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出発の時
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衣服の着替えや小物、旅で使えそうな雑貨類……
旅支度をさせてくれという二人の申し出を、とってもありがたく感じながら、断った。
「ほんとにいいのかい?そりゃ、どれだって上等なもんじゃないけどさ」
「はい……お気持ちだけ。でも、とっても嬉しいです、ありがとうございます」
「ん、そっか」
もし、この先わたしの身に何かあったら?誰かに捕まったり、咎められたりとか。
その時、ここと繋がるものを持ってる……っていうのは。やっぱりよくない。
たぶん、二人ともわかってるんだろうな。だから無理強いもしないし、余計なことも聞かないんだ。
…………………お部屋のほうは……
「いやーーーちょーーぉど改装考えてたんで!」っていう、店主さんのお言葉に甘えて……どうにか誤魔化してもらうことにしました………
なんか、力が暴走気味なのかな……?そこはちょっと、気を付けていかなきゃ。
でも、体が元気になったのはやっぱり嬉しい。
今までは疲れやすい体を、魔力でドーピングして無理やり動かしてたとこあったしね。
こんなに健康的な体だったら、そんなすぐに疲れたりしないんじゃないかな……?って期待しちゃう。
「お世話になりました!」
お店の、扉の前に立った。
このドアをくぐったら二人とはお別れだ。
行き先を聞かなかった店主さん。これを聞くのも迷ったのかな、とも思う。でも、最後の最後で、わたしに尋ねた。
「行く宛はどこか、あるんですかい?」
「……はい!」
わたしは笑って頷いた。
それならいい、と言うように店主さんは大きく頷いて、笑ってくれる。
一度奥へ引っ込んでいったおかみさんが、ばたばたと足音を鳴らして戻ってきた。
「ね、これ持ってって、これっ」
「わっ」
ぽんっ、と私に小さな包みを手渡してくれた。
簡易な袋で、上のところをきゅっと絞って紐で括ってある。
リボン結びの紐を開いて中を覗くと、ふわっと香ばしくて甘い香りがした。
「……お菓子?」
中にはクッキーが数枚入っていた。
「うちで取り扱ってる携帯食。腹持ちもよくて、遠出する男衆なんかもよく買ってくんだよ。その辺の店にも卸してるし……なんか言われたらそっちで手に入れたって言えばいいと思ってさ」
「わぁ……ありがとう、おかみさん!」
大事にポケットの中へしまうことにした。食べるのが楽しみ…!
お店の外へ出る前に、二人に言い含められたようにフードを被った。
「いいかい、絶対に安全だって分かるまで取っちゃダメだよ!」なんて、おかみさんに念を押されたりして。
「二人とも、ありがとうございました!」
二人は店の前まで出て見送ってくれた。
「ご利用、ありがとーございやした!」
店主さんの声を聞きながら、わたしは二人へ大きく手を振って、街へ……屋敷とは逆の方へ歩いて行く。
最後に大きくおかみさんの「また来てねぇ!!」って言葉が聞こえてしまって、振り返らずに笑っちゃった。
もう行けないよ~って。でも、きっとおかみさんだって分かってることだと思う。
行く宛はある。帰る宛がないだけ。
わたしにとって、帰るところがないっていうのは幸運なことだ。
だって、誰にも何も言われず、どこへだって行けるんだもん!
旅支度をさせてくれという二人の申し出を、とってもありがたく感じながら、断った。
「ほんとにいいのかい?そりゃ、どれだって上等なもんじゃないけどさ」
「はい……お気持ちだけ。でも、とっても嬉しいです、ありがとうございます」
「ん、そっか」
もし、この先わたしの身に何かあったら?誰かに捕まったり、咎められたりとか。
その時、ここと繋がるものを持ってる……っていうのは。やっぱりよくない。
たぶん、二人ともわかってるんだろうな。だから無理強いもしないし、余計なことも聞かないんだ。
…………………お部屋のほうは……
「いやーーーちょーーぉど改装考えてたんで!」っていう、店主さんのお言葉に甘えて……どうにか誤魔化してもらうことにしました………
なんか、力が暴走気味なのかな……?そこはちょっと、気を付けていかなきゃ。
でも、体が元気になったのはやっぱり嬉しい。
今までは疲れやすい体を、魔力でドーピングして無理やり動かしてたとこあったしね。
こんなに健康的な体だったら、そんなすぐに疲れたりしないんじゃないかな……?って期待しちゃう。
「お世話になりました!」
お店の、扉の前に立った。
このドアをくぐったら二人とはお別れだ。
行き先を聞かなかった店主さん。これを聞くのも迷ったのかな、とも思う。でも、最後の最後で、わたしに尋ねた。
「行く宛はどこか、あるんですかい?」
「……はい!」
わたしは笑って頷いた。
それならいい、と言うように店主さんは大きく頷いて、笑ってくれる。
一度奥へ引っ込んでいったおかみさんが、ばたばたと足音を鳴らして戻ってきた。
「ね、これ持ってって、これっ」
「わっ」
ぽんっ、と私に小さな包みを手渡してくれた。
簡易な袋で、上のところをきゅっと絞って紐で括ってある。
リボン結びの紐を開いて中を覗くと、ふわっと香ばしくて甘い香りがした。
「……お菓子?」
中にはクッキーが数枚入っていた。
「うちで取り扱ってる携帯食。腹持ちもよくて、遠出する男衆なんかもよく買ってくんだよ。その辺の店にも卸してるし……なんか言われたらそっちで手に入れたって言えばいいと思ってさ」
「わぁ……ありがとう、おかみさん!」
大事にポケットの中へしまうことにした。食べるのが楽しみ…!
お店の外へ出る前に、二人に言い含められたようにフードを被った。
「いいかい、絶対に安全だって分かるまで取っちゃダメだよ!」なんて、おかみさんに念を押されたりして。
「二人とも、ありがとうございました!」
二人は店の前まで出て見送ってくれた。
「ご利用、ありがとーございやした!」
店主さんの声を聞きながら、わたしは二人へ大きく手を振って、街へ……屋敷とは逆の方へ歩いて行く。
最後に大きくおかみさんの「また来てねぇ!!」って言葉が聞こえてしまって、振り返らずに笑っちゃった。
もう行けないよ~って。でも、きっとおかみさんだって分かってることだと思う。
行く宛はある。帰る宛がないだけ。
わたしにとって、帰るところがないっていうのは幸運なことだ。
だって、誰にも何も言われず、どこへだって行けるんだもん!
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