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「それは分かっている。ただ…」
「ただ、なんです?迷いがあるなら捨てる事を推奨致します」
ぴしゃり、と言い切られた言葉に肩を落としつつ小さく呟いた。
「ただ、また会いたい人がいるんだ」
頭をそっと撫でてくれた人に。あの澄んだ声をもう一度聞きたい。
「会いたい人、ですか」
思わず溢した言葉は流される事なく、ロカもまた何かを思い出す様に顔を切なげに歪めて影を落とした。
(…そういえばロカも会いたい人がいる、と言ってたな)
不意に思い出すのはロカの誕生日の事。
朝早くに悲鳴じみた悲痛な声が屋敷を包んだのはつい最近で、
俺も、そしてロカの父親も、なんなら使用人すらも飛び起きてロカの部屋を覗いた記憶はまだ新しい。
あの時のロカはなんと言うか…狂気じみていた。“嘘だ…見えない。マナもオーラも何も見えない。なんで、嘘だ…うそだ嘘だろ”
と、ただひたすらに呟いたかと思えばまた発狂しての繰り返し。
薄暗い部屋の中で何が起こっているのか、
状況を把握するのに、少しばかり時間を要したが1番最初に声を掛けたのは俺ではなく
ロカの父親だった。
“ロカ、お誕生日おめでとう”
確か最初にかけた言葉がそれだった。
何故あのタイミングであのセリフを言ったのか未だに謎だが、
数日したある日、
ロカが溢した言葉。それが“会いたくて会いたくて…狂いそう”だった。
「そういえばロカの会いたい人には会えたのか」
「…いえ」
「そうか。ならロカが俺の立場だとして」
お前はその人を諦められるのか?
そうロカに問うていた。
■
■
◽︎
「申し訳ございません。失言でした」
「ただ、なんです?迷いがあるなら捨てる事を推奨致します」
ぴしゃり、と言い切られた言葉に肩を落としつつ小さく呟いた。
「ただ、また会いたい人がいるんだ」
頭をそっと撫でてくれた人に。あの澄んだ声をもう一度聞きたい。
「会いたい人、ですか」
思わず溢した言葉は流される事なく、ロカもまた何かを思い出す様に顔を切なげに歪めて影を落とした。
(…そういえばロカも会いたい人がいる、と言ってたな)
不意に思い出すのはロカの誕生日の事。
朝早くに悲鳴じみた悲痛な声が屋敷を包んだのはつい最近で、
俺も、そしてロカの父親も、なんなら使用人すらも飛び起きてロカの部屋を覗いた記憶はまだ新しい。
あの時のロカはなんと言うか…狂気じみていた。“嘘だ…見えない。マナもオーラも何も見えない。なんで、嘘だ…うそだ嘘だろ”
と、ただひたすらに呟いたかと思えばまた発狂しての繰り返し。
薄暗い部屋の中で何が起こっているのか、
状況を把握するのに、少しばかり時間を要したが1番最初に声を掛けたのは俺ではなく
ロカの父親だった。
“ロカ、お誕生日おめでとう”
確か最初にかけた言葉がそれだった。
何故あのタイミングであのセリフを言ったのか未だに謎だが、
数日したある日、
ロカが溢した言葉。それが“会いたくて会いたくて…狂いそう”だった。
「そういえばロカの会いたい人には会えたのか」
「…いえ」
「そうか。ならロカが俺の立場だとして」
お前はその人を諦められるのか?
そうロカに問うていた。
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◽︎
「申し訳ございません。失言でした」
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