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アストとの出会い

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門を潜り、教会の中へ入る。
今日は特に予定のある日ではないらしく、教会の中は関係者がちらほらいる……ぐらいみたいだ。
大きく開かれている聖堂ではなく、その脇の通路を抜けて個人用の部屋みたいなところへ連れていかれた。

中へ入って扉を閉める。
片付いている、シンプルな部屋だった。
机と椅子が奥に有って、その後ろの大きな窓からは外の光が差し込んでいる。
壁には本棚。
部屋の真ん中には長椅子とテーブル。こっちはお客さん用なのかな?

騎士の格好をした彼は、そこでわたしの手を離すと、黒いシンプルな仮面を外す。
わ、整った、きれいな顔をしてる。でも、やっぱりそこまで年上じゃなさそう。
……どこかで会ったことあるかな……?そう思ってじっと見てみたんだけど、やっぱり思い出すものはなかった。

男の人……アストと呼ばれていた。その人は、わたしの視線に気付いたのかふいっと顔をそらした。

「さっきの馬車も、あんただろう」

わーーー!

「そ、そうです…………」

申し訳なさいっぱいに汗を流していると、騎士の人は「責めたわけじゃない」と続ける。

「……大教会の中は陣が張ってある。よっぽどの事がない限り、余計な魔法は発動しないようになってるから」

あー、それでわたしのことも連れて来てくれたんだ。
喋るなって言ったのも、その為なのね。
口を塞がれたのはなかなか大雑把な解決法だと思うけど、確かにあんなところで、いきなり目立つわけにもいかなかったから助かっちゃった。

「……ありがとう。それで、あなたは……?」

「アスト。敬称はいらない、口調も気安いもので頼む」

堅苦しいのが苦手なんだろうか。
気持ちは分からなくもないので、名を繰り返すだけにする。

「アストね。……あなたが、神官様に会わせてくれるの?」

「あんたの言ってる神官は、きっと俺の叔父だと思う。って言っても血が繋がってるわけじゃないけど……もうすぐ日課の巡礼から戻るから」

「どうして、わたしの名前を?」

「子供の時、教会へ鑑定に行っただろう。決められた年齢になってからの方じゃなくて……その、一年後に。あの時、俺もあの場に居たんだ」

「あの教会に?」

わたしに強力な魔力が備わってから、再鑑定に行った日の話を言ってるってことは分かった。
でも、こんな子居たかしら……?

「俺はずっと分析室の方へいたから。直接は会ってない。あんたの魔力を込めた水晶……あれを、叔父貴と一緒に見た」

ああ……対象者の魔力量を調べる水晶だ。
魔力鑑定で力を込めた水晶は、分析室でその量や、場合によっては質などを調べる。
わたしはあの時、とりあえずということで量だけを調べたんだけど。

「その時の魔力と、あんたの魔力が同じだったから」

「魔力で人の区別がつくの?」

「そういう目だ。見えすぎるから、いつもは仮面をつけてる」

あまりに大量の情報が見えるから、制御しないと酔ってしまうらしい。
なるほど。力の一種なのかな。

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