婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

文字の大きさ
上 下
10 / 96

短すぎる見習い期間

しおりを挟む
教会で再鑑定をした次の日のこと。朝起きたわたしは、お父様に呼び出された。

「塔の間へ行って、浄化の儀式をこなして来い。教会での話が本当なら、お前にもその力があるんだろう?」

「は、はいっ」


びっくりしたけど、お仕事を任されたんだ!と思ってちょっとうれしかった。
お父様は淡々とそれだけ言うと、もうこっちの方を見てなかったけど。
それで、敷地内の端にある塔へと向かったんだ。

浄化係の領民の人達は、わたしが塔の間へ連れてこられた事に驚いてた。つい二日前に特上の魔石を作り上げたとはいえ、まだ小さな子供だったからね。

「お嬢様……もう参加なさるんで?あっしらはてっきり、もーちょっと大きくなってからだとばっかり……」

「うん、そうみたい。よろしくお願いします!」

そう言ってペコッとお辞儀をすると、何人かいた浄化係の人達が顔を見合わせた。どうする?って言ってるみたいな顔だ。


でも雇い主の子供だからとか、貴族相手だからとかいろいろあったんだろう。
皆優しく儀式の方法を教えてくれた。

教会で行われてる、魔石の扱い方についてのお話を聞く会にも連れてってくれた。
浄化には最低でも三日間かかるという話を聞いた時には、首を傾げちゃったけど。

「わたし、初めての時はそんなに何日も祈ってなかったよ?」

「うーん。そうですねぇ……お嬢様は毎晩月光を浴びて練習してたんでしょ?もしかしたら、それで体の中に特別な魔力が溜まってたのかもしれねぇ。それが、魔石を一発で浄化して極上のモンに仕上がるようにしちまったんだ」

「そっかぁ……」

その時は三日間も連続で祈ってなかったから不思議だったんだけど、毎晩月光を浴びていたのと授かった魔力のおかげで、体の中に溜まっていた力がカケラに注がれたのかなぁ。
自分の両手を見て目をパチパチさせた。

「さー、とりあえずやってみやしょうか!」

「う、うんっ」


一通りの手順を教えてもらった後は、実践だ。
塔の上に行って、皆から教わった通りに祈りを捧げる。
その時は皆で交代しながら祈ったんだけど、すごーーく上等な魔石が出来たって、皆喜んでくれた。


「やっぱりお嬢様はとんでもなくすげぇや!これできっと領主様たちも喜んでいただけるでしょう!」

「そうだそうだ!」

「ぇへ……そうかな……」

嬉しかった。自分でも、出来ることがあったんだ!って。



それから、何日か塔へ泊まり込んで儀式の見習いを続ける。
ますます家族と合わせることが少なくなっていったけど、領民の人たちには凄く優しくしてもらった。
お仕事のことだけじゃない、ちょっとした魔法の使い方なんかも教えてもらえたりして……ちょっとだけ、いつもより寂しくなくなってた。
それに、領地のためだ!っていう気持ちもあったから。
今までは何のために自分がそこにいるのか、分かんない時の方が多かったし。




そして一通りの儀式を覚えたわたし。
出来上がった魔石を持って両親へ報告しに行く。わたしの浄化の力がいかにすごいか、浄化係の皆は口々に伝えたり褒めたりしてくれた。

「すごいんですよ!あっし達はちょっとずつしか魔石を浄化出来んかったが、お嬢様は一気に大量の魔石を浄化することが出来て……!」

「そうでさぁ!それにこんな上質な魔石はお目にかかった事がねぇくらいだ!」

「お嬢様が魔石を浄化すると、その石がものすんげぇパワーを持つんですっ!」

「そうかそうか」

お父様は頷きながら皆の話を聞く。そして、わたしを残して一旦皆を塔の方へ戻した。



「ローズ」

ビクッ
「は、はい」

お父様と二人きりになると緊張が増す。
久し振りに名前を呼ばれて、びっくりした。

「魔石の浄化儀式はどうだ?覚えたか」

「は、はい。皆に、すごくよくしてもらって、それで……」

何か伝えなきゃと思って口にするわたしをお父様は遮る。



「ふむ……そうか。ならばもう浄化する人間はお前だけでいいな」

「えっ……?」

出来上がった魔石を見て、お父様はそう言った。

「他の浄化係は全員、今日付で解雇クビにすることとしよう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?

gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。 みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。 黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。 十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。 家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。 奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。

ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります

ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。 今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。 追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。 ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。 恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。 その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。 怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい...... ※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。 ※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。 ※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。 ※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

処理中です...