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ブランの思惑(子爵視点)
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<子爵視点>
ブランがリリアを伴って塔の間へ行き、ローズへと領地追放と婚約破棄を言い渡し、壊れた塔が目の前で治っていくという奇跡のような修復を見た翌日の事。
それはローズが人知れず領地を出て行った日でもあった。
ブランは、セスティア家管轄の領地内に宿を取っていた。セスティア家の屋敷には一番近い一等地の宿だ。
ローズを追わせている側近から何とも気が抜ける報告をもらったブランは、ぐったりと脱力する。
(追跡用の小鳥がクッキーを食べてて見失っただと………??
あいつに任せたのが間違いだったか……いや、しかし信用だけはおける奴だ……)
□□□
セスティア家の令嬢と婚約を決めたのはブランの父……貧乏伯爵だった。
由緒正しき家柄ではあるが、今は名誉のみで保たれているようなものだ。
ブランの家が統治している領地は、魔石の生産が極端に少ない。
魔石を核とするモンスターが出ないという点ではありがたかったが、領地経営に多くの魔石が使えないという痛いハンデを負っていた。
その代わりとでも言うように、領地内に住む人々は、大多数が生まれた時から一定の魔力を有していた。
領民は自前の魔力を使って最低限の生活を営んでいた。
しかし、この土地の魔力使いは、間接的な能力に秀でている者が多く……
直接的で強力なパワーを持った領民はほとんど居なかった。
魔石が取れず、武力となるような兵もいない。
他所と取引をする魔石と、術師により張られた結界で、成り立っているような有様だった。
そして、領地で魔石が取れないことへの裏返しなのか……
ブランの祖父は、魔石の運用を好まなかった。
ごく一部の魔術師だけに、魔石を扱う権限は与えられた。
ブランには兄が二人いる。伯爵の爵位は恐らく兄のどちらかが継ぐことになるだろう。
ブランが持っている子爵の位も、彼が自前の功績により賜ったものだった。
領地を継ぐことのない三男のブランには、魔石の基礎さえ携わる事が許されなかった。
ある時、祖父が老齢によって隠居を決める。
父は、さっそくとばかりにブランへとセスティア家との縁談を持ってきた。
国内有数の魔石産地として名高いエリアを領地としているセスティア家。
そこと関係を持つことで、やっとブランのところの領地でも、魔石のスムーズな運用が可能になるかもしれない、という事だった。
ブランは継ぐ領地のない三男坊だ。
自分の未来は生まれてからずっと決まっていたものと割り切っていたブランは、これをあっさりと了承する。
しかし、婚約の席で初めてローズと会ったブランは、絶望することになった。
(なんだ、あの……異様な……)
ブランがリリアを伴って塔の間へ行き、ローズへと領地追放と婚約破棄を言い渡し、壊れた塔が目の前で治っていくという奇跡のような修復を見た翌日の事。
それはローズが人知れず領地を出て行った日でもあった。
ブランは、セスティア家管轄の領地内に宿を取っていた。セスティア家の屋敷には一番近い一等地の宿だ。
ローズを追わせている側近から何とも気が抜ける報告をもらったブランは、ぐったりと脱力する。
(追跡用の小鳥がクッキーを食べてて見失っただと………??
あいつに任せたのが間違いだったか……いや、しかし信用だけはおける奴だ……)
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セスティア家の令嬢と婚約を決めたのはブランの父……貧乏伯爵だった。
由緒正しき家柄ではあるが、今は名誉のみで保たれているようなものだ。
ブランの家が統治している領地は、魔石の生産が極端に少ない。
魔石を核とするモンスターが出ないという点ではありがたかったが、領地経営に多くの魔石が使えないという痛いハンデを負っていた。
その代わりとでも言うように、領地内に住む人々は、大多数が生まれた時から一定の魔力を有していた。
領民は自前の魔力を使って最低限の生活を営んでいた。
しかし、この土地の魔力使いは、間接的な能力に秀でている者が多く……
直接的で強力なパワーを持った領民はほとんど居なかった。
魔石が取れず、武力となるような兵もいない。
他所と取引をする魔石と、術師により張られた結界で、成り立っているような有様だった。
そして、領地で魔石が取れないことへの裏返しなのか……
ブランの祖父は、魔石の運用を好まなかった。
ごく一部の魔術師だけに、魔石を扱う権限は与えられた。
ブランには兄が二人いる。伯爵の爵位は恐らく兄のどちらかが継ぐことになるだろう。
ブランが持っている子爵の位も、彼が自前の功績により賜ったものだった。
領地を継ぐことのない三男のブランには、魔石の基礎さえ携わる事が許されなかった。
ある時、祖父が老齢によって隠居を決める。
父は、さっそくとばかりにブランへとセスティア家との縁談を持ってきた。
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そこと関係を持つことで、やっとブランのところの領地でも、魔石のスムーズな運用が可能になるかもしれない、という事だった。
ブランは継ぐ領地のない三男坊だ。
自分の未来は生まれてからずっと決まっていたものと割り切っていたブランは、これをあっさりと了承する。
しかし、婚約の席で初めてローズと会ったブランは、絶望することになった。
(なんだ、あの……異様な……)
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