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きっと気のせいじゃない。初めてこの森に足を踏み入れた時は気のせいかと思ったが、

四方八方から感じる視線。
敵意と言うよりかは監視、もしくは警戒といった類いのもの。

(なんなんだこの森は)

盗賊が根城にでもしているのかと内心焦ったが、気付かれないように辺りをそっと確認しても人の気配は無かった。

ただ、そう。強いて言うなら、森に住んでいる動物がじっと此方を見ていた。

まるで時が止まったかのように、木に止まっている烏も、枝の上にいるリスも、草の茂みの中にいる狐も、土の中から顔を出している土竜も、

此方を見たまま微動だにしない。



(なにかこの森に……あるのか?)

普通では考えられない光景に、自然と行き着いたのは警戒する何かがこの森にあるのでは

と言う安直過ぎる考え。

(動物が守る物、か…例えば森の主とか?)

確か昔、ひぃ爺ちゃんに聞いた事がある。常識では考えられない、それはもう大きな身体を持つ存在が居るという。

聞いた当初はホラ話だと聞き流したが、

見た目は、動物の王様と言われる外見で、ネコ科だとか。

まぁ、それだけなら大して珍しくは無いのだがその動物を纏う体毛の色が異様だと聞かされた。



〝もし森で銀色の毛を持つ獣に出会ったら死んだと思え〟


(どうしよう。ひぃ爺ちゃん、もしかしたらこの森…出るかもしれない)

決して自分がビビり気質だとかでは無い。言うなら受け継いだ血が、何も起こっていないのに森に入った時からずっと

危険信号を出している。

なんなら背中には冷たい汗が流れていた。




「抑制石、諦めるかな…」

これ以上森の奥深くに行けば、俺は生きていないかもしれない。

そう思うのも無理はない、

1歩、また1歩と前へ進む度

動物たちの警戒心が増し、中には殺気まで放つものまで出始めている。


父さんに謝って、土下座して。なんなら説教コースも快く受け入れようか

と、自身に言い聞かせた。

進めていた足を止め、来た道を帰ろう。



そう思った。

抑制石も大事だが、自分の命の方が100倍大事。だから、来た道を戻ろうとしたのだった




そう、これは過去形だ。

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