僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。

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国王の傍らに仕える一族。永遠の服従を誓った、その血を色濃く引き継いだロカが

どこか酔いしれるようにゆっくりと語った。

「俺が会いたい方はね妖精様なんだ」

そこから紡がれる言の音はどこか非現実的で、一瞬目の前の正気を疑う程だった。

国の主、所謂国王を代々支えてきた彼等には特殊な能力がありそれはある時期を境に消えるという。

そしてあの晩、狂ったかのように部屋を荒らして発狂した日。ロカの能力が消失した。


「だからあのタイミングで“おめでとう”だったのか」

怒り狂った、とは違う。強いて言うなら絶望していたロカに父親はお誕生日おめでとう、と発していた。何故あの状況で祝福の言葉が出たのか謎だったが、

「普通の人になれたから、」だと考えれば辻褄が合う。


「で、ロカの能力は妖精が見えた、と」

「いや、正確にはマナやオーラ、気も色としては見えていた。今では……全く見えない」

掌を握ったり開いたりしながら呟くロカの顔には、もう絶望の色は残っていなかった。

「打開策でも見つかったか」

組んでいた足を組み替えながら問えば、



「あぁ。ただ、」

「死ぬかもしれない、か」

夜中に訪ねてきた時、開口一番にロカはこう口にした。



“もしうっかり俺が死んだら家族には不治の病で息をひきと、...いや、恋の病で死んだと伝えてくれ”と。

「その方法で消えた能力が確実に戻る確証なんて…ないんだろ。」

「まぁな。でもやる価値はある」



部屋に入ってきたとき危ない薬でも摂取したかと思ったが…。正常な状態での下した判断がソレなのだから、

(––––––––––狂ってる)


















「で、これを飲んだら能力が戻るか死ぬかって訳か。」

見せられた宝石は粉々に砕かれ1粒の破片を天井に向けて翳した。


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