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宿屋兼ごはん屋さんで

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着の身着のままで屋敷の敷地を出たわたしは、とりあえず町へ行ってご飯を食べることにした。
一度意識したらおなかがすいてすいて……

わたしの顔を知ってる人はほとんどいないし、いたとしても今の顔じゃ誰もわからない気がするけど……
用心のために、ローブについてるフードを頭から被って町へ行く。
ローブのおかげであんまり周りは見えないけど、結構賑やかなんじゃないかな。

実は市街ってほとんど来たことがなくてドキドキしてる。
地図ではちゃんと見たことあるけど、今までは塔と森を往復して、たまに屋敷へ行くだけだったからなぁ……

お店に行ったことも、もちろん数えるぐらいしかない。
両親とじゃなくて、浄化係の見習いをしていた時……
あれは、教会に魔石の基礎授業を聞きに行った時だ。
帰り道、お腹が鳴ってしまったわたしに、皆が内緒だと言って連れて行ってくれたんだった。
皆、元気かな……

お金なんて持ってないけど、一晩あれば森で拾った魔石を浄化することが出来るから……それをお代の代わりにってお願いしてみよう。
ダメだったらお皿洗いとかで何とか払わせてもらえないかな……!



「いい匂いがする……ここにしようかな……?」

宿・飯どころの看板を見つけて中に入る。
お昼をとうに回ったころだったからか、あんまり他のお客さんもいない。

「おかみさん!うまかったよ~ごっそさん!代金、ここ置くねっ」

「あいよー。はい、お代ぴったり頂きました。またおいで!」

おっとと……
ちょうどすれ違いで店を出て行った大人から顔を隠すように、フードを深く被りなおした。

「こ、こんにちは……」

「いらっしゃい!お嬢ちゃん一人かい?」

恰幅のいい女性が出迎えてくれた。さっきおかみさんって呼ばれてた人かな?
エプロンをつけてて、ふっくらしたほっぺたに人好きしそうな、それでいて豪快な笑みを浮かべてる。

「はい。あのぅ……ご飯と、一晩泊めてもらえますか?」

「そりゃもちろん。あんた随分ガリガリだねぇ、旅の人かい?」

テーブルに案内されながらそう言われた。
旅はこれからする予定です!とも言えないし……ちょうどいいからそういうことにしちゃおう。

「は、はぃ。隣の領地まで、ちょっと」

「そーかそーか。たんと食べてお行き!」

「ありがとうございます……あの、料金は」

「あー、うちは後払いなんだよ。明日出るときにまとめてもらうからね」

!ってことは今日のうちに魔石を用意すれば間に合う……!
ホッ。
おかみさんは旅人にも慣れてるのか、あんまり突っ込んだことも聞かれず助かった。
たんと……なんて言ってもらったけど、おなかの中が空っぽだから急にしっかり食べない方が良さそう?

「ぁの……栄養がとれて、するっと食べられるものありますか?」

「それならこのスタミナスープ!パンを浸して食べるのが絶品だよ」

「じゃー、それを一つください」
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