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加護
しおりを挟むゆっくりと開かれた扉に、『ぁっ、』と声が溢れた。勿論彼に聞こえるはずも無く。
ブルーダーの横に立ったまま、開いた扉から見知った顔が廊下を覗いた。
一瞬彼は辺りを見渡した後その視線は下がり、
ブルーダーを捉えた。
「...カラスに縁がありすぎるな」
ため息混じりに呟かれた声は、僕に話しかける声よりも低く何処か不機嫌そう。
きっと深夜だから睡魔が彼を襲っているのかも、と思った僕は合図代わりにブルーダーの身体をそっと撫でた。
一瞬撫でられて嬉しそうに目を細め、返事をするかの様に頷いた後ブルーダーは咥えていた物を彼の足元へと置いた。
––––––––––––––…カァ
真夜中、
しんと静まり返る廊下にブルーダーの鳴き声だけが響き渡った。
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足元に落とされたソレに気づいた彼は、一瞬固まりまるで時が止まったかのように動かなかった。
大きく見開かれた目は、驚愕の色を乗せたまま釘付けとなり…
「はっ…、ははっ」
我に返ったらしい彼はくしゃりと顔を歪めて笑った。
代々受け継がれた抑制石が無くなり、きっとロカは不安だったに違いない。僕だって皆に貰った花とか、木の実が枯れたり傷んだら悲しいし、無くしたとなったら気が気じゃないと思うんだ。
だからかな、ロカが嬉しそうな…でも泣きそうな顔をしているのを見て僕もちょっとだけ泣きそうになった。
(ちゃんと返せてよかったぁ)
ロカにとって大事な宝物。僕なんかが持っていちゃいけないから、今日返せて良かった。
(それにロカにも会えたし…いい事尽くしだね。)
連れて来てくれたブルーダーにも感謝しかない。
『ブルーダー、付き合ってくれてありがとね』
足元に置かれた宝石に手を伸ばすロカ
やたらその動きがスローモーションの様に見えるなぁ、なんて思いながら僕の側に来たロカの手に、
僕はそっと触れた。
『––––––––––––––…幸せになってね、ロカ』
バイバイ、と内心で呟きながらロカの幸せを心から願った。きっとロカにも攻略対象者達にも色々な試練が待ち受けていて、
辛い事が沢山あると思うけど、
その先にはきっと幸せが待っている筈だから
––––––––––––––––––––––
––––––––––––––––
––––––––––…
この時の言葉が…いや、僕が願った言葉が妖精の加護になる事など知る筈もなく。
応援ありがとうございます!
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