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門は開くが

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「えっと、すみません……ちょっと、通して……」

馬車の到着が派手で、騎士の人も来ちゃってたからか、物珍しそうに見る人が増えちゃってた。
乗り降り口でおばあさんへ手を貸したいのに近づけない……って思ったら、騎士の人が手を差し出してたみたい。

「足元、お気をつけください」

「あぁ、すまないねぇ……ありがとう、若いお方」

おばあさんは無事に降りられたみたいだ。
その後は、交通の邪魔になってはいけないからと騎士の人が周囲の人を誘導して散らしてくれた。
と、去っていく人達の中から、男の人が一人出てきて驚きの声をあげている。

「母さん!?もう着いたのか、ずいぶん早かったんだな!」

あ、おばあさんの息子さんか!

「ええ、何だかとってもいい馬車へ乗れたみたいなの……」

おばあさんが嬉しそうに男の人の手を取っている。
二人はそのまま歩いて行った。
無事にご家族と会えたみたい……よかった。

「ふぅ……」

まだちょっと気持ち悪い気はするけど、人が多いところからは早く立ち去ってしまいたい。
じゃ、わたしは気を取り直して教会へ……


あれ?

騎士の人がこっちを向く。仮面の奥の目が合った気がする。
綺麗な目だ。……やっぱりこっちを見てる?
御者の人と話をしてるけど……あっ、近付いてきた……

「……あの人は……」

そう、騎士が御者の人に聞いているのが聞こえた。

わっ。
待ってください、今のわたしは気を付けて会話しないと危険かもしれないんです!

そんなこと言えるわけもなく、とりあえず御者の人へお礼を言う。

「えっっと!……あ、あっ!ここで!わたしここで行きますっ、ありがとうございましたーー!!」

何かを尋ねられる前に、逃げるように馬車を離れた。
……領地を離れたのは分かってるんだけど、何となくおたずねもの的な気分が抜けない……!




少し離れたところで後ろを振り向く。
お、追ってきてないみたい……
でも教会関係者のような事も言ってたから……
どちらにせよ、滞在してたらまた会ったりしちゃうんだろうか。

とにかく、この力を収めることを優先したわたし。
建物を見上げて、少し圧倒された気持ちになる。
馬車が止まったところから大教会は程近くて、その建物の大きさも立派さも、権威を象徴してるみたいだった。

ここかぁ、大教会。
正面から行って会ってもらえるのかな……?
うかつなことを言わないように、フードで口元を隠しながら、入り口の横に立っている門番の人に話しかけてみる。

「あの、神官様へ会いに来たんですけど……」

門番の人は、怪しい風体のわたしにも関わらず、応対をしてくれる。

「神官の名は?約束はしていますか?」

「えっと……子供のころ魔力の鑑定をしてくださった方なんですが……約束は……」

はたして、子供のころのあれは約束と言えるんだろうか?
今更ながら何の前準備もなく来てしまった……と思ったんだけど、神官様の巡礼の記録があるから調べてもらえるみたい。



「年齢と、鑑定をされた地域を。それである程度絞れるかと……」

「年は18です。地域は……むぐっ!?」

隣の領地の名を頭に浮かべていたら、後ろから大きな手で口を塞がれてた。
フード越しの耳にそっと言葉がささやかれる。

「……ローズ・セスティアだな?」

……!?



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