僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。

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出会い

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皆とピクニックを終え、羽根伸ばしに宙を泳ぐように飛んでいたら、皆が一斉に僕の横

獣道へと視線を向けた。息ぴったりなその仕草に、僕は大袈裟過ぎるほどビックリしちゃって、宙でバランスを崩した。

すかさず助けてくれたのはお兄ちゃん気質の烏、ブルーダーだった。地面に落下しかけた僕の身体を真下でチャッチしてくれて、

気付けばブルーダーの背中に乗っていた。

(うわぁ、ブルーダーの毛すっごくサラサラだぁ)

後すごく良い匂いがする。鼻を近ずけて、すんすんと嗅いでしまった。そんな僕の行動に驚いたのか、ブルーダーの体がぴくりと揺れた。


ツァールトとソラーナに何故かブルーダーが軽く睨まれていたけど、

睨まれたブルーダーは何故かモジモジしていて……あ、もしかしてブルーダーおトイレに行きたいのかなぁ

なんて見当違いをしていたなど知る由もなく


こてん、と首を傾げつつ

皆が一斉に見た場所、獣道へとつられるようにして視線を移した。




『…え、』

溢れた声は言わずもがな自分で、きっと今、僕は間抜けな顔を晒している事だろう。

大きな木々が立ち並び、無造作に生えた草は通せんぼをするように足首に絡んでくる

人間は決して好まない細道に人が立っていた


(嘘、……どうして?)

一瞬の焦り、動揺の理由は簡単で、

(どうしてこんなに近くに居たのに……気配に気付けなかったの?)

悪い大人が来た時も、
はたまた見慣れぬ格好をしたご老人が散歩に来た時も、
怪我をした少年が来た時だって、僕は全部把握できていたのに。


半径2メートル以内に居る人間を察知する事が出来なかった。

そしてもう1つ、

彼は近くに居る、とは言うものの約2メートルほど離れているのに


を真っ直ぐに見つめていた。





妖精の僕を。
認知されない筈なのに。
3センチで、小さいから見えたとしてもあの距離からなら見えない筈なのに、だ。

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