39 / 56
*
しおりを挟む
夜遅く、それは不意に鳴いた。
皇子…いや次期国王の様子を覗いた後、さっさと自室に帰ってきた。多分時間帯は夜中の4時くらい。
もう少しで朝日が昇り出す頃、ごそごそとベッドへ潜って取り敢えず仮眠しとくか、と思いながら瞼を閉じた時、
「カァ」と、日常の中で良く聞く鳴き声が扉の外から聞こえた。
(屋敷の中にカラス––––––––––?)
たいして眠くは無かったが一気に頭がクリアになる中、
身体を起こし、部屋の電気を付けた。
「どっから入って来たんだ…」
カラスは頭が良く、人間の行動をよく観察しているという。中には、人間の性別が分かるという説もあるが、
それはカラスに直接聞いてみなくては分からない。
きっと人の気配があまりないこの時間に、隠れていた場所から出てきたのかもしれない。
餌を求めて鳴いているのか、はたまた仲間を探しているのか。
どちらにせよ部屋の前で鳴かれるのはただただ迷惑で、
(…捕まえて逃がすよりいっそ殺すか、)
ふと、殺気を出しかけた時。
何故かある1場面を思い出し、気が逸れた。
そういえば…妖精様の傍にも居たな、
思い出すのは尊い方の傍に居たカラス。
あの方を守るかのように寄り添う姿はいっそ憎らしいほど、羨ましかった。その場所は穢らわしい不吉の象徴、烏が居座っていい場所じゃない。
そう思うのに、
いっそその特等席を奪い取ってしまいたいのに、
自分以外の存在を消して、2人だけの世界があったなら…
俺は迷わず其方を選ぶのに、
でも、あと一歩。
それを踏み出せないのは、彼等に優しく微笑む妖精様が脳裏にチラつくからだ。
もし俺が、俺の欲であの方の大切な物を消してしまったら…
きっともう俺には笑いかけてくれないだろう
きっと泣かせてしまう。
悲しませてしまう、
(とりあえず部屋の外にいるカラスは俺が保護して外に帰すか)
妖精様と繋がりがあるかどうかも分からないただの鳥
それでも万が一を考えて、
俺はその烏を外に逃がすべく、そっと部屋のドアを開けた。
皇子…いや次期国王の様子を覗いた後、さっさと自室に帰ってきた。多分時間帯は夜中の4時くらい。
もう少しで朝日が昇り出す頃、ごそごそとベッドへ潜って取り敢えず仮眠しとくか、と思いながら瞼を閉じた時、
「カァ」と、日常の中で良く聞く鳴き声が扉の外から聞こえた。
(屋敷の中にカラス––––––––––?)
たいして眠くは無かったが一気に頭がクリアになる中、
身体を起こし、部屋の電気を付けた。
「どっから入って来たんだ…」
カラスは頭が良く、人間の行動をよく観察しているという。中には、人間の性別が分かるという説もあるが、
それはカラスに直接聞いてみなくては分からない。
きっと人の気配があまりないこの時間に、隠れていた場所から出てきたのかもしれない。
餌を求めて鳴いているのか、はたまた仲間を探しているのか。
どちらにせよ部屋の前で鳴かれるのはただただ迷惑で、
(…捕まえて逃がすよりいっそ殺すか、)
ふと、殺気を出しかけた時。
何故かある1場面を思い出し、気が逸れた。
そういえば…妖精様の傍にも居たな、
思い出すのは尊い方の傍に居たカラス。
あの方を守るかのように寄り添う姿はいっそ憎らしいほど、羨ましかった。その場所は穢らわしい不吉の象徴、烏が居座っていい場所じゃない。
そう思うのに、
いっそその特等席を奪い取ってしまいたいのに、
自分以外の存在を消して、2人だけの世界があったなら…
俺は迷わず其方を選ぶのに、
でも、あと一歩。
それを踏み出せないのは、彼等に優しく微笑む妖精様が脳裏にチラつくからだ。
もし俺が、俺の欲であの方の大切な物を消してしまったら…
きっともう俺には笑いかけてくれないだろう
きっと泣かせてしまう。
悲しませてしまう、
(とりあえず部屋の外にいるカラスは俺が保護して外に帰すか)
妖精様と繋がりがあるかどうかも分からないただの鳥
それでも万が一を考えて、
俺はその烏を外に逃がすべく、そっと部屋のドアを開けた。
132
お気に入りに追加
828
あなたにおすすめの小説
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
地味で冴えない俺の最高なポディション。
どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。
オマケに丸い伊達メガネ。
高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。
そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。
あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。
俺のポディションは片隅に限るな。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる