1 / 8
プロローグ
しおりを挟む
耳にした言葉に、侯爵令嬢であるミレイは自分の動きをピタッと止めた。
「今、なんておっしゃったんですか……?」
婚約者である王子は、きっぱりと言い切った。
「聞こえなかったならもう一度言ってやろう。
君と僕との、婚 約 破 棄 を ! 宣言する!!」
ここは学園の吹き抜けの大講堂だ。
長期休暇前の集まりを終えた直後で、まだ多くの生徒や教師が残っている。
王子の大声は注目を集め、なんだなんだと野次馬たちが集まってきた。
(いけない、これでは……)
「…………王子。お考え直し下さいませ」
「うるさい!!以前からうんざりしていたんだ!その冷たい態度に冷静な言葉……!!
第一、毎日毎日僕の愛しい娘を苛め抜いていたっていうじゃないか!!」
王子の腕にはしなだれるように一人の女生徒が絡みついている。
ミレイはその女生徒を見たことがなかった。
知りもない女性を引き合いに出されて激昂される。
それでも、ミレイは声を掛けた。
「……王子。ここは人が多すぎます、一度そちらの方と共に別室へ……」
「黙れ黙れ黙れぇ!!」
移動を提案したが、怒鳴られてしまうミレイ。
「こわぁい……着いて行ったら私、また虐められてしまいます……
でも……王子様の事は惜しいみたいですねぇ?妬けちゃいますわぁ」
「フンッ、小賢しい女の考えそうな手だ!今更焦っても遅すぎる。それに、私にはお前だけさ……」
女生徒が、目を潤ませて王子を見ている。王子もそれに答えて肩へと腕を回していた。
その時、女生徒がミレイの方を見て笑った。見下しを含んだ勝ち誇ったような視線に、ミレイは悟った。
ああ、王太子も、この目にやられてしまったんだろう。
王子をきっと、情熱的な目で誘ったのだ……
「……王子。一度改めてお話を……」
「しつこいぞ!お前と話すことなど、もう何もない!」
「うふふ、王子様の事は諦めてくださいねぇ?さようならぁ~」
そう言って、王子は女生徒と一緒に講堂を出ていく。
残されたミレイは、婚約破棄を止められなかった事を一人で悔やんだ。
(…………ああ、終わってしまう……)
「今、なんておっしゃったんですか……?」
婚約者である王子は、きっぱりと言い切った。
「聞こえなかったならもう一度言ってやろう。
君と僕との、婚 約 破 棄 を ! 宣言する!!」
ここは学園の吹き抜けの大講堂だ。
長期休暇前の集まりを終えた直後で、まだ多くの生徒や教師が残っている。
王子の大声は注目を集め、なんだなんだと野次馬たちが集まってきた。
(いけない、これでは……)
「…………王子。お考え直し下さいませ」
「うるさい!!以前からうんざりしていたんだ!その冷たい態度に冷静な言葉……!!
第一、毎日毎日僕の愛しい娘を苛め抜いていたっていうじゃないか!!」
王子の腕にはしなだれるように一人の女生徒が絡みついている。
ミレイはその女生徒を見たことがなかった。
知りもない女性を引き合いに出されて激昂される。
それでも、ミレイは声を掛けた。
「……王子。ここは人が多すぎます、一度そちらの方と共に別室へ……」
「黙れ黙れ黙れぇ!!」
移動を提案したが、怒鳴られてしまうミレイ。
「こわぁい……着いて行ったら私、また虐められてしまいます……
でも……王子様の事は惜しいみたいですねぇ?妬けちゃいますわぁ」
「フンッ、小賢しい女の考えそうな手だ!今更焦っても遅すぎる。それに、私にはお前だけさ……」
女生徒が、目を潤ませて王子を見ている。王子もそれに答えて肩へと腕を回していた。
その時、女生徒がミレイの方を見て笑った。見下しを含んだ勝ち誇ったような視線に、ミレイは悟った。
ああ、王太子も、この目にやられてしまったんだろう。
王子をきっと、情熱的な目で誘ったのだ……
「……王子。一度改めてお話を……」
「しつこいぞ!お前と話すことなど、もう何もない!」
「うふふ、王子様の事は諦めてくださいねぇ?さようならぁ~」
そう言って、王子は女生徒と一緒に講堂を出ていく。
残されたミレイは、婚約破棄を止められなかった事を一人で悔やんだ。
(…………ああ、終わってしまう……)
1
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~
岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。
「これからは自由に生きます」
そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、
「勝手にしろ」
と突き放した。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
(完結)婚約破棄された私は、何故かパーティーに誘われます
アイララ
恋愛
結婚を約束し、私は貴方に相応しい相手になる為、毎日の様に頑張ってきました。
その結果が婚約破棄で、更に私を馬鹿にしようと婚活の為の舞踏会に誘おうというのですか?
だったら、私にも考えがありますわ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~
華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。
突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。
襲撃を受ける元婚約者の領地。
ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!!
そんな数奇な運命をたどる女性の物語。
いざ開幕!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
逆行転生、断罪され婚約を破棄された落ちこぼれ令嬢は、神の子となり逆行転生したので今度は王太子殿下とは婚約解消して自由に生きたいと思います
みゅー
恋愛
アドリエンヌは魔法が使えず、それを知ったシャウラに魔法学園の卒業式の日に断罪されることになる。しかも、シャウラに嫌がらせをされたと濡れ衣を着せられてしまう。
当然王太子殿下との婚約は破棄となったが気づくと時間を遡り、絶大な力を手に入れていた。
今度こそ人生を楽しむため、自分にまるで興味を持っていない王太子殿下との婚約を穏便に解消し、自由に幸せに生きると決めたアドリエンヌ。
それなのに国の秘密に関わることになり、王太子殿下には監視という名目で付きまとわれるようになる。
だが、そんな日常の中でアドリエンヌは信頼できる仲間たちと国を救うことになる。
そして、その中で王太子殿下との信頼関係を気づいて行き……
聖女はただ微笑む ~聖女が嫌がらせをしていると言われたが、本物の聖女には絶対にそれができなかった~
アキナヌカ
恋愛
私はシュタルクという大神官で聖女ユエ様にお仕えしていた、だがある日聖女ユエ様は婚約者である第一王子から、本物の聖女に嫌がらせをする偽物だと言われて国外追放されることになった。私は聖女ユエ様が嫌がらせなどするお方でないと知っていた、彼女が潔白であり真の聖女であることを誰よりもよく分かっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる