地を出てから口封じすればいい」

「殺すんですか?」

主人にしては珍しく過激な結論になったものだ、とアルは目を丸くするが、ブランはすいっと視線をそらす。

「………………………口封じだ。何か……………上手いこと説得してこい」

まるっと対処を投げられたアルは、げーっとジト目で肩を落とした。

「えぇええ~~~~~~まさかのこっち任せ~~~~~~」




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