僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。

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何故死んだはずの俺は生き返ったのか。
何故そこにある筈の痕跡、俺を助けた人の足跡すらなかったのか。時が経つにつれ不可解な点に首を傾げた記憶はまだ新しい。

「ああ、ロカの家門は目に見えない存在を崇拝していると耳にした事があったな」

愚兄が昔、ミディウス家を小馬鹿にするように語っていた。作話しか語れない野蛮な血筋だが利用価値はある、と。

当時、目に見えない存在と聞いて真っ先に思い浮かんだのは“神”だったが、


思い違いをどうやらしていたらしい。


「神ではなくて妖精に執着していたのか」

まるで狂ったかのように、
渇望するかのように、




辺りを見渡さなくても分かる書籍の数々。その中で手入れをされている本はどれも妖精に関連がある本だけ。

(俺を助けたのが人間ではなくて別の何かなら…)

あの場に足跡がなかった理由も、
死人が短時間で生き返ったことも、


簡単過ぎるくらいに説明が着く。悪魔ならそれなりの対価を。けれど俺はその対価を払っていない。そして、

消去法として考えられるのは、


気まぐれな神か、

それとも…、



「ロカなら何か知っているのかな、妖精について」

本のタイトルが書かれている背を上から下になぞり、ぽつりと零した。






これはまだ、ロカが砕いた抑制石を俺が飲み込む少し前の話し。


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