婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

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謝るはずが……?

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わたしの、今日にでも出ていかなきゃ……っていう気持ちが伝わったんだと思う。
店主とおかみさんは、難しい顔をしてたけど……気持ちを汲んでくれることに決めたみたいだ。

「そーかぁ……決めてんなら、仕方ねぇことですが」

「じゃあ、どーすんだい?これから」

「ぁ…っと。そー…ですね。ちょっと準備したら、出ていこうかなって……」

「そう……その様子だと、急に決まったって感じなんだねぇ。必要なものとかそろってないんでしょ」

「ぅぐ……そーです……」

手ぬぐいを貸してくださいって言ったことを思い出したのかな?
旅に出るって言ってるのに、何も持ってないことがバレてる……!


…………そして、すっっごく謝らなきゃいけない事がある。

「あと……あと、あの……お部屋………ごめんなさぃいい………」

わたしが体を小さくして、膝へ手をついて頭を下げると、二人はきょとんとしたみたいだった。

「部屋?……あー、部屋ね!そーいやそーだったねぇ」

「あぁーーー、そーだったそーだった!いやぁ、まだ何か現実のことたぁ思えなかったんで!忘れちまってましたよ」

「ひぇぇ……」

「まー、いいんじゃないの?アンタ、あれ大丈夫そーなんでしょ?」

魔石の浄化係をやってたぐらいだから、店主さんには魔力がある。
それに、私が強化させてた魔石もたくさん見てきてたから……

「そりゃーもう!俺ぁ太鼓判押してもいいぜ。お嬢様の作った魔石っつーのは、そりゃー評判がよくてだなぁ。そのお嬢様が作った部屋だろ!?問題あるはずがねぇよ」

「アンタの判が何の役に立つんだよ!……って言いたいとこだけど、事魔法に関しちゃちょっと頼りにしてやってもいいからねぇ」

「へへん、もちっと素直に褒めたっていーんだぜ」

「ハイハイ、すーぐ調子に乗んだから」

「くすっ……ぁっ、と……」

あわわ。ぽんぽん言い合う二人に、つられてちょっと笑っちゃった。
謝ってるとこだった……!って慌てて口を手で押さえたけど、そんなわたしに、今度は二人が笑ってくれた。


「って事で、大丈夫そうだから気にしなさんな。滅多にあることじゃないけどお偉いさんが泊まりに来た時に、専用の部屋にでもさせてもらうよ」

「ちぃっと中の物は移動させてもらうかもしれやせんがね。何せ部屋が狭すぎらぁ」

「うぅぅ……すみません……わっ、わたし!それ、手伝います!」

「やだよローズちゃん、急いでんでしょ。何も持ってないって言ってたし、自分の準備してきなさいな」

「あぅっ……!」

わ、忘れてた……!って頭を抱えるわたし。
その様子を二人は笑ってたんだけど……

「そーだ!」

いいこと思いついた!って顔でおかみさんが手を叩いた。


「ローズちゃん!折角だからお風呂入っちゃってきなさいよ!あんたが出した、あのお風呂!」

「えぇっ!?」
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