上 下
6 / 51

しおりを挟む
確かに俺は死ぬ筈だった。兄が差し向けた刺客は的確にも逃げ回る俺を追い詰め、

身を潜めるために入った名の知らない森の中で、剣を一振り。何をされたのか理解する前に、身体が前へと傾きドサリと倒れた。

沸騰するかのように熱い背中と、
どくどくと流れる自身の血、
周りは一気に鉄臭さで包まれ、

意識が朦朧とする中で、切られたことを理解した。黒装束に身を包んだ長身の男は、倒れた俺がもう直ぐ息を引き取ると思ったからか、

心臓に剣を突き立てることはせず、冷めた声で「動物に喰われて死ね。恨むなら家族を恨むんだな」と、言い捨て、振り返ること無く去って行く。

足音が小さくなって行くのを、ただ聞いていた。男が言うようにもう時期死ぬだろう。

切られた最初は、心臓の音が騒がしかった

でも今はすごく音がゆっくりで、
刻むは小さい。



(俺が死んだら…兄さんは喜んで、くれるのかな)

俺の味方は家族に居ない。きっと生きているより俺の死体が発見された方が、きっと家族孝行になる。

(どうして、…ただ俺は、)

家族全員で笑い合える、そんな家庭に憧れただけ。でも俺が居るから。俺が生きているから、皆が幸せになれない。

ただいま、
おかえり、
いただきます、
ごちそうさま、
おはよう、おやすみ。

俺に向けられた言葉は1つも無かった。



きっと俺は最初から居なかった事になる。
そして兄さんは、この国の王になる。
勉強で使う教科書に乗っている王様の名前一覧に、名前が乗るのだろう。

国の顔になる王様は汚れていてはいけないと

前、兄さんに言われた事がある。つまり俺はその汚れ・・になるから排除するのだろう。

(あぁ。身体が…さむくなってきた、な)

だんだんと下がる瞼。
眠たくないのに、起きていられない。



息をするのも苦しくて、
身体は重だるく、
背中は熱いのに、他の部分はとっても寒い

これが死ぬ、という事なのか

なんて内心零しながら、瞼を瞑った。



当の昔に枯れていたはずの涙が、久しぶりに頬を伝い地面を濡らす。














しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

美少年は異世界でヤンデレに囲われます

mmm
BL / 連載中 24h.ポイント:248pt お気に入り:2,413

俺、可愛い後輩を無理やり犯して調教してます

BL / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:492

...私がストーカーにオトされちゃった話。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:390pt お気に入り:7

【BL】身代わり王族は、執着騎士に愛される

BL / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:1,346

獣人だらけの世界に若返り転移してしまった件

BL / 連載中 24h.ポイント:8,669pt お気に入り:2,448

薄幸系オメガ君、夜の蝶になる

BL / 連載中 24h.ポイント:2,811pt お気に入り:1,283

【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,604pt お気に入り:679

処理中です...