僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。

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名前−夢セカ–

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「俺の名前はロカ・ミディウス。ロカ、っていいます」

ふよふよと浮いていた風船が音を立てて割れた…気がした。ぼんやりしていた思考が急にクリアになった様なそんな感覚。

ずっと不思議だったんだ。

どうして僕は死後、この世界に来たのかなって。もしかしたら意味があって。もしかしたら2度目の人生を与えられたのかもって、

そう思った。


(ロカ…、って、僕が小さな世界の中で良くしてもらった白い服を着たお姉さんから貸してもらった…ゲームの攻略対象者の名前だ)

バラバラだったパズルが、すんなり当てはまって、1枚の絵が出来上がる。



『ここ“夢セカ”の中、だったんだ』

夢の世界でまたキミと。と言うのがゲームのタイトル。ずっと狭い場所で寝ていた僕に与えられた娯楽は大人の女性と数分間くらい話すだけだった。

たまに、腕に痛い針を刺されたりしたけれど

家族より温かった…気がした。

業務的な笑顔だったけど。
似た様な質問が多かったけど。
時折、沢山のお薬を渡されたけど。

いつも笑いかけてくれる人たちだった。



その内の1人が、“新人さん”と呼ばれる女性で、夜遅くからのお仕事の時に、

僕にゲームソフトを貸してくれた。


“ねぇ桜くんは恋ってしたことあるー?”

“鯉…?”

“そう!恋愛っ!ずっとこの人の側に居たいなぁ、とか。この人の笑顔を独り占めしたいなぁって思っちゃうこと”

“?”



“恋ってね、凄いんだよ。人を強くしてくれるのっ!ほら、桜くんもこのゲームで恋してみようよ”


笑顔で渡されたゲームを返すのも悪い気がして、結局身体が調子のいい時

横になりながらやり始めたゲームは、

外の世界を知らない僕に、夢を見させてくれた。



ゲームの主人公は男の子。

僕と歳はあんまり変わらなくて、唯一違う所は

僕が持てなかった希望を彼はずっと持ち続けていた事。

魔法が存在する世界の中で、貴族のみが出現するという力が…平民に出てしまい、主人公は貴族が通う学園へと足を踏み入れた。

知らない場所での生活に胸を躍らせて。

そこでは沢山の困難が待ち構えていたが、



彼を守る彼等・・がいて。

いつもやたらキラキラしている男の子たちに囲まれながら、学園生活を過ごしていた。






後に彼等が攻略対象者だと知るけれど、その中にロカ・ミディウスがいた。

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